流通マーケターのための食品表示の基礎知識
第3回 食品表示基準の基礎的な考え方

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食品表示基準に基づく区分とは?

 平成25年に制定された食品表示法をもとに、平成27年に食品表示基準のQ&Aやガイドラインが施行されました。

 食品基準は食品ごと及び事業者ごとの区分に基づき規定されています。このうち食品は「生鮮食品」「加工食品」「添加物」の3項目に分類されます。基本的には「JAS法」の定義に基づきますが、「生鮮食品」「加工食品」のいずれを問わず、食品衛生法の規定は適用されます。

 「添加物」は、食品安全基本法に基づく安全性の基準があり、認められているもののみが食品表示に記載されます。近年、安心・安全の観点から消費者が添加物に対し過剰に反応する傾向が高まっています。しかし統計を見ると、年間の食中毒患者のうち95%はウイルス性のもの、次にキノコやフグなどの中毒によるもので、化学物質が原因となる食中毒はほとんど発生していません。

  一方の事業者は、一般消費者に販売される形態の食品を扱う事業者(以下、「一般向け」)、業務用食品を扱う事業者(以下、「業務用」)、食品関連事業者以外の販売者(以下、「その他」)の3つに分類されます。

「一般向け」は食品スーパーをはじめとする食品を扱う小売業、「業務用」はメーカー向けや小売向けに食品を卸す、または加工する業者を指し、業務用スーパーのように一般消費者も購入される形態を含みません。平成19年に起きた「ミートホープ事件」まで、食品表示は消費者に向けた情報という前提でしたが、あの事件で表示の改ざんが行われていたことが発覚し、業務用に対しても表示が義務づけられました。

 「その他」とは、祭りの露店、道の駅での食品販売といった形態をいいます。とくに露店では専門知識を持たない一般の方が食品を扱う機会もあることから、十分な注意が必要です。

 以上のように現在の食品表示基準は、「生鮮食品」「加工食品」「添加物」、事業者の「一般向け」「業務用」「その他」を掛け合わせたマトリックで構成されています。

 「生鮮食品」には原産地表示、「加工食品」には期限表示が義務づけられていますが、商品によって「生鮮食品」「加工食品」の区別がわかりにくいものが多々見受けられます。たとえばキャベツ1玉と1/2にカットしたキャベツ、千切りキャベツは、いずれも「生鮮食品」ですが、キャベツの千切りとカットレタスを混ぜたものになると「加工食品」の扱いになります。

 また、牛ロースと牛カルビの盛り合わせは「生鮮食品」ですが、牛ロースと豚肉のロースの盛り合わせ、牛ロースと牛タン塩では「加工食品」という扱いになります。つまり、生鮮食品単品に加えて同種の生鮮食品を単に組み合わせたもの(同種混合)は「生鮮食品」、いくつかの異なった種類の生鮮食品(異種混合)または味付けなど加工されたものが混合されて、1つの商品として組み合わせたものは「加工食品」の扱いになります。

 食品表示法の制定により、食品に関する罰則は強化されています。第22条では「法人が消費者の生命または身体に対する危害の発生又は拡大の防止を図るため緊急の必要があると認めるときに行われる命令に対し違反行為をしたとき」の罰則が記されていますが、それまでの罰金は1億円以下でしたが、現在は3億円以下と定められているのです。

【図表】食品表示基準のマトリクス

【図表】食品表示基準のマトリクス

「一般社団法人 食品表示検定協会」とは

食品表示に関る人材の教育、食品表示の向上に関する情報収集・分析等、将来の消費者となる子供たちへの学習機会の提供を行うために設立された一般社団法人

■URL http://www.shokuhyoji.jp/

 

池戸重信

一般社団法人 食品表示検定協会 理事長

農林水産省食品流通局消費生活課長、独立行政法人農林水産消費技術センター理事長、公立大学法人宮城大学食産業学部教授、同大学副学長・食産業学部長等を経て、現在同大学名誉教授、日本農林規格(JAS)協会会長、クリエイティブ食品開発技術者協会理事長等。この間、消費者庁「食品表示一元化検討会」座長、内閣府消費者委員会食品表示部会委員等を務める。

 

文章構成:石山 真紀(ライター)

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