流通マーケターのための食品表示の基礎知識
第6回(最終回) 流通マーケターの立場からなすべきこと

食品表示を消費者に正しく伝えるために必要なこと

 連載の第1回でもお話ししたように、食品表示は生産者をはじめ、仕入れた食材を加工するメーカー、消費者に商品を届ける卸売業、小売業といった提供サイドの一連の動きのすべてに当てはまります。生産者から消費者まで、一連の情報のバトンタッチの中で、一つでも不適切なものがあると消費者に正しい情報が伝わりません。そのため食品に関わる事業者はつねに、安全・安心な食品を提供することが求められており、これを消費者に伝える上で、食品表示は重要な役割を果たしています。

 食品を扱ううえでデータの管理は非常に重要なことです。「トレーサビリティ」には「追跡」、「遡及」という2つの役割があります。「追跡」(トレースバック)は事故品を流した場合のリコール、「遡及」(トレースフォワード)は事故の原因究明という意味を持ちます。生産から消費まで、川上から川下まで、食品にかかわる事業者は、どの段階で問題が起きたのか、「追跡」、「遡及」を行うことで、社会に情報を提示することが必要となります(図表)。

図表●トレーサビリティの仕組み(チェーントレーサビリティ)

トレーサビリティの仕組み

 企業規模が大きくなるほど分業化が進み、データの管理や責任の所在が不明瞭になりがちです。国際基準であるコーデックスでは「トレーサビリティ」における「追跡」と「遡及」のどちらも義務づけられています。単に商品を扱うだけでなく何度で温度管理したか、添加物の使用の有無、誰が扱ったかなど、関連の情報も必要となるのです。

 食品表示基準の改正により新たな表記項目も増えたことで、表記内容の裏付けはさらに複雑化しました。たとえば原料原産地について、原材料は非常に多くの種類があるため、いつ仕入れ、どのロットを使用したか、いつ加工したかなど、必要となった時にすぐに提出できるような客観的なデータの管理が必要です。

 根拠のあるデータは信頼感を生み出します。データ管理だけでなくそこから解析を行いフィードバックすることは、自社の製品を深く理解することにつながり、さらに消費者からの信頼にもつながっていきます。規模の大きな企業ほど自社の商品やシステムを見直すことが少ないかと思いますが、社内のコミュニケーションを高めることが重要であり、データ管理・解析はその一環なのです。

 2015年4月に食品表示法に基づく食品表示基準が施行され、完全施行まであと2年というところまで迫っています。食品表示は品質管理部署の管轄と考えがちですが、それ以上に経営者が食品表示に対する責任意識を持つことが重要です。

 食品表示検定は表示に関わる実務者の方々はもちろん、経営者が学習することも大きな意味があります。表示を活用するのは消費者ですが、商品を取り扱う小売業などの事業者は消費者以上に知識が求められます。食品及び表示に対する知識を高める上で、食品検定制度は極めて有効な手段です。初級であればパート社員の方、中級以上であれば社員の方などといったようにレベルに合わせた区分けもしやすくなっています。また検定用テキストは受験以外でも参考書として役立ちます。お客様に正しい情報を伝えるための手段として非常に有効なものといえるでしょう。3月5日からは初級、中級試験の受付を開始しました。食品流通に関わる皆さま、食品の安全・安心を担保するためにも、受験されることをお勧めいたします。

 

●食品表示検定 初級・中級の受付を開始しました(4月17日〈火〉17:00まで)!

http://www.shokuhyoji.jp/html/guidance_bm.html

 

「一般社団法人 食品表示検定協会」とは

食品表示に関る人材の教育、食品表示の向上に関する情報収集・分析等、将来の消費者となる子供たちへの学習機会の提供を行うために設立された一般社団法人

■URL http://www.shokuhyoji.jp/

池戸重信

一般社団法人 食品表示検定協会 理事長

農林水産省食品流通局消費生活課長、独立行政法人農林水産消費技術センター理事長、公立大学法人宮城大学食産業学部教授、同大学副学長・食産業学部長等を経て、現在同大学名誉教授、日本農林規格(JAS)協会会長、クリエイティブ食品開発技術者協会理事長等。この間、消費者庁「食品表示一元化検討会」座長、内閣府消費者委員会食品表示部会委員等を務める

文章構成:石山 真紀(ライター)