「10分で届く宅配スーパー」を標榜し、都内一部地域で食品や日用品の短時間宅配事業を展開するOniGO(東京都/梅下直也社長:サービス名も「OniGO」)。コロナ禍でネットスーパーへの需要が急増するなか、「注文から10分で商品を届ける」という“超短時間”での宅配サービスに注目が集まっている。晴れて筆者の自宅も対象エリアになったため実際に利用してみたところ、既存のネットスーパーや宅配サービスとは異なる鮮烈な買物体験をすることとなった。
「OniGO」とは?
OniGOがサービスを開始したのは昨年8月。東京都目黒区の学芸大学エリアを対象に注文から「10分で宅配する」ことを標榜し、メディアでも大きく報じられた。こうした“超短時間”での宅配サービスはQコマース(クイックコマース)と呼ばれ、コロナ禍でネットスーパー・宅配事業への需要が高まるなか、世界的にプレーヤーが増えている市場である。
OniGOはダークストア(物販を行わない配送専用の店舗)を拠点とし、そこから生鮮食品や冷凍食品、酒類、日用品、ベビー用品など約700点を即時配送する。注文は専用アプリで行い、ダークストアでピッキングスタッフが梱包まで行い、配達スタッフが電動自転車でユーザーの手元まで届けるという流れだ。配送料は注文金額に関わらず一律300円である。
ダークストアは現在都内3カ所に設置されており、各ダークストアから半径1~2km圏内が配送エリアとなる。今のところ、目黒区、世田谷区、品川区の一部エリアでOniGOの利用が可能である。
スーパーとほとんど変わらない価格設定
筆者が住む世田谷区南部の自宅は当初配達エリアではなかったが、最近になってOniGOのチラシが入るようになり、利用できることが判明。少し間が空いてしまったが、担当する雑誌の編集作業が佳境を迎えていた3月上旬のある日、利用することにした。
余談だが、このように仕事に追われているときはフードデリバリーを利用することが多い。某カレーチェーンの「ハンバーグカレー(3辛)」や、タイ料理専門店の「ガパオライス(激辛)」といったジャンクなメニューを摂取して気合いを入れるのだが、やはり栄養面と胃腸への影響が気になるところだ。
そしてこの日は無性にサラダが食べたい気分。しかしサラダ専門店から取り寄せると下手をすればカレーよりも価格が高く、また個人的にあまりそそられるメニューがない。かといってサラダの材料を買いにスーパーまで行く時間的余裕はない。
前置きが長くなったが、そこでOniGoを利用してみることに。アプリをダウンロードしてメニューを覗いてみると、スーパーと遜色ないとまでは言えないが、野菜や果物、精肉、酒、飲料、チルド総菜、冷凍食品、日用品など必要十分な品揃えだ。有機野菜や冷凍の弁当、非食品では抗原検査キット、「ソーダストリーム」のシリンダーなどもあり、今日の消費ニーズに対応した商品が多い。
少し悩みつつ、サラダ用の「有機ベビーリーフ」「ミニトマト」に加え、冷蔵庫で切らせていた「炭酸水1Lボトル」2本、「納豆パック」をついで買い。金額は税込855円と、近隣のスーパーと比較してもそれほど高くついた印象はない。とくに炭酸水1Lは1本換算で100円を切っており、かなり安いのではないか。配送料は通常300円のところ、初回利用ということで無料になった。
注文から受け取りまで実際にかかった時間は……
購入ボタンを押すとチャット画面に移行し、「現在ライダーが出払っているため、配達までお時間を頂いている」旨のメッセージが届いた。夕食の時間帯であり、注文が集中しているのだろう。この時点で「10分宅配」は難しそうだが、これくらいは想定内だ。
それから10分ほどすると、配達スタッフの個人名で「本日配達を担当させていただくRider(ライダー)の○○です。これよりお伺いします」とメッセージが届き、ダークストアを出発したことが通知された。
大手フードデリバリーのように配達スタッフの現在地をリアルタイムで確認することはできない。が、不安を覚える暇もなく、わずか7分後には「到着しました」と通知が届くと同時にインターフォンが鳴り、商品を受け取ることができた。
注文完了は18時29分、商品到着は18時47分。わずか18分で商品が届いたことになる。大げさな話だが、「10分台」で注文した商品が届くという体験はこれまでの人生でしたことがない。少し感動してしまった。
配達してくれたスタッフの方に少しだけ話を聞くと、「(自身は)自由が丘のダークストアから来ている」「平日の17時~19時の時間帯は注文が多く、待機時間はほとんどないほど」「忙しい日は1回のシフトで数十件回ることもある」といったことを教えてくれた。ちなみにOniGOの配達スタッフは時給制であり、求人情報を見ると1500円~と待遇は悪くなさそうだ。
まさかのトラブル発生も”アナログ”なやり取りと迅速な対応に安心
配達スタッフの方に足止めさせてしまったことを詫び、部屋に戻って商品を確認してみると……ここで注文漏れが発覚。ミニトマトの代わりに、チョコレートが入っている! いくらなんでもベビーリーフにチョコレートは載せられない(確認したところ、このチョコレートは初回利用の特典だった)。
こうした場合はどうすればよいのかアプリで確認すると、先ほどのチャット画面で教えてほしいとのこと。ミニトマトが入っていなかったので再配達してほしい旨をメッセージすると、2分後に「大変申し訳ございません。ただいま再配達いたします」と返信が来た。
意外とアナログなやり取りだが、こういったトラブル時はすぐにレスポンスが欲しいものだ。しかも「確認します」ではなく「再配達します」と2分後に返してくれるのは安心感がある。そして10分後には先ほどと同じスタッフの方が謝りながらミニトマトを届けてくれた。
こうした配達サービスでの注文漏れ・配送漏れは、ユーザーにとってネガティブな体験になることは間違いない。初回であればなおさらだ。しかしOniGOの場合、対応の迅速さが光った。「人間が動いているのだからミスはつきもの。しかも10分程度で持ってきてくれるのだからまあしょうがないよね」と納得しながら、さっとサラダをつくって食べた。
Qコマースの真髄を見た!
OniGOは今後、都内を中心にダークストアを100カ所設置し、サービスエリアを拡大していく方針である。2月末には「ローソンストア100」との協業による配送サービスを発表するなど、外部の小売店・小売企業との提携も行っていくようだ。
もちろん、事業を拡大していけば利用数は増え、そのぶんスタッフの確保や配送効率のさらなる向上(とくにデジタルの領域)に向けた投資や取り組みが必要になっていく。それをスムーズに進めていけるかがカギになるだろう。
正直に言って、利用前は「10分で欲しいモノなんか別にない…」と思っていた。しかし、ネット通販やネットスーパーでは最短でも数時間はかかるところを、10分台で商品が届くという体験は純粋に鮮烈なものだった。
子育て中の家庭、介護に忙しい家庭であれば、この体験はなおさら価値の高いものだ。「10分で欲しいか」は別として、「買物に行く時間」「商品を待つ時間」を圧倒的に短縮でき、その分を家事や育児や介護、仕事に割けるというのがQコマースの真髄なのだ。わかっているようでわかっていなかったこの事実を、OniGOを使って体感することができた。