WAONの利用状況と将来への期待

2012/01/19 18:54
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イオン執行役グループIT責任者 梅本 和典氏

電子マネー事業成功のカギは競争優位性の確立

 

 イオングループでは、ICカード方式のWAONとサーバー方式のイオンギフトカードの2つの電子マネーを導入している。WAONは繰り返しチャージできる「私の」電子マネー、ギフトカードは購入時にチャージして贈る「あなたへ」の電子マネーというわけだ。


 WAONの現状は発行枚数が10月末で約620万枚、利用店舗数約2万6000店、リーダ/ライター端末は約5万8000台となっている。WAONには無記名の単体カードがあるが実はプロジェクト段階では記名か無記名かで議論があった。しかし主婦層の活用を進めるためにできるだけハードルを低くしたいということで最終的に無記名で行くことを決めた。さらにイオンクレジット一体型、モバイルWAON、口座からの自動引き落としが可能なイオンBANK WAON、JALとの提携でマイレージを加算できるJMB/WAON、三井住友WAON(仮称)、それから島根県のユビキタス特区の企業との提携により10月に発行開始したあいポケットWAON、さらに2009年春には吉野家との提携による吉野家WAON(仮称)も発行することになっている。WAONの成功要因がどこにあるのかという点で我々が注目しているKPIとして発行枚数に注目するのではなく月間利用件数として約1070万件、月間利用単価約1610円、稼働率20%という結果が出ている。電子マネーが効率が悪いと言われるのは小額決済の利用が多く利用単価が上がらないためで、コストという点からも利用単価の向上が課題といえる。当初2000円を想定しており、これに近づける施策が必要になる。私がWAONの事業担当になり当初順次展開だった計画を、一斉展開に変え利用頻度向上を図っている。また、認知率という点では、JALとの提携によりJALがキャンペーンを行ったことで急速に上昇することになった。これにより各種WAONカードの発行が拡大している。


 WAONの特徴は、グループにイオンクレジットがあるという強みとともに、このイオンクレジットに限らずにアクワイアラーについてはオープン政策を展開していることだ。


 電子マネーを展開するのはITのもたらす新しい事業価値を創造することだが、その視点として(1)決済手段の多様化に対応しチェックアウト生産性を向上させること、(2)地域通貨として利便性の向上と地域との共生、(3)顧客・カード戦略としてイオンクレジットカードの補完機能、(4)提携戦略としての電子マネーがつなぐ顧客創造と新しい協業の形-の4点を考えている。これによりWAONの競争優位性を構築していくことが狙いになる。つまり我々の考える電子マネーのビジョンは、決済手段の多様化に対応し利便性を高めることであり、そのために自社インフラと戦略目的を共有できる他プレイヤーにも解放しグループ内の通貨だけではなく地域通貨として確立を図り、さらに流通業界だけでなく産業界や公的機関との提携も目指していくことにある。


 その課題として、イオンの共通インフラに基づき端末開発や内部会計システムとの連動を図ることに加えて、共通インフラでない子会社への対応。イオンショッピングセンター内にある自販機やメダル発行機、駐車場生産機への対応。そしてスキームを確立してイオン以外の提携先端末やPOSレジ接続対応、システム構築、端末管理などがある。WAONを使えるところを拡大することが利便性を向上させて、利用率の向上につながると考えている。我々の強みは北海道から沖縄まで電子マネーを使える「場」を持っていること、グループに多様な業態を備えていること、そしてIT開発能力とテクノロジーに優れたパートナーの存在とシステム構築能力を持っていることなどがあげられる。電子マネー単体のビジネスでは利益につながりにくい。使われることでメリットが拡大するということが重要なことなのである。

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