小売業に影響する2019年以降の税制改革(2)
景気への影響が避けられない消費税増税

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Reuters 日経平均
写真は都内で9月撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)

 政府が、10%への引き上げを結果的に4年も先送りした最大の理由は、個人消費の低迷にある。実際に、政府が毎月発表する消費者態度指数(50ポイントが指数の善し悪しの判断目安)によると、2014年から16年にかけて、40~42ポイント(pt)の間で推移していた。以降、景気は緩やかに回復しているが、直近の2018年11月の消費者態度指数は42.9ptである。

 

 消費税率が8%に引き上げられた2014年4月、日本チェーンストア協会が発表した既存店ベースの売上高前年同月比は5.4%減となり、以降15年3月まで1年間、マイナス基調が続いた。同様に日本フランチャイズチェーン協会が発表したコンビニエンスストアは2.2%減で、同業態も1年間マイナスだった。最もマイナス幅が大きかったのは百貨店業界で、日本百貨店協会によると14年4月は、12.0%減と2ケタ以上のマイナスとなった。

 

 増税前の14年3月に駆け込み需要があって、いずれの業態も大きなプラスを記録するのだが、消費税増税は、景気に悪影響を及ぼすというイメージは消費者に定着しているのが実情だ。

分かりにくい軽減税率の対象

 

売り場イメージ

 政府も、予想される景気への影響を考慮し、家計を直撃する飲食料品と定期購読の新聞を対象に軽減税率を導入することを約束している。しかし、この軽減税率だが、実際にどこまでが対象となるのかが分かりにくい。例えば新聞も、週2回以上発行されていることが条件なことと、同じ新聞でもコンビニなどで購入した場合は、標準税率(10%)がかかることになっている。

 

 また、軽減税率の対象とならない飲食料品が存在することも、軽減税率の適用範囲を分かりにくくしている。軽減税率の対象とならないのが、酒類全般(みりんなども含む)と、いわゆる外食で食事する料理である。つまり、店舗で購入したお弁当を持ち帰って食べれば軽減税率が適用されるが、店内で飲食をした場合は外食と見なされて標準税率となる。また、ホテルの室内の冷蔵庫にある飲料は軽減税率の対象だが、ルームサービスは標準税率。果物狩りなどで収穫した果実を持ち帰れば軽減税率だが、その場で食べれば標準税率といった具合だ。

求められる店内オペレーションの見直し

マネー イメージ

 店内飲食をするのかテイクアウトするのかは、レジで意思確認することで判断するので、テイクアウト注文した後、気が変わって店内飲食したとしても、軽減税率が適用されることになっている。レジが大混雑しかねないため、国税庁は「店内で食べる方は申し出てください」と貼り紙などで周知すれば確認作業を省くことも認めている。

 

 しかし、イートインコーナーを設けたり、グローサラントを導入する店舗が増えている食品スーパーにとって、オペレーションの混乱が想定されている。コンビニでも、店内で食べるか一度外に出て駐車場で食べるかで、扱いが変わるという点で同様である。

 

 軽減税率の対象かどうかがはっきりしている商品については、小売店側が商品の分類や棚の配置を見直し、お客が一目で違いを把握できる売場をつくることで解決できるだろう。しかし導入後しばらくは、制度に慣れるまで判断に迷い、税率をめぐってトラブルとなるケースも出てくるだろう。

 

 あらゆることを想定し、準備を怠らないことが、消費税増税への対応として求められる。

 

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