ヨークベニマル大高善興会長が一刀両断!「増税後の食品スーパー」の不可解な大問題とは!?

ダイヤモンド・チェーンストア編集部
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増税後、価格競争とポイント還元でデフレへ

――大手小売業は危機感を露わにし、各社減益を見込んで、戦う準備をしています。
大高 経産省の審議会や有力国会議員が数多く参加する流通懇話会にも参加し、「自由競争の中で、国が5%の割引制度を作り一部の企業を優遇するなんて馬鹿げています」とお話ししました。

地方に行ったらスーパーマーケットは中小企業が強いんです。手企業で本拠地を除いて地方でナンバーワンをとっている企業はどこもないんです。繁盛店は皆中小のローカルスーパーマーケットなのに、そこに5%のポイント還元をつけて、「手企業は強いからいいでしょう」と言われるが、そんなことはないですよ。5%売価が違ったらお客はどっちに行くと思いますか?

 そんなことを散々申し上げたのですが、「もう決まっておりますから」と言うのみでした。

 消費喚起と政府は言いますが、消費喚起になどなりません。むしろ、価格競争とポイント還元により、デフレが起こります。

――軽減税率への対応でも、各社苦慮しています。
大高 非常におかしな制度です。総菜の持ち帰りと店内飲食では、消費税率が前者は8%、後者は10%となるわけですが、スーパーマーケットの駐車場に止めた車の中で食べても「敷地内だから10%が適用される」と言うのです。じゃあどうやって取り締まるのかと担当者に聞くと、「良心に訴える。レジでは『店で食べる人はお申し出ください』とだけ掲示して頂ければ良いです」と言うわけです。

 ですが、正直に10%を支払っている人からしたら、8%しか払わないのに、店内で食べている人がいたとしたら、不公平だと思うでしょう。また、子供と一緒に店内で食べていてその人が8%しか払っていなかったとしましょう。子供に「お父さん、それはおかしいよ」とたしなめられてしまうかもしれません。そんな状況をつくること自体、とてもおかしなことだと思います。

 いまヨークベニマルとしての対応を検討中で、一生懸命努力して行きます

――10月以降の懸念事項としては、消費の落ち込みよりも、ポイント競争の激化ということですね。

大高 ええ。食品は消費税率は上がりませんから、5%のポイント還元が大きいですね。5%売価が違えば、それを上回る価値あるオリジナル商品がない限り、安い方で買いますし、そんな特殊な商品はそうそうありません。

 一方で、優遇制度が終わった来年6月以降、悲劇が起こるでしょう。(キャッシュレス比率が高まるということはその分)経費も余計にかかってくるわけで、利益が吹き飛んでしまいます。

――お客さまの消費行動で何か気になる変化はありますか?
大高 6〜7月の状況を見ていますと、天候要因だけでなく、お客さまの購買行動がすごく変わってきていると実感しています。この10年で食品の可処分所得は増えていません。むしろ減っているなかで、店数が増えていて、異業種を交えたサバイバルの様相を呈しています。ライバルもどちらも売上が増えているということはなく、どちらかが増えれば、どちらかは減っています。

 そうしたなか、加工食品で差別化することは、差別化要因が価格しかないため難しい。だから、スーパーマーケットは、生鮮食品と総菜で差をつけるしかありません。

 幸いなことに、スーパーマーケットは、そう簡単に技術力が付くものではありません。それに、いくらインターネット販売が隆盛しても、歩いて10分以内にあったかいご飯、できたての総菜、切りたての刺身を売っている店があれば、そこに行きます。それはアマゾンにもできないこと。だから、社員には心配するな、やるべきことをやれば大丈夫だと言っています。

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