EC時代の最適な配送と返品とは? ヤマト運輸が挑む「ECエコシステム」の現在地

2022/06/29 05:57
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    「ECの特徴は、荷物を『依頼する人』と『受け取る人』が同じであること。自分自身で荷物が届くことを知っているからこそ、荷物の受け取り方をコントロールしたいというニーズが高まっている」(山崎氏)

    とりわけ、コロナ禍とともに顕在化したのは、ドライバーと接触しない「非対面」での受け取りニーズだ。そういった、EC時代の多様化する受け取りニーズに応えるためにも、エンドユーザーである「利用者とのタッチポイント」と、受け取り方の選択肢を増やすことが同社の重要課題となっていた。
    ※利用者が荷物を受け取りできる場所や機会

    配送事業者と利用者がデジタルでつながる「EAZY」

    そのEC需要の高まりを受け、ヤマト運輸は2020年1月に発表した経営構造改革プラン「YAMATO NEXT100」において、ECに特化した新たな配送システム「ECエコシステム」構想を打ち出した。その中でEC荷物の新たな配送商品として2020年6月に開始したのが「EAZY」(イージー)だ。

    EAZYは、配送事業者と利用者がウェブ上でリアルタイムにつながることで、受け取り日時指定に加えて、利用者が希望する受け取り方法を自由に選択できるサービスだ。「対面」「玄関ドア前」「宅配ボックス」から「自転車のかご」まで、多くのメニューから受け取り方法を選択することができる。

    また、「急用で出かけなければならない」「残業で帰宅が遅くなる」「オンライン会議が長引いた」など、急に都合が悪くなった場合でも、ドライバーが届ける直前まで受け取り方法をウェブやアプリから変更することができる。状況に応じてリアルタイムなコミュニケーションがとれるからこそ、「こう受け取りたい」というニーズを限りなく満たすことができるのだ。

    導入するEC事業者は、ZOZOTOWNやYahoo!など大手ECプラットフォームをはじめ13社に上る(2022年6月現在)。受け取る利用者の利便性が向上することで、EC事業者にとっても、不在による再配達や返品の減少につながり、結果的に配送の効率化が図れている。「中には、商品の不達率が半減したEC事業者もいる」(山﨑氏)

    このEAZYに加えて、利用者とのタッチポイント拡大の一環として推進しているのが、ドラッグストアやスーパーなどの店舗をEC荷物の受け取り拠点とするサービスだ。

    受け取り店舗(Doddole )のイメージ
    全国約600店舗がEC荷物の受け取り拠点となっている(写真提供:ヤマト運輸)

    EC購入商品の受け取り・返品システムをグローバルに展開する英・Doddle Parcel Services Ltd(Doddle社)と提携。同社のシステムを導入し、EC荷物の受け取り拠点となっている店舗は全国約7000店舗に上る。(2022年6月現在)

    「利用者にとっては、自身のライフスタイルに応じて、日ごろ利用する店舗で受け取りたいというニーズを満たすことができる。一方、店舗側にとっては、来店動機の一つとして導入していただくケースが多い」(山﨑氏)

    EC時代の新たな「返品」ニーズに対応した新システム

    ECの普及がもたらしているのは、受け取りニーズの多様化だけではない。もう一つの新たな配送ニーズが購入した商品の「返品」だ。

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