業界再編が続き大手への系列化が進む卸売業界、物流コストの高騰や人手不足によって、経営効率化のため営業縮小する地方卸も散見される。そうした中では、流通量の少ない商品や小ロットで商品を仕入れるということがますます難しくなり、小売店等での差別化がしにくい時代になってきた。そうした中で、注目したい動きとして、BtoBのフードeコマースがある。
フードeコマース、Foodliveとは?
卸売業の系列化が進むとともに、このところの物流コストの高騰、人手不足もあって、地方の卸のなかには経営効率化のため営業エリアの縮小を余儀なくされるところも増えている。そのため、従来、通常取引で仕入れられてきたものが、最低取引量の設定、卸価格の変更、取引中止といった影響により、小売の店頭から商品が姿を消すということも珍しくはない。
流通ルートを断たれる側からすれば、なんとかなる方法はないものかと、日々、模索しているにちがいない。
そうしたなか、地域と全国をつなぎ、小ロットからの食品流通を可能にする、食品特化の仕入・販売BtoBサイトが、「フードeコマース」に出展していた。伊藤忠食品が2018年8月から本格展開を始めた「Foodlive(フードライブ)」である。
伊藤忠食品はサプライヤーとして提供する商品を除き、基本的には取引プラットフォームとしての「フードライブ」の運営に携わり、商流には介在しない。初期費用、出店・出品費用、月額基本料は、すべて無料。完全成約報酬制で、伊藤忠食品はサービス利用料として取引金額の4%をサプライヤーから徴収する仕組みになっている。
決済サービスとして、ラクーンフィナンシャル(東証一部上場のラクーンホールディングス子会社)が提供する「Paid」に対応しており、サプライヤーへの支払いはフードライブが担う。「Paid」は法人向けの後払いサービスで、決済手数料は3%だ。直接決済、代金引換も可能だ。
取り扱いは2万SKU 希少野菜やジビエなども実績
アルコール類、水・その他飲料、加工食品が中心だが、業務用スーパーによる生鮮品の取り扱いもある。また、東京・大田市場に営業所をもつ「成田市場青果」もサプライヤーとして新鮮野菜を供給しており、都内4区限定(千代田区、港区、品川区、中央区)だが、午前0時までの注文であれば当日の11時までに配送するサービスも提供している。
取り扱いアイテムは、現在のところ、2万SKU弱の登録。業務用のキッチン洗剤、ユニフォーム、テイクアウト需要に向けた持ち帰り用の包材、厨房機器といった、非食品の購入も可能だ。これまでの利用実績では、地方食材、流通量が少ない希少野菜、ジビエ、米、野菜加工品などで取引実績を上げているという。
このフードライブを利用できるのは、入会審査を経た国内で登記しているメーカー・卸・小売、国内在住の個人事業主で、24時間365日、仕入れ・販売ができる。飲食店が利用することも可能。消費者としての利用はできない。
入会審査においては、企業審査は伊藤忠食品、信用審査は「PAID」を提供するラクーンフィナンシャルサービスが行う。
フードライブを活用すれば、取引金額が少なくてもメーカー・卸との取引ができるようになり、また、全国流通が厳しかった地方の中小メーカーが全国に販路を持つことも可能だ。
消費者直送取引にも対応
フードライブの取引開始までの流れは次のようになる(小売の場合)。
会員登録(入会審査)の後、倉庫(納品先)の登録をする。フードライブ上で、欲しい商品を探す。この時点でわかるのは、販売条件として「最低発注数」、「発注単位数」、「決済方法」、「送料条件」のほか、配送エリア、配送方法、納品リードタイムなどだ。商品が決まったら、販売者に対し「取引開始リクエスト」を送信する。販売者が承認すれば、取引関係が成立し、卸価格など、取引条件の詳細を確認することでできる。
通常の仕入・販売取引のほか、仕入れ先が消費者に販売する場合は、消費者直送取引のドロップシッピング(BtoBtoC)にも対応している(楽ちょくサービス)。
「個人事業主や中小の場合、冷凍・冷蔵倉庫などのインフラも十分でないところもある。ドロップシッピングならば、インフラや売り残しを心配することなく、お中元・お歳暮、おせち、産直品など、受発注形式での販売ができる」(フードライブ担当者)
取引関係に応じて、サプライヤー側が、「通常の卸価格1000円のところ、取引先Aには特別定価として800円」というように販売条件を変更することもできる。また、たとえば在庫数量が限られた商品を、特定の取引先だけに表示させることも可能だ。
フードライブの機能を利用すれば、メーカーの過剰在庫、季節商品、廃盤商品のほか、商慣習である「3分の1ルール」(賞味期限の1/3までの間に小売店舗に納入するという暗黙の決め事)によって発生した不良在庫の取引に活用することもできる。フードライブでは「食品ロス削減国民運動」(農林水産省)に協力しており、現在、「フードロスをゼロに」をテーマにした専用ページを設けている。
小売からすれば、味、品質に問題のないものを、目ざとく発見し、安く仕入れることも可能というわけだ。
フードライブがリリースされて1年余り。「登録会員数は、サプライヤー150社、バイヤー150社程度」(同)という。
まだまだ商品カテゴリーによっては、伊藤忠食品の商品が目立つところもあるが、いざというときに利用できる取引ルートはいくつあっても困らない。フードライブは、既存流通のバックアップとして、また、掘り出しものを見つける場としても、活用できる取引プラットフォームということだろう。