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ターゲット、ウォルマート、ホームデポが導入済みの、売場体験の維持管理ツールが日本上陸

EC(ネット通販)市場の拡大とそのスピードを加速しているスマートフォンの普及による買い物スタイルの変化、AI(人工知能)、クラウドコンピューティング、ビッグデータ、ロボットといった先進テクノロジーの進化が小売業のビジネスモデルに大きな変革を迫っている。その一方で、利便性を追求するECへの消費者からの飽き足りなさも生じ始め、リアル店舗に対する価値観が変わろうとしている。
そうした環境下で開催された第11回「販促・マーケティング総合展【夏】」では、小売店舗に対するさまざまなソリューションの提案がなされていた。そこから得られた知見として今回は、「リアル店舗ならではの体験」にフォーカスした。

Photo by Urupong from iStock

ECの利便性と、リアル店舗ならではの意外性や体験性を融合!?

 ECの拡大により、リアル店舗の存在意義、そのあり方が問われている。数年前までは「EC vs. リアル店舗」といった対立軸で語られることが多かったが、ECがポピュラーな買物スタイルになるにつれ、ECへの物足りなさも感じるようになった。反面、リアル店舗のありがたみや存在意義が再び、注目を集めるようになっている。

 創業40年超、店舗の企画・デザインを手がけるタッグ(東京都千代田区)では、“狭小スペースで無制限に商品を扱える店舗”として「MISE-demo」を提案している。

 このMISE-demoは、「世界最強の坪効率」をうたい、次世代の店舗(特許出願済)という位置付けで、画面に表示されている商品をタップし、QRコードをスマートフォンのカメラでスキャンすることで、商品代金の決済まで完了できるというもの。販促用の什器にデジタルサイネージとEC機能が備わったというイメージだ。

「目的買いをするならECが圧倒的に便利。しかし、街歩きをしながら、ウインドウショッピングを楽しみながら、という買い物スタイルをECで体験するのは難しい。ECの利便性と、リアル店舗がもつ意外性や体験性を融合させたのが、MISE-demoの考え方」(担当者)

 193月、京成上野駅リニューアルオープンに伴い、キン肉マンのポップアップストアとして、MISE-demoATMコーナーに設置・運用を行った。今回の展示スペースでも、その実物が展示され、多くの人が立ち止まっては、画面操作を確かめていた。

EC型の自動販売機としてはあまり期待していなかったが、お台場にある実店舗への誘客には効果があったと聞いている」(同)

 このMISE-demoはスペースに応じ、什器の大きさを変えられるというのが特徴のひとつ。キン肉マンのポップアップストアのように独立した店舗として使うこともできれば、ショップ・イン・ショップとして店頭在庫を持たない商品の展示販売用に活用することもできる。

「スニーカー売場のように、壁面を所狭しとサンプルが並べられている売場も、MISE-demoを活用し、現物は1種類だけにし、カラーバリエーションはサイネージで見せるようにすれば、スッキリした売場にできる。展示品が少なければ、万引きの心配も減る」(同)

 MISE-demoの発展形として、無人の店舗スペースに、MISE-demoで扱う商品と、サンプルとして実物を置く商品とを組み合わせて展開する方法もある(「MISE-demoバスケット」)。

このサービスを活用すれば、商品選びはこの場で済ませておいて、指定店舗での受取りにするとか、とりあえず買い物候補にしておいて後から購入商品を決めるといった買い物スタイルも可能になる(全商品にQRコードが付いていることが前提)。

 いちいち持ち運ぶのが面倒な重量のある商品、かさ張る商品はMISE-demoで決済まで済ませ、帰りに受け取るといったことや、ショッピングモールとして導入すれば、店舗ごとに支払いをしなくとも、最後に買い物カートに入っている商品をまとめて決済するといったことにも対応することができる。

 家具・インテリア販売の大手ニトリでは、専用スマホアプリに「手ぶらdeショッピング」の機能を入れ、店内で欲しい商品のバーコードを読み込み、ECや店頭で手続きすれば、商品を持ち運ぶことなく買い物ができるサービスを提供しているが、MISE-demoバスケットを活用すれば、ほぼ同様のサービスを廉価で導入することも可能だ。

 1台のMISE-demoでの商品登録数は、画面での見やすさを考えると100から200くらいまでが現実的。QR決済だけでなく、クーポンの発行(デジタル発行)にも対応しており、リアル店舗への誘導にも活用できる。

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ウォルマートもターゲットも、ホームデポ も導入済みのツールが日本でも

ブランドの熱心な代弁者たる大ファンを育成する!

リアル店舗の価値である“体験”。せっかくの体験も、ディスプレイや見本に不具合があったら台無し。この体験の状態を管理するサービスがBreak Fixである

 いま、体験スペースとしてのリアル店舗の機能に注目が集まっている。EC専業がブランディング体験のためにサンプル展示だけのリアル店舗を出店したりするのはそのいい例だ。また、かつて家電量販店などで問題視されたショールーミングも言ってみれば体験を求めてのものだ。ECの利便性があがるにつれ、商品探しや決済は24時間365日利用できるインターネット上で、触ったり、試したり、確認したりといった体験はリアル店舗で、というように同じ店のネットとリアルの両方を使って買い物を楽しむ層も増えている。リアルでの体験の良し悪しで、売上も左右するという時代になっている。

 リアル店舗での商品体験には、イベントのような大掛かりなものもあれば、現物確認だけということもあるし、店舗スタッフへの問合せ、メーカーなどが提供するさまざまな販促ツールやデジタルサイネージを通じた商品情報の収集もそのひとつだ。最近の家電やオーディオ製品などは、デジタルサイネージによる説明を確認しながら実物を体験するということも多い。

 ところが、お客がそういう状況を期待して来店しているのに、体験用のサンプルが壊れていたり、デジタルサイネージの電源が落ちてしまっていたりと、不具合の生じている売場はけっして少なくない。米国では、こうした売場を専任スタッフの巡回によりその場で解決するというサービスがすでに登場している。米国を代表するリテールサポート企業である、BDSマーケティング社が2013年より展開している「Break fix(ブレイクフィックス)」はその一例だ。ターゲット、ベストバイ、ウォルマート、ホームデポ、ステープルなどで、同社のサービスを導入済みだという。

 日本国内2500社での実地棚卸しをはじめとして流通小売業の店舗でのノンコア業務の代行を専門に行うエイジス(千葉県/齋藤昭生社長)では、19年にBDSマーケティング社と業務提携を結び、日本国内でのブレイクフィックス事業をスタートさせた。

 「今後は、店舗から商品在庫がなくなり、店舗はますます、試して、触って、という体験の場になる。店舗は商品を消費者と出会わせる場所であり、そこが期待したものでなければ、消費者はその店から離れてしまう。ブレイクフィックスはそうした体験の機会ロスを最低限に抑えるために有用なものだ」

 エイジスの担当者はそう語る。

 同社では「体験の売場が機能しているかどうかで、実際に売上げがどう変わるのか」「店頭のコンディションがどれくらい実売に結びつくか」といったことをデータ化することも検討している。

 BDSマーケティング社では、最近の消費環境の変化を次のように分析している。

「顧客が感動体験を自ら発信して拡散するようになっている。消費者はさまざまなチャネルから情報を得て、ブランドのファンになり、そのなかから、Adovocates(=ブランド価値を代弁してくれるような熱狂的なファン)が周囲にその影響力を波及させる発信を行う」

 そして、Adovocates育成のためには、店舗での『感動体験』がカギであり、それを最善の状態に維持していく役割を担うのが「ブレイクフィックス」であると締めくくっている。