第164回 ものづくりを原点に「オンリーワン」の価値を積み重ね 市場に挑み続ける! サッポロビール 代表取締役社長 髙島 英也

「サッポロ生ビール黒ラベル」と「ヱビスビール」という、2つのロングセラーブランドを擁するサッポロビール(東京都)。ビール市場が縮小傾向にあるといわれるなかで、「サッポロ生ビール黒ラベル」の販売は、3年連続で前年実績を上回るなど好調に推移している。「オンリーワンを積み重ね、No.1へ」というビジョンのもと、同社はどのような成長戦略を描いているのか、髙島英也社長に聞いた。

聞き手=下田健司(本誌) 構成=堂森香代

若年層の支持を獲得し「黒ラベル」が好調

──メーンブランドである「サッポロ生ビール黒ラベル」が好調です。要因をどのように見ていますか。

 

髙島 第一に、確かな味わいがお客さまに選ばれている理由だと自負しています。私は製造部門に30年在籍していましたが、ビールの原料から自分たちで育種し、品質の向上を一途に追求してきました。何杯飲んでも飽きのこない本当においしいビールをめざし、品質を磨き続けてきたことが、ここに来て実を結んだといえるのではないでしょうか。

 

 もう1つは、コミュニケーションを通して商品の世界観を確立できたことです。2010年に俳優の妻夫木聡さんを起用したテレビCM「大人エレベーター」シリーズの放送を開始しました。妻夫木さんと幅広い分野で活躍されている方々が、「サッポロ生ビール黒ラベル」を味わいながら“大人”をテーマに語り合うという内容で、このCMを通して“大人の生ビール”という世界観が着実にお客さまに浸透してきたと思います。

 

──飲食店のカバー率が高く、外食市場でも支持されているブランドです。

 

髙島 業務用の樽生ビールは従来「サッポロ生ビール」という商品名を使用していましたが、15年に「サッポロ生ビール黒ラベル」へ呼称を統一しました。同時に、外食での飲用経験を家庭での購買につなげるため、ビールジョッキやグラスにも黒丸に金星のロゴマークを入れています。お客さまが手に取ったときに「黒ラベル」の缶ビールを想起していただくことがねらいです。このような地道な活動の結果、現在20代、30代の若年層の方に「黒ラベル」を手にとるお客さまが増えているというのは非常にうれしいことですね。

 

──もう1つの主力ブランド「ヱビス」はいかがですか。

 

髙島 ヱビスビールは、1890年に誕生した商品です。ドイツのビール純粋令に則り、副原料を一切使わず、麦芽とホップのみで通常よりも長期熟成させて仕上げています。1900年のパリ万博で金賞を受賞するなど、100年以上も前から海外でもその品質を高く評価されてきました。また、現在の「東京都渋谷区恵比寿」という地名も、ヱビスビールの工場がこの地にあったことに由来しています。このように長い歴史のあるブランドですが、「進化しつつも、本質は変えない」という信念を徹底的に貫き、プライドをもって品質を磨き続けてきました。

 

 「ヱビス」は商売繁盛の神である恵比寿様をイメージキャラクターに据えた「めでたい、縁起がいい」というブランドイメージから、ハレの日に飲むビールとして親しまれている点も特徴です。年末年始に最も需要が高く、年間売上の2割弱が12月に出荷されています。

 

 現在は、これに加え、お盆や父の日、記念日、自分にとってのプチご褒美として、より広く手にとっていただけるような機会を増やすことに注力しています。

 

たかしまひでや
たかしま・ひでや●1959年11月20日生まれ。福島県出身。82年東北大学農学部卒業、サッポロビール入社。97年大阪工場製造部長。2001年ビール製造本部 製造部担当部長。07年仙台工場長。09年取締役兼執行役員 経営戦略本部長。12年常務執行役員 北海道本部長。15年ポッカサッポロフード&ビバレッジ取締役専務執行役員。17年1月より現職

 

「ビール復権宣言」を掲げ基幹ブランドを中心に強化

──2017年を振り返ってみて、ビール類の販売動向はいかがでしたか。

 

髙島 17年は「ビール復権宣言」を掲げ、ビールブランドの強化に取り組んできました。これは16年の事業方針である「ビール強化元年」の姿勢を継承したものです。この取り組みの結果、ビールカテゴリーは16年に引き続き対前年比アップし、ほぼ意図したとおりの成果が得られたといえるでしょう。

 

 具体的には、「サッポロ生ビール黒ラベル」は、2017年累計で対前年比102.3%、とくに缶ビールが好調で同113.2%と伸長しました。「ヱビス」ブランドは、同98.9%と堅調です。

 

 3月には、「ヱビス」ブランドで初めての上面酵母を使用したホワイトビール「ヱビス 華みやび」を発売し、通常のヱビスビールユーザーとは異なる層のお客さまを取り込むことに成功しました。今年も市場定着に向けた工夫を継続していきます。

 

 一方で、新ジャンル「麦とホップ」や発泡酒「極ZERO」が秋口まで伸び悩みました。RTDへの流出や激しい競争下で新たな提案も含め、突き抜けたマーケティングができなかったことが要因です。これをふまえたうえで、当社のビール類全体の販売数量は対前年比98.1%と市場の総需要を上回る結果となりました。

 

──ブランド訴求として、17年はどのように取り組みましたか。

 

髙島 「サッポロ生ビール黒ラベル」では、おいしい「黒ラベル」を消費者の方々に実体験していただく場として「THE PERFECT BEER GARDEN(ザ・パーフェクトビヤガーデン)」を東京・大阪の2都市で展開しました。

 

 さらに、全国8都市で「サッポロ生ビール黒ラベル パーフェクトデイズ」を開催し、「サッポロ生ビール黒ラベル」の提供品質を極限まで追求した「パーフェクト黒ラベル」をお楽しみいただける機会を創出しました。会場でテレビCMを流すなど通常のプロモーションと連動しながらリアルなブランド体験を訴求することで、「黒ラベルっておいしいよね」と製品の魅力に気付いていただき、新たなお客さまを獲得できたと実感しています。

 

ビール

 

“第2の柱”となるワイン、スピリッツにも投資を継続

──ワイン事業にも注力されています。

 

髙島 17年、ワインは対前年比プラスとなりました。国産ブドウ100%の日本ワイン「グランポレール」シリーズの取り組みを強化しました。また、海外ワインでは、シャンパーニュ「テタンジェ」や「ペンフォールズ」、「ベリンジャー」など中高級価格帯のファインワインを強化しており、着実に売上を拡大しています。

 

 もちろんデイリーワインにも注力し、手に取りやすい価格だけではなく価値をもった商品を提案しています。たとえば、9月に発売した「ポリフェノールでおいしさアップの赤ワイン〈特濃プレミアム〉」はポリフェノール量を通常より多く含み、飲みごたえのある濃厚な味わいが特徴の商品です。健康志向を受けて、発売以来好調に推移しています。

 

 このように、ほかにはない唯一の価値をもった商品を提供し続けることにより、ワイン事業を当社の“第2の柱”として育てていきたいと考えています。

 

──そのほかの商品についてはいかがですか。

 

髙島 RTDは17年も市場が大きく成長したカテゴリーです。そのなかでも、当社は市場の伸び率を超えて140%の成長を達成することができました。

 

 好調を牽引しているのは、梅干し感を追求した“しょっぱい旨さ”が魅力の「男梅サワー」や健康志向の女性に人気の「キレートレモンサワー」といった、確実にファンをつかんでいる商品ですね。また、西日本限定で発売した「愛のスコールホワイトサワー」は、発売以来大きな反響があり、年間販売目標の13万6000ケースを約3カ月で達成しました。さらに、多くのお客さまからのご要望を受けて9月に全国発売し、今後の展開の足がかりをつくることができたと考えています。

 

 和酒では、甲乙混和芋焼酎ナンバーワンブランド(注1)「こくいも」が存在感のある商品に成長してきました。“梅”カテゴリーでも「梅のチカラ」「男梅の酒」「ウメカク」など従来の梅酒の概念にとらわれないラインアップを増やして順調に拡大しています。

 

 ウイスキーについては、バカルディ ジャパン社と業務提携し、世界販売金額ナンバーワンラム(注2) 「バカルディ」や、同社が有するスピリッツをはじめとした各ブランドの販売を受託しています。

 

 そのなかで飛躍的に伸びているのが、スコッチウイスキーの「デュワーズ」ブランドです。樽の香りが心地よく、とくに「デュワーズホワイト・ラベル」は味わいの評価が高くなっています。スコッチウイスキーを使ったハイボールのなかで最もよく合うと日本のプロバーテンダーの方々からも圧倒的な支持を得ています。

 

18年も引き続きビールを強化、さらなる需要拡大をめざす

──18年はどのような施策に力を入れますか。

 

髙島 18年は、「続・ビール強化」を事業方針に掲げ、総需要が落ち込むなかにあっても3年連続で売上増を達成したビールブランドの強化を継続し、市場での存在感を高めていきたいと考えています。

 

 「サッポロ生ビール黒ラベル」は、今年も「完璧な生ビールを。」というテーマのもと、良質な世界観と「完璧な生ビール」を体験していただく機会を拡充し、4年連続の売上増をめざします。

 

 「ヱビス」ブランドは、「日常接点の創出」をテーマに、日常生活の中にある“めでたさ”にフォーカスして消費を推進し、飲用機会の拡大を図ります。

 

──具体的な施策をお聞かせください。

 

髙島 「サッポロ生ビール黒ラベル」は、ブランド接点として好評を博している「THE PERFECT BEER GARDEN」や「THE PERFECT DAYS」、「THE PERFECT BAR」の開催に加え、今年は新たに「パーフェクト黒ラベル」を提供するキッチンカー「THE PERFECT STAR WAGGON(ザ・パーフェクト・スター・ワゴン)」を展開する予定です。

 

 「ヱビス」ブランドは、「ミシュランガイド東京、京都・大阪 2018」を主催する日本ミシュランタイヤ社とのパートナーシップ契約締結や、日本のどこかで数日だけオープンするプレミアムな野外レストラン「DINING OUT」への協賛など、外部パートナーとの取り組みによりブランド価値のいっそうの向上を図ります。また、2月20日には「ヱビス 華みやび」をリニューアル発売し、新たなビールユーザーへのアプローチを強化します。

 

 なお、新ジャンルでは、糖質ゼロ、プリン体ゼロ、人工甘味料ゼロに加え、低カロリーナンバーワン(注3)を実現した「サッポロ 極ZERO 爽快ゼロ」を新発売しました。さらに3月には、発売10年目を迎える「サッポロ麦とホップ」をリニューアルします。

 

──RTDについてはどういった戦略をお考えですか。

 

髙島 RTDにおいては、「驚きをカタチに」を基本方針として、オンリーワンの価値がある商品づくりをめざします。4月には、女性にストロング系の商品が受け入れられているという市場トレンドを背景に「りらくす」というブランドを新たに投入します。18年のRTD開発の方針としては、「コラボ戦略」「『梅』と『レモン』」のほか、「新機軸商品」を柱としており、「りらくす」はそれを具現化した商品です。

 

──小売業の方に最も伝えたいことは何ですか。

 

髙島 当社は、明治時代に北海道開拓使によって設立された「開拓使麦酒醸造所」をルーツに持つ会社です。創業以来140年以上、おいしいビールをつくるため原料から徹底的にこだわり、ビール大麦とホップの育種・栽培に挑戦するなどつねに研究と開発を繰り返してきました。一過性のブームに流されず、本当においしいビールを追求し続けるクラフトマンシップが社内に連綿と受け継がれています。

 

 また、農業をビールづくりの原点ととらえ、生産者の方々のものづくりへの姿勢や努力を付加価値としてお客さまに伝えていくことが私たちの使命だと考えています。生産者のみなさまに安定的に良い原料をつくり続けていただくためにも、ほかにはない「オンリーワン」の価値を持った商品を提案し、それを積み重ねていくことで市場での存在感を高めていくことが重要です。

 

 今後も多くのお客さまに選ばれ、売上に貢献することで、小売業さまにも価値を認めていただけるような存在となることをめざしていきます。

 

注1:インテージSRI調べ。甲乙混和芋焼酎市場2016年3月~2017年10月累計販売金額全国SM/CVS/酒DSの合計

注2:2016年IWSR調べ

注3:国内大手メーカーより現在発売されている糖質ゼロのビール類において(サッポロビール調べ2017年10月現在)