イケア、アディダス、ウォルマート…CSO(最高サステナビリティ責任者)の設置が重要な理由

伴 大二郎 (株式会社ヤプリ エグゼクティブ・スペシャリスト/株式会社顧客時間 プロジェクトマネージャー/db-lab代表)
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ウォルマートは金融大手と組みサステナビリティ向上のためのネットワークを発足!

ウォルマートの外観
米小売最大手のウォルマートもサステナブル経営を推進

 もう一つ、流通小売業界から米ウォルマート(Walmart)」の事例を紹介しましょう。同社と英メガバンクのHSBCがタッグを組み、環境サステナビリティを向上させたサプライヤーに対してHSBCが好条件のファイナンスの提供を行うほか、食品・消費財業界のサステナビリティ向上ネットワーク「サステナビリティ・コンソーシアム(TSC:The Sustainability Consortium)」を発足。業種を超えた提携のもと、大規模な活動を行っています。

 ウォルマートはこのほか、米シンクタンクWRIの呼びかけで、世界で年間13億トンにも上る食品廃棄物削減をねらって立ち上げられた「10x20x30食品廃棄物削減イニシアティブ」にも参画。これには日本のイオンをはじめ、イギリスのテスコ(Tesco)、フランスのカルフール(Carrefour)なども参画しており、国を超えた食品ロス削減の取り組みが活発化しています。ここまでくると、サステナブルは事業そのものであることを、ますます実感できるのではないでしょうか。

CSRを紐づけた新たなビジネスモデルの創造が急務

 このように、世界的な企業が次々にビジネスとCSR(企業の社会的責任)を融合させ、新しいビジネスモデルを創造しています。ここまで紹介した企業のように会社を挙げて推進していくには、CSOを設置し経営に対する強い発言権を持たせること、そしてCSOにDX(デジタルトランスフォーメーション)を任せることが重要と考えます。

 さらに言えば、こうしたことは、昨今消費者から支持を得ているD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)企業がすでに取り組んでいることでもあります。リテール市場において後発組である彼らは、市場への新規参入にあたり、サステナブルなビジネスモデルをあらかじめ設計したうえで競争に臨んでいるのです。

 一方、既存のリテール企業はどうでしょう。昔ながらのビジネスモデルや商習慣を続けているところがまだまだ多いのではないでしょうか。このギャップを埋められないことには、リテールの中心をD2C企業に取って代わられる日が来たとしても、おかしくはありません。

 とくに、世界各国の中でも人口減少の傾向が著しい日本では、本来であれば、どの国よりも先にビジネスモデルをサステナブルな方向に転換する必要があったはずです。しかし、欧米と比べて感度が今一つであることは否めません。これまでの利益第一主義から「ソーシャルグッド」(社会貢献度の高い経営活動を貫く姿勢)へとビジネスモデルをいかに変革していくかが喫緊の課題です。

 ただ、ここで確実に言えるのは、“変われた企業は生き残れる”ということです。DXによる社会課題の解決とビジネスモデルの融合に挑む企業が一社でも増えることは、日本の活力にもつながるはず。そんな期待を寄せながら、私もリテール業界のイノベーションをさまざまな角度から支え、また見守っていきたいと思います。

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記事執筆者

伴 大二郎 / 株式会社ヤプリ エグゼクティブ・スペシャリスト/株式会社顧客時間 プロジェクトマネージャー/db-lab代表
小売業界においてCRMの重要性に着目。一貫してデータ活用の戦略立案やサービス開発に従事した後、2011年にオプト入社。マーケティングコンサルタントを経て、 15年よりマーケティング事業部部長として事業拡大に向けた組織作りに着手。マーケティングマネジメント部やOMO関連部門等々を立ち上げ統括しながら組織を拡大。海外のイベントや企業訪問など、小売、リテールの情報を収集し社内外への発信活動を行う。21年にdb-labを設立し株式会社顧客時間にプロジェクトマネージャーとして参画。同年6月より、株式会社ヤプリのエグゼクティブスペシャリストに就任。

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