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年間の視聴者数1000万人突破! ユニクロのライブコマースが好調な理由

ファーストリテイリング(山口県/柳井正会長兼社長)の事業会社ユニクロ(山口県/塚越大介社長)が展開するライブ配信オウンドメディア「UNIQLO LIVE STATION」の年間累計視聴者数が1000万人を突破した。同時期にライブコマースに参入した企業は少なくないが、成功と撤退とに大きく明暗が分かれている。なぜユニクロのライブコマースは順調なのか。ジャパンマーケティング部ライブステーションチームの岡野まかみ氏と、北田渉氏に聞いた。

双方向コミュニケーションを重視

店舗配信の様子

 ユニクロは2020年12月から「UNIQLO LIVE STATION」を始めた。動画コンテンツが当たり前の時代になったことや、コロナウイルスの影響によってオンラインで買い物する人が増えたことが背景にある。UNIQLO LIVE STATIONの配信では「新作スウェット & ニット 色から春を取り入れよう」や「お悩み解決 服のお手入れ術」など、多様な企画が展開されている。

 ユニクロのライブコマースが順調な理由は、双方向のコミュニケーションを重視しているからだ。たとえば新作を紹介するライブ配信中に、視聴者から「今紹介しているセーターのピンクはありますか?」「○○さんが着ている緑のニットはベージュのパンツにも合いますか?」などの質問が来て、出演している販売員がそれに答える。

 「スタッフから何かをおすすめするという一方的な配信ではなく、店舗にご来店いただいたお客さまの話を聞きながら服を提案するイメージで配信している。オンラインとはいえ店舗での接客とまったく同じ」(北田氏)

 オンラインの配信だからこそ視聴者に喜ばれている点もある。たとえば「外に出るのが億劫だったが、ライブコマースを見て服を買いに行くのが楽しみになった」「家族の体調が悪くてお店に行けないので、家にいながらお買い物ができてうれしい」という声も多い。

過去の配信も閲覧できる(公式オンラインサイトより)

スタッフにファンが付く

チラシを提示することも

 ライブコマースを立ち上げた当初はプロのスタイリストやモデルにも出演してもらった。しかし今では、基本的にユニクロの販売員がMCを務める。より視聴者に近い存在のため、スタイリングやコーディネートの参考になりやすいと好評だ。ライバーのように振舞うのではなく、店舗で接客するときと同じように視聴者へ話しかけている。

 「配信している販売員たちが楽しむことも重要。紹介している商品を心からお客さまにご提案したいという想いは、画面越しでも視聴者の方々に必ず伝わる。それができるのは顧客と最も近い立場の販売員だからこそ」(北田氏)

 ユニクロのライブコマースは販売員の力によって支えられている。ライブが始まると「○○さんこんばんは~」や「○○さんに直接コーディネートしてもらいたい!」のように販売員に対するコメントも多く、個人にファンがついていることがうかがえる。

 「ライブコマースがきっかけとなり店舗に来店いただくことも多い。『あの店員さんからまた買いたい』と、何度もリピートしてくれる方もいる。販売員を通じてそのブランドのファンになっていただくことは、小売業の本質だと思っている」(岡野氏)

地域に密着した企画を立てる

本部配信の様子

 ライブコマースの配信は大きく分けて2種類ある。ひとつは、月曜と金曜の夜に有明のスタジオからおこなう全国向けの配信。もうひとつは、47都道府県で毎月おこなっている各店舗からの配信だ。地域に密着した店舗から配信するようになった理由は、そのエリアならではの特性があるからだ。

 たとえば、11月の平均気温は札幌は7度前後で沖縄は20度を超えるため、札幌ではヒートテックの商品を提案するが沖縄ではエアリズムの商品を提案する。このような地域ごとの違いを考慮しているため、提案する商品やコーディネートが異なるのだ。

 また、オンライン以外でも地域に密着した企画は多い。2023年11日に大阪の心斎橋でオープンした「UNIQLO SHINSAIBASHI」では、老舗和菓子屋「喜八洲総本舗」や、大阪アメリカ村で誕生したこだわりのたこ焼き「甲賀流」など、大阪を代表する企業とのコラボ商品を発表した。

 ユニクロミウィ橋本店(神奈川県相模原市)では、ラグビーチーム「三菱重工相模原ダイナボアーズ」と一緒にコラボTシャツを作ったり、チームメンバーにイベントに出演してもらったりするなど、地域に根づいたスポーツチームと協業している。

 ユニクロは「地域密着」を大事にしており、その考えはUNIQLO LIVE STATIONでも同様だ。「全国配信だけでなく、地域に根ざす各店舗で配信する意味は大きい。私は京都出身だが、やはり京都の配信を見てしまう。出身地や今住んでいる場所への愛着を持っている方は多い」と北田氏は話す。

近くの店舗の配信も選べる

UNIQLO LIVE STATIONはオウンドメディア

ニューヨーク店での配信の様子

 ユニクロでは、UNIQLO LIVE STATIONを単なるライブコマースのプラットフォームではなくオウンドメディアとしてとらえている。たとえば、元プロサッカー選手の内田篤人氏が開催したイベントを生配信したり、新しくオープンする店舗を紹介したりもしている。

 他にも、「服をできる限り長く大切に着て、最後は捨てずにリサイクルする」をコンセプトに掲げる古着プロジェクトの紹介など、ユニクロが会社として取り組んでいる内容も配信している。「UNIQLO LIVE STATIONというメディアのコンテンツのひとつに『ライブコマース』があるというイメージ」と北田氏は言う。

 グローバルでも、すでに24の国と地域で配信をスタートしている。昨年は、インバウンド需要を見越して、浅草の店舗から香港に住んでいる顧客に向けて配信した。香港から香港へ向けて配信するよりも閲覧数は多かったという。

 「来日したときにユニクロの店舗で買い物をする方が多いため、日本でどんなものを売っているか気にしている方が多い。今後もUNIQLO LIVE STATIONで世界中のお客さまに求められるコミュニケーションをしていきたい」(岡野氏)

 メディアとしてのUNIQLO LIVE STATIONはどこまで躍進を遂げるか。今後のグローバル展開も含め、目が離せない。