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自衛隊とウエルシアが興味を示したコミュニケーションツールって何だ?

流通小売業界はかつてない変化にさらされている。
少子高齢化による小売市場の縮小はいうまでもないが、EC(ネット通販)市場の拡大とそのスピードを加速しているスマートフォンの普及による買い物スタイルの変化、AI(人工知能)、クラウドコンピューティング、ビッグデータ、ロボットといった先進テクノロジーの進化、最近では採用難や人手不足による店舗運営上の課題も抱えるところも増えている。その一方で、利便性を追求するECへの消費者からの飽き足りなさも生じ始め、リアル店舗に対する価値観が変わろうとしている。
そうした環境下で開催された第11回「販促・マーケティング総合展【夏】」では、小売店舗に対するさまざまなソリューションの提案がなされていた。そこから得られた知見として今回は、「いつの時代にも必要とされるベーシックなもの」について解説したい。

販促提案×顔認証で効果測定のPDCA回す

共同印刷が提案する「リア食」

 ベーシックなソリューションとしては、あらためて「なるほど」と思ってしまった、販売促進と業務改善の2つの手法を紹介しよう。

 前者は共同印刷が提案する「リア食」だ。同社が独自に集めた約5000人のモニターから、“食卓の写真”と、“いつ・どこで・だれと・なぜ・なにを”といった情報を収集し、そのデータをもとに食卓を分析し、商品開発や販売促進に活用している。食卓画像は毎日3000枚以上の投稿があり、これまでに300万枚がデータとして蓄積されているという。

 今回の展示では、スーパーマーケットでそろそろ販促テーマになる「ハロウィン」をキーワードにした提案例が示されていた。

「昨今のハロウィン市場は、バレンタイン市場の規模を超えたと話題になったが、ここ数年は微減傾向にある。しかしそのなかで、“プチ盛り上がり”しているものもある。ハロウィンの夜は、子どもを中心に自宅で家族と楽しむ傾向にあるのだ」(担当者)

 そこで店頭で展開する販促イベントのコンセプトとして「お手軽ハロウィン!ちょいハロフェスタ」を提案。一般的なスーパーマーケットのフロアマップをもとに、青果、加工食品、飲料、精肉、出入口で展開するPOP例なども展示していた。

 しかし単なる販促企画の提案で終わっていれば、「リア食」はこれまでの販売店サポートとなんら変わりはないが、テクノロジーと科学を組み合わせ、一過性の販促企画に終わらせない仕組みになっている。

 たとえば、販促企画に合わせたWebカメラ搭載のデジタルサイネージを各売場に配し、立ち止まったお客を顔認証し、レジ通過時にその後の購買につながったかどうかを確認することも可能だ。はたしてこの販促企画が正解だったのか、効果検証につなげられるということだ。また、食卓画像をAIで分析し、管理栄養士と協力してメニュー提案につなげることもできる。

 つまり「リア食」では、食卓画像データベースから、イベント時期に合わせた企画テーマを選び出し、販促イベントを実施、Webカメラを用いた効果検証を行い、次回以降の販促企画に生かすというPDCAを回すことができるのだ。

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ウエルシアが導入、自衛隊も興味、業務指示徹底にフォーカスしたツール

業務指示の徹底に絞ったコミュニケーションツール

業務改善の手法として注目を集める、流通小売業界向け業務指示支援ツール「WOMS」

 業務改善の手法として、このところ注目を集めているのが、流通小売業界向け業務指示支援ツール「WOMSWork Order Management System)」(菱洋エレクトロ/東京都)だ。

 「組織内のコミュニケーションツールには、古くは電話、FAXに始まり、グループウエアや電子メール、SNSなどがある。とくに近年では、1つのシステムでさまざまな用途に対応できるグループウエアの導入が進んできた。しかし、複数の事業所、店舗を抱えるところでは、業務指示が現場の末端まで行き届かない、現場で指示どおり動いているのか確認できないという不満や不安も生じてきている。リコール対象の連絡、キャンペーンの実施の指示等のように、企業の業績に直結する業務指示が徹底されていないのではないか、と疑問に持つ経営層も増えている」

 WOMSの担当者はそう話し、その原因として、導入したコミュニケーションツールの使い方に問題があると指摘する。

 たとえば、本部からの業務指示が、同じタイミングで複数本流れている、複数カ所から1名の受け手に送られている、連絡メールと業務指示が紛れてしまっているといったケースはほんの一例だ。また、だれかが連絡あるいは業務指示を流すと、それに触発されて、たて続けに、優先順位や重要度もさまざまな要件が流される、ということも少なくないという。その結果、「ヌケ」「モレ」が生じたり、事業所や店舗ごとに指示の進捗状況がバラバラになるといった事態に陥ってしまう。

「そこで当社は、オールマイティなツールではなく、業務指示を徹底させるツールとして『WOMS』を開発した。クラウドベースなので、開発コストや稼働までの準備期間も気にならない規模だと思う」(担当者)

 WOMSの特徴として、期限ありの業務指示、期限なしの業務連絡の専用ツールであること、受信先が業務指示の内容を確認したかどうか(内容を開封したか)がわかるのはもちろん、指示内容を実施した際の確認ボタンもあり、「指示内容の確認⇒実施」というプロセスが簡単に管理できることがあげられる。

WOMSは“徹底したい”という強いメッセージを伝えることができる。そのため、意外な引き合い先として自衛隊がある。自衛隊の場合、即座に生死に関わるようなクリティカルな要件も多く、WOMSの考え方が理解されたようだ」(同)

 このWOMS導入にあたって必要になるのが、業務指示の命令系統だ。本部から各商品担当へ、商品担当から店長へ、スーパーバイザーからそれぞれの管轄店長へ、社長から全社員へ、といった実際の業務指示フローをWOMSのシステムに設定し(菱洋エレクトロで行う)、対象者にID、パスワードを付与すれば、利用可能になる。

 このWOMSをいち早く導入し、業務指示の徹底を図ったのが、大手ドラッグストアであるウエルシア薬局だ。

「売れ行きの悪い商品の追加発注をしないよう、メールや電話で注意勧告をしていたが、しっかり業務指示が伝わらず、全店在庫が増加し、損失を被った」というケースがたびたびあり、それを解決するためのソリューションとしてWOMSを導入することになったという。導入IDは2000IDを超える規模になっているが、同社では「日々発生する本部から各エリア、各店舗への業務指示を行うための基盤として重要な役割を担っている」と語っている