流通再編の衝動その8 孤高デイリーヤマザキに再編の風は吹くか

森田俊一(流通ジャーナリスト)
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“全方位”の山崎製パンが抱える憂鬱

 デイリーヤマザキはかつては同名の法人が運営していたが、現在は山崎製パンの事業の一つとなっている。山崎製パンにしてみれば、大手コンビニ3社は大口の取引先。仮に3社のどこかに売却したり、提携関係を結んだりするようなことがあれば、ほかの大手との取引関係がギクシャクしかねない。

 しかし、デイリーヤマザキ事業は赤字が続いている。19年12月期の上期(1~6月)の営業損益は10億円で、18年12月期まで7期連続の営業赤字となっている。同社でもテコ入れに乗り出しているが、浮上は難航している。

 山崎製パンとしては抜本的なテコ入れ策として、本来なら大手との提携や統合を検討したいところとみられる。しかし、どこか特定のチェーンと親密になって、大口の取引先を失ったり、溝をつくったりしたくないのが正直なところかもしれない。

 そうでなくても山崎製パンは90年代前半に、セブン-イレブン・ジャパン(東京都)が始めた焼き立てパンの取り扱い、開発をめぐって意見が対立。取引を縮小し、経営への痛手として尾を引いたという経緯もある。山崎製パンの選択肢としては、赤字解消まで辛抱強く経営を続けるか、あるいは少しずつ縮小の道を辿るか、それとも取引に影響がでることに目を瞑って、どこかの傘下に入るかしかないとみられるが、その決断は簡単ではないだろう。その一方で、コンビニにとって必要不可欠なパン、菓子(留型商品含む)等を自社グループである程度賄えるという強みがあるからこそ、この規模でここまで単独でやってこられたと言うこともできよう。

 そう考えると、やはりデイリーヤマザキに再編の風が吹くのは、もう少し先のことと考えるのが自然だろう。(次回へ続く)

 

 

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