第166回 「高品質・EDLP」を追求する  東京都23区内への出店をさらに加速! オーケー代表取締役社長 二宮 涼太郎

首都圏でディスカウント型食品スーパー(SM)を展開するオーケー(神奈川県/二宮涼太郎社長)。「高品質・Everyday Low Price(エブリデイ・ロープライス:以下、EDLP)」を強みに、東京都23区内への出店を強化している。今後の成長戦略をどう描いているのか、二宮社長に聞いた。
聞き手=阿部幸治 構成=大宮弓絵(ともに本誌)

既存店売上高1.6%増で推移

──2018年3月期も終盤を迎えています。今期をどのように振り返りますか。

にのみやりょうたろう
にのみや・りょうたろう●1974年生まれ。神奈川県出身。97年東京大学文学部卒業、三菱商事入社。2008年11月Mitsubishi Cement Corporation/ MCC Development出向(米国)。13年4月三菱商事リスクマネジメント部。15年6月オーケーへ出向、経営企画室長。16年1月執行役員 30%成長戦略室長兼店舗開発本部長。16年5月三菱商事退社。16年6月から現職

二宮 18年3月期上期(17年4~9月)は、売上高が対前年同期比7.4%増、既存店売上高が同1.6%増、既存店客数伸長率が1.8%増で推移しました。しかし上期は想定よりも業績が伸びない印象でした。下期のほうがこれまでの取り組みの成果が徐々に業績に反映されてきたと感じています。とくに売上に貢献しているのがグロサリーです。あらゆるカテゴリーで品揃えの見直しを進めた効果が現れています。

 

──18年3月期は新しい取り組みとして、買物代行サービス「お友達宅配」を開始しました。「オーケークラブ」の会員同士で買物代行の依頼、受託を行うというユニークな仕組みが注目を集めました。

 

二宮 本サービスは17年6月から、本社2階の「みなとみらい店」(神奈川県横浜市)をはじめ9店舗で開始しました。専用アプリを通じて、依頼者は買物に行く会員についでに自身の買物を頼むことができます。そして受託者は依頼者の自宅まで商品を届け、レシートと引き換えに購入金額とその10%を手数料(購入金額が税込3000円未満の場合は一律同300円)として受け取るという仕組みです。

 

 同サービスは6年ほど前から、当時社長を務めていた現会長の飯田(勧)が構想していたものです。拡大を続ける宅配ニーズに宅配業界の現場が追いつかないという社会問題が表面化するなか、消費者の新しい選択肢の1つになればと開始しました。また、高齢者の買物をサポートし、希薄になりつつある地域コミュニティを深める一助になればと考えています。現在サービスの導入店舗は47店まで拡大し、アプリの登録者や利用者も徐々に広がっています。

 

本鮪でマイナス50℃のコールドチェーンを実現

──「高品質・EDLP」を追求する商品開発も進めています。

マグロ
17年12月から販売する「-50℃超低温流通本鮪」。一貫してマイナス50℃の状態で商品を運ぶコールドチェーンを構築し、高い鮮度と低価格を実現している

二宮 オーケーが掲げる「高品質・EDLP」は、単に価格を下げるのではなく、価値と価格のバランスによる割安感を追求しています。たとえば百貨店で扱っている高品質な商品を当社ではより低価格で購入できるといった価値を提供します。

 17年12月には新商品として「-50℃超低温流通本鮪」の赤身と中トロを発売しました。同商品は、漁船で鮮魚を冷凍してから、配送、店頭での保管まで、一貫してマイナス50℃の状態で商品を保存するコールドチェーンを構築し、鮮度が高く専門店のような味の商品を、低価格で提供することを実現しました。店頭での解凍作業にもこだわり、専門家から意見をもらい、お客さまの食卓に上る際に最もおいしい状態になる最良のタイミングと解凍方法で商品を提供しています。すでに年末年始には多くのお客さまの支持を得ることができました。現在取り扱っているのは24店のみですが、大型店を中心に順次店舗を広げる計画です。

 

 プライベートブランド(PB)商品の開発も進めています。代表例の1つが、18年1月から販売を開始したスコッチウイスキー「グレンファークラス」のオーケー限定ラベル(700㎖・税抜2780円)です。12年熟成のグレンファークラスと言えば、一流ホテルで提供されるような高品質商品です。オーケー限定商品は、熟成期間が8年と少し短いですが割安感を感じてもらえる価格で提供しています。こうした「高品質・EDLP」を訴求できる商品を各カテゴリーでつくっていきたいと考えています。

──以前から冷凍食品の販売にも力を入れています。

ワイン
18年1月から販売を開始したスコッチウイスキー「グレンファークラス」のオーケー限定ラベル

二宮 冷凍食品は簡便性や保全性が高く、お客さまにとっては時短ニーズに対応し、まとめて買い置きもできる便利な商品です。われわれにとっては比較的ロスを抑えることができるため、そのぶん低価格を実現できます。今後、売場を拡大しさらに販売を強化していく方針です。

 

 品揃えを強化しているのが、冷凍の総菜です。今年1月には宅配食サービス「わんまいる」を運営するファミリーネットワークシステムズ(大阪府/堀田茂社長)と業務提携し、冷凍総菜セット「健幸ディナー」(5食入・税抜3580円)の取り扱いを40店舗でスタートしました。味がよいことはもちろん、調理過程において合成保存料や合成着色料を使用せず、管理栄養士の監修により栄養バランスも考慮された商品です。なかなか買物に行けない高齢者や、有職女性、出産前後の女性などにとって利便性の高い商品だと考えています。ファミリーネットワークシステムズさんの冷凍食品開発のノウハウを学ばせてもらいながら冷凍総菜のカテゴリーを育成していきます。

ワンマイル

 

年間約10店を新規出店、小型店モデルを開発

──近年、出店スピードを加速しています。

 

二宮 18年3月期の新規出店数は計11店となりました。3月13日には11店目となる「田園調布店」(東京都大田区)を開店する予定です。

 

 当社はドミナントを深耕し物流効率化を図るため、国道16号線内側への出店を基本戦略としてきました。そして数年前から東京都23区内への出店を強化する方針を掲げています。今年1月に東京都台東区に開店した「橋場店」は、売場面積836.7坪と大型で首都圏における旗艦店と位置づけています。

 

 都心部での店舗数拡大に当た

わんまいる

今年1月から販売している宅配食サービス「わんまいる」の冷凍総菜セット「健幸ディナー」。そのほかロイヤル(福岡県/倉田誠司社長)の冷凍総菜と、日清医療食品(東京都/菅井正一社長)の冷凍弁当の取り扱いも開始し、冷凍総菜の品揃えを拡大している

り、開発を進めているのが小型店です。17年2月に開店した「湘南台店」(神奈川県藤沢市)を皮切りに、「平野店」(東京都江東区)、「新杉田店」(横浜区横浜市)、「曳舟店」(東京都墨田区)、「お台場店」(東京都港区)と、ここ1年で売場面積110~150坪ほどの小型店を計5店出しました。どの店舗も開店後の売上は順調に伸びており、新たな店舗モデルを構築できたと考えています。

 

 オーケーの店舗は、売場面積100坪ほどの小型店から1000坪超の大型店まであり、大きさはさまざまです。チェーンストアの経営では徹底的に標準化を図る戦略もありますが、当社は柔軟に対応していきます。

 

 今後の出店戦略では小型店も選択肢の1つに入れており、19年3月期も1店開店を計画しています。

 

──今後の出店戦略を教えてください。

二宮 引き続き、人口密度の高い東京都23区内への出店を強化します。出店余地は十分にあるでしょう。

 

 19年3月期も前期同様に10店ほどの新規出店を予定しています。そこに居抜き出店が数店加わるほか、冷ケースやゴンドラを入れ替える改装も24店ほど計画中です。

 

 オーケーは店舗不動産を所有することが信頼の裏付けや長期的なコスト競争力にもつながるという方針のもと、可能な限り自社で所有するかたちでの出店を続けてきました。

 

 一方、最近では他社のSMが退店した物件に出店し、好業績を出すことができている成功事例も生まれているため、当社の条件に見合う物件があれば居抜き出店も積極的に進めたいと考えています。

湘南台店
都心部での店舗数拡大に当たり、小型店開発を進めている。写真は「湘南台店」(神奈川県藤沢市)

──出店を強化する東京都23区内はSMの激戦区です。どのように他社と差別化を図っていきますか。

 

二宮 「高品質・EDLP」を徹底することです。当社は「熱烈なオーケーファン」の輪を広げたいと考えています。すでに多くのお客さまがファンになってくださっているのは「高品質・EDLP」に期待と信頼を寄せていただいているからでしょう。

 

 とくに支持を得ているのはグロサリーです。当社のグロサリーの売上高構成比は生鮮食品(総菜含む)よりも高い割合を占めています。グロサリーは他社と比較して低価格であることが伝わりやすく、割安感を訴求できる商品です。

 

 私が初めてオーケーの店舗を訪れたとき、その安さに驚き多くの商品を購入したことを覚えています。割安感は高揚感を与えることにつながります。「高品質・EDLP」を追求することで買物の楽しさをお客さまに提供していきたいと考えています。

神奈川県寒川町で物流センターを稼働、ドライ商品の配送を効率化

──19年3月期は物流センターの稼働を予定しています。

 

二宮 神奈川県寒川町で取得した約3万坪の土地を利用し、19年2月、大型物流センターの稼働を予定しています。

 

 店舗数が遂に100店を超えるなか、物流の効率化を進める必要があると考え、物流センターの開設に至りました。同センターの開設に当たって社内に「物流部」を立ち上げ、物流網の整備に多くの人員を投入しています。

 

 同センターではおもにドライ商品の店舗への配送を行います。ドライ商品はこれまで取引先の卸売業者らが各店舗へ配送していました。今後はメーカー各社から同センターに納品し、そこから同センターで仕分けした後、各店舗に配送します。そうすることで各店舗へ計画的に商品を納品し店舗作業を軽減するほか、店舗で抱える在庫量を減らし、そのぶん売場を広く確保できるようにします。

 

 同センターだけですべての店舗をカバーすることはできないので、もう1カ所、物流センターを稼働する準備を進めています。2つのドライ商品の拠点に加え、将来的には、ドライ商品以外のチルドや冷凍商品の配送網の整備も進めます。物流の効率化を図ることでコストを削減し、さらなる「高品質・EDLP」の実現をめざします。

 

──新規出店や物流網の整備には人材の確保が重要です。

 

二宮 新規出店を進めるとともに本部機能も強化する計画で、正社員とパート・アルバイトともに人材の確保が必要不可欠です。最近は同業他社からオーケーに来てもらう中途社員の採用に力を入れています。「正直な情報をお客さまにお伝えする」という会長の飯田の方針のもと、従業員の採用においてもホームページなどを通じて会社の情報を可能な限り開示しています。また、新卒社員の採用ではオーケーの活気ある売場や店長の仕事を実際に見てもらえるインターンシップも開催しています。そうすることで、ともに働きたいと思ってもらえる仲間を増やしていきたいと考えています。

 

──M&A(合併・買収)についてはどのように考えていますか。

 

二宮 人口が減少するなかSMをはじめ食品小売業各社は積極出店を続けています。店舗間競争がますます激しくなり、経営を続けることが難しくなる企業が出てくるでしょう。国道16号線内で店舗網を拡大するなか、当社と手を組みたいと考えてくださる企業が出てくればM&Aも積極的に考えていきます。

 

──社長に就任して1年半が過ぎました。

 

二宮 社長就任後、会長の飯田からさまざまなアドバイスをもらいながら二人三脚で経営に取り組んできました。企業の創業者とはバイタリティにあふれており、日々多くの学びを得ています。

 

 わたしのミッションは、会長の飯田が創業したオーケーを未来永劫つづいていける企業に成長させていくことです。そのためには変化するお客さまのニーズに対応し、ネット通販などあらゆるサービスの可能性を探っていきたいと考えています。

 

会社概要