アパレルのEC売上は「アフターコロナの時代でも増えない」理由

河合 拓
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「論理的思考」と「数字」に弱いのが、最大の弱点だといわれているアパレル。二言目には「天気」と「トレンド」のせいにして、自らの業績を説明している。私が提唱する4KPIを使えば、マーチャンダイジングの失策、そして、事業が持つ失策が白日の元にさらされるからである。今回は、アパレル業界が信じて疑わない「アフターコロナの時代は、ECの売上が増える」ということがいかに論理的におかしなことかを明らかにしたい。

Tanateph / istock
Tanateph / istock

「真夏に売れまくるダウンジャケット」の説明がつかない

 まず「天気」の話からはじめよう。確かに、冬が極寒となれば一般的にダウンジャケットが売れ、2019年のように暖冬となれば当初の見込みよりダウンジャケットは売れなくなるだろう。しかし、ある企業のダウンジャケットは炎天下の「8月の売上が8割を占めている」という事実を多くの人は知らない。

 これは「超絶に強いブランド」で、私も炎天下の下、販売解禁日に店にならび、自分用と娘のために二着ダウンジャケットを買ったものだ。アパレル各社は、こうした事実をひた隠しにする。また、そんなにものが良く、ブランド力を大事にしたいのであれば翌年売れば良いし、流行が変わるというなら、なぜ私が提唱する二次流通を作らないのか理解できない。結果、二次流通まがいの在庫破棄企業やC2Cと呼ばれる企業が上場し業績は絶好調。当のアパレルは「作りすぎ」で損益計算書は悪化し赤字を続けているという冗談のような状況が続いている。

 また、天気によって売上が落ちるなら仕入れを絞れば良い。私は、「クイックレスポンス(QR)が日本を破壊している」という立場をとるが、これは、日本のアパレルが正しいQRをやっていないという意味で、だからと言ってムダな会議や資料作りは今すぐ辞めるべきだ。「遅ければよい」というものでもないのだ。だから、別にユニクロがクイック生産をはじめると聞いても驚かないし、私の理論がおかしいともみじんも思わない。

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