プチ・マドカとマツモトキヨシが仕掛ける郊外型ディスカウントドラッグ

ダイヤモンド・ドラッグストア編集部
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 マツモトキヨシホールディングス(千葉県千葉市、松本清雄社長)がディスカウント型新業態の実験に取り組んでいる。

 実験店舗となっているのは野田みずき店(千葉県野田市)と小手指店(埼玉県所沢市)で、郊外でのドラッグストア(DgS)タイプと都心・駅前でのファーマシータイプの2店だ。実験の目的は、既存店の不振店対策もあるのだが、より重きを置かれるのが中長期的な販売管理費コントロールによる収益構造転換の試みだ。

 今回の実験の注目すべき点は、とくにマツモトキヨシが苦手といわれてきた郊外型での構造転換で、店舗の品揃えと粗利益、運営コストを見直すことで、これまでの売上規模を維持しながら営業利益3%程度を確保することにある。同社では基幹事業会社マツモトキヨシの店舗数のおよそ半数がDgSタイプであり、近年の地方企業グループ化によって郊外型店舗は増加傾向にある。グループ全体の収益に大きな影響を与える、この課題を乗り越えるための実験の場、それがプチ・マドカだ。

 野田みずき店は、濃いピンク一色のファサードをまとい、マツモトキヨシ既存店のイメージはほとんどない。売場面積は200坪で、同社一世代前のDgSタイプのサイズだ。

 売場は出入口の外にティッシュ・トイレットペーパーのほか、売り切りの限定商品を陳列。店内は主通路に沿ってスナック菓子の山積みで、“ディスカウント”イメージを訴求する。商品SKUは、全体として2割程度はカットされており、とくに化粧品関連、雑貨関連でそれがうかがえる。一方、食品はSKUをわずかに増やし、フェース数は大幅に拡大させている。ただ、化粧品や雑貨での総アイテム数は削減しているが、新興住宅街で若い家族の利用が多いことを想定し、来店目的性の高い商品は逆に増やしている。学校の上履きなどは幼児用から生徒用までをきちんと品揃えし、近隣の駅前にある同社既存店よりもアイテム数は多い。

 価格は、競合店に比べ約2割から商品によっては3割以上低く設定されているものもあり、カテゴリーもOTCから雑貨、食品まで幅広い。基本政策としてEDLP(エブリデー・ロープライス)を掲げており、チラシはオープン時に配布したのみ、ポイント利用はできない。スタッフは常時2名から3名で運営。商品調達が既存店と同じルートであることから、粗利益を下げる以上に経費を下げ、売上高を転換前の旧店舗時代と同じ年商3億円レベルで営業利益3%を計上する算段だ。

 オープンから4カ月ほどが経過したが、平日の昼間に自転車、徒歩、クルマ、それぞれで来店するお客が途切れることがなく、夕方になると子供連れの来店が増える状況を見る限りでは、徐々にこの店の使い方が浸透してきているように見える。

 現時点でプチ・マドカは十分利益の出せる設計であり、利益を出せる運営環境にある。ただ、今後マツモトキヨシおよびグループの郊外店舗全体の立て直しをはかる基礎とするには、さらに売場面積300坪クラスの新店や、ドミナントエリア内での展開など、面の戦術を意識する必要もある。また、プチ・マドカは●ドラッグストアとしてのコンセプト、●ビューティ部門の展開、●店舗オペレーション、●販売促進などで、これまでのマツモトキヨシのDgSコンセプトとは一線を画している。

 マツモトキヨシが手掛ける名実ともに新業態として、社内外が理解できるよう事業展開をプランニングする必要があり、サンドラッググループのダイレックスのような一種の独立性も求められる。今後の動向に注目したい。

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