OMO型ストアで“ファッションECの壁”打破をめざす楽天 東急と協力しシナジー創出へ

若狭 靖代(ダイヤモンド・チェーンストア 記者)
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楽天がねらうオフライン進出、OMOの可能性とは

 今回のポップアップストアは、楽天東急プランニングがOMO事業の一環として楽天と共同で行った企画。楽天東急プランニングは、株式の51%を楽天が、49%を東急が持ち合い設立した会社で、主に広告事業、データマーケティング事業、OMO事業を行う。

 記者説明会において、楽天東急プランニング社長で楽天グループ常務執行役員の笠原氏は、「これからの時代、オンライン・オフラインどちらかだけで生活する人は減ってくる。両方の良いところを活かす可能性を探り事業化していきたい」と話した。実際に、10〜20年前にはオンラインショッピングといえば自宅でパソコンを通じて行うものだったが、現在はスマートフォンの普及などにより必ずしもオンラインショッピング=自宅ではなくなってきている。「オフラインで行動している最中に、オンラインで買物をするシチュエーションが増えてきている」(楽天グループ執行役員 松村亮氏)ことから、今後は楽天会員のユーザーIDと位置情報を活用し、近くにいるユーザーに向けてストア情報をリアルタイムに配信するなどの試みも検討中だという。

 また、ファッションECには「手触りやサイズ感が分からない」という超えられない壁が存在するが、その壁を超えるためのOMOストアの可能性にも触れた。近年、アダストリア(東京都/木村治社長)やオンワード樫山(東京都/鈴木恒則社長)など、主にアパレル業界でOMOストア出店が加速しているが、楽天としてもまずはファッション領域をOMO事業の軸に据えたい考えだ。さらに、ECに関しては豊富な知見を持つ楽天だが、「オフラインの店舗には、独自の知見や専門性を持っている人がいる。新たな体験構築のためには、そういった人々との協力が必要」(松村氏)との考えを示し、実店舗販売や接客に強みを持つ東急とのシナジー創出についても期待を表した。

 今後のポップアップストア展開については、「今回の反応次第。来店者数や購入額よりも、新たな購買体験をしたお客さまがどのくらい喜んでくれるか、ということを指標にしたい」(笠原氏)とした。アパレル業界全体がコロナ禍によってかつてない落ち込みとなる中で楽天は、21年度第3四半期のショッピングEC流通総額前年同期比8.7%増という好調ぶりだ。楽天が手がけるOMOストアが今後どのような展開を見せるのか、高い関心が集まりそうだ。

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