1万店舗チェーンストア企業への挑戦
ゲンキードラッグストア株式会社の藤永賢一氏

ダイヤモンド・リテイルメディア 流通マーケティング局
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1万店舗チェーンストア企業への挑戦

藤永 賢一 氏Genky DrugStores株式会社
代表取締役社長
藤永 賢一

「県別シェアナンバーワン主義」を掲げて

Genky DrugStores(ゲンキードラッグストア)は1990年創業のドラッグストア企業で福井県福井市を拠点に岐阜県、愛知県など5県で387店舗を展開している(2022年8月現在)。2021年度の売り上げは1423億円を記録し、中でも食品の販売を強化したことで食品小売業界からも多くの注目を集めている。講演では、ゲンキードラッグストアの最前線の取り組みを紹介する。

創業当初は小型店からスタートし、福井県外の石川県に出店したのが97年のことだった。しかし、小型ドラッグストアの業態だと他社との差別化が図れないと判断した藤永氏は、大型店に切り替えるべく3年準備して2000年から750坪から900坪の「郊外型メガドラッグストア」に切り替え、同社は大きく成長することとなった。

その後、15年かけて70〜80店まで出店したが、時代の変化とともにお客の購買方法に変化が訪れる。共働き世帯が増え、ショートタイムショッピングが主流となったのだ。そこで2015年、店舗を1/3サイズの300坪の縮小モデルへ転換。さらに2年後、生鮮食品を扱うこととなり、プロセスセンターと物流センターを完備することで低価格帯のドラッグストアとして支持されることとなった。

387箇所という店舗数の割に出店県数が少ないのが同社の特徴の一つ。それぞれのエリアでシェアナンバーワン獲得を狙うのが戦略だからだ。現在、福井と岐阜でナンバーワンを達成し、残すは愛知・石川・滋賀で店舗数だけではなくてドラッグストアとしての売上を業界一位に叶えるべく、ドミナント及びランチェスター戦略を掲げている。(表1参照)

表1

7000人商圏、店舗レイアウト標準化など
安定的な収益性維持のための施策

同社がスピーディに店舗出店を実現できた理由は、店のレイアウトを標準化する「ローコスト店舗」にこだわったからだ。全店のうち8割強が「300坪・11通路・24連結ゴンドラ(入り口は右と左の2パターン)」のレイアウトを採用し、この規格に合わない立地であれば、原則として出店は諦めるというスタイルを徹底した。

同社のコンセプトは「近所で生活費が節約できるお店」。低価格帯を実現し来店頻度を上げるため、、2017年から生鮮食品売り場を作り冷蔵多段ケースを入れて日配品とハムソーセージ以外の精製品を扱うようになった。また、「7000人商圏」に焦点を当て、足元商圏のリピート来店により安定的に収益をあげていった。

また店舗開発を専門とする部署とは別に「売上予測課」を立ち上げ、店舗拡大すればするほど精度を上げられる収益予測と社内牽制機能を実現させた。

工夫を凝らしたのは、本部主導の店舗オペレーションだ。これを”単純化”することで、新卒社員が2~3年経験をつめば店長を勤められる運営マニュアルを開発した。従業員一人当たり売り場面積は30坪を目標とし、300坪の店であれば8時間換算で10名までで運営できる。これはホームセンタークラスの一人当たり売り場面積をドラッグストアに持ち込んでいる計算だ。

また、足元商圏を主としインバウンド需要に頼らないことで、誰も予想しなかったパンデミックの事態においても売上や収益性が安定している。販促においては、2020年5月より日替り特売を抑制し、毎日が特売というEDLPに切り替えた。さらにチラシ折込頻度を3週間に1度に減らし、店舗で手配りをすることで浮いた経費を値引きの原資にしている。

ローコスト経営を支える「自前主義」とは

前述したように当社のコンセプトは、「近所で生活費が節約できるお店」である。値引きを追求するためには安く売り続ける仕組みを構築しなければならない。そこで当社はローコスト経営を支える自前主義として以下の4つのポイントを掲げている。

  1.  不動産ディベロッパーを介さない店舗開発
  2.  仕様・デザインから保管管理・配送まで自社で行い圧倒的な低価格で節約志向に対応するプライベートブランド
  3.  PLに頼らない自社運営で業界最低の物流費比率を維持
  4.  精製食品は弁当・惣菜・生肉を製造加工する自社プロセスセンター(岐阜安八RPCD)を稼働。※2024年以降、愛知県内に第3RPCDを建設予定

また、自前で物流を担い、食品をカテゴリー別に計画的に納品することで品出し時間を15%圧縮することにも成功した。

こうした取り組みはドラッグストア企業では稀であり、生鮮食品を自前主義で展開することで競争力強化と来店頻度向上に大きく貢献している。数々の企業努力により業界最大の一人当たり売場面積30坪、業界最安値の坪あたり経費高20万円/(坪・年)を実現させているのだ。(その他施策は、表2参照)。藤永氏は、「1万店舗チェーンストア」の実現に向けて、年間1000店舗出店し続ける体制を構築していく考えを示した。

表2

各プログラムの詳細

下記画像リンクから、各プログラムの詳細をご覧いただけます。

生協がすすめるDX お客様との接点を強化し店舗への来店を促進!これからの集客手段最前線

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