なぜ未熟な若手ビジネスマンは、取引先に横暴な態度をとるのか?

神南文弥(じんなん ぶんや)
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仕事を任せることは育成ではない!

 一言で言えば、部下の育成がまったくできていない、悪しき事例と言えよう。私は、次のような教訓を導いた。

こうすればよかった①
まず、編集長を変えよう

 従業員育成ができない職場では、上層部に必ず致命的な問題がある。今回のケースで象徴的なのは、宮本が編集長になったのが20年前であることだ。この間、配置転換がない。代わりに編集長になる人はいたようだが、いずれも退職。結局、倍率1倍もしくはそれ以下で現職に就き、今に至る。これでは、宮本はろくに仕事をしないだろう。ライバルはいないし、自分を脅かすものもいないからだ。

 まず取り組むべきは、編集長を変えることだ。さすがに20年という長期政権は好ましくない。副編集長の小俣がいるのだから、昇格をさせよう。うまくいかない場合は更迭し、外部から新たに招いてもいいのではないか。

  人材育成は失敗の元をたださないと、間違いなく破たんする。権限を持つ人しか、通常は育成できないからだ。その人を変えない限り、歴史は繰り返される。宮本を変えた後、今度は松倉を変えたい。4年間同じ仕事を(教育もないまま)担当させることも、やはりムリがあるからだ。

  年1回の定期の配置転換は社員数60人の規模では難しいだろうが、可能な限り、取り組みたいところだ。この規模ならば、数年に1度、5∼6人を他部署へ異動させるだけでも効果はある。たとえば、社員たちに「この会社は人を育てるのだ」といったメッセージを送ることができる。配置転換は、実は大きな波及効果があることを忘れないようにしたい。

こうすればよかった②
仕事を任せることは育成ではない

 今回の事例は一見すると、27歳の編集者を育成しているように見えなくもないが、実際は誰も教えていない。「仕事をまかせる」ことは、「育成」ではない。そこに「教える」といった行為が必要になる。教えることで、部下の考え方や意識の違いに気づくことができる。部下の良い部分を伸ばしながらも、至らない点を指摘することで、部下は新たな尺度で物事を捉えなおし、意識化し、次の行動へと移すことができる。ここには学びがあり、進化があるのだ。このPDCAサイクルがあってこそ、部下も伸びるし、そこから上司だって学ぶことがあるのだ。

 ところが、今回の事例からはその好循環は生まれない。丸投げして、終わりだから、どちらも学ばないし、進化しないのだ。

 部下から反感を買おうとも、摩擦が生じようとも、教えるべきだ。とにかく、くどいほどに教えよう。それは、パワハラやいじめではない。人を育てるためは、こつこつと粘り強く取り組むしかない。

 

神南文弥 (じんなん ぶんや) 
1970年、神奈川県川崎市生まれ。都内の信用金庫で20年近く勤務。支店の副支店長や本部の課長などを歴任。会社員としての将来に見切りをつけ、退職後、都内の税理士事務所に職員として勤務。現在、税理士になるべく猛勉強中。信用金庫在籍中に知り得た様々な会社の人事・労務の問題点を整理し、書籍などにすることを希望している。

当連載の過去記事はこちら

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