第170回  若い客層を開拓する新フォーマットを開発 「新しいベイシア始まる」  ベイシア代表取締役社長 橋本 浩英

群馬県に本拠を置き14都県に約140店を展開するベイシア。なかでもスーパーセンター(SuC)の店舗数は約50店と国内トップクラスを誇る。そんな同社がSuCの店づくりをこれまでと大きく変え始めている。その理由と戦略を橋本社長に聞いた。
聞き手=阿部幸治 構成=大宮弓絵(以上、本誌)

非食品の売場を半分削減、約6000㎡のSuC

──3月23日、今後のSuCのモデルと位置づける「ベイシアスーパーセンター勝浦店」(千葉県勝浦市:以下、勝浦店)を開業しました。売場面積は約4500㎡と、これまでのベイシアのSuCと比較して半分以下です。

 

橋本 当社は2000年頃からSuCを出店してきました。その中心は売場面積1万㎡ほどの店舗です。大型化を優先するあまり、売場づくりでは商品レベルの統一というチェーンストアの原理原則が曖昧になっていました。とくに衣料品や住居関連品などの非食品の売場が必要以上に広くなり、重複する商品が増えて、商品回転率が悪化していました。

 

 また日本のSuCは、欧米と比較して食品と非食品の購買頻度が大きく異なる商品構成になっており、来店客にとって利便性が低いと指摘されてきました。

 

 そこで、社長に就任した16年頃から新たなSuCモデルの構築に着手しました。まず見直したのは、購買頻度の低い非食品の商品構成です。商品回転率が悪化していた趣味・嗜好品のカテゴリーの品揃えを大きく絞りました。

 

 商品構成の見直しとともに売場面積も適正化しました。これまでは売場面積約1万㎡のうち食品3分の1、非食品3分の2という割合でしたが、非食品の半分を削減し、食品と非食品でそれぞれ約3000㎡、全体で約6000㎡をモデルに設定しました。

 

 その新しいSuCモデルの1号店として開店したのが勝浦店です。勝浦市の人口は約1万8000人と少ないため、市場規模を考慮して売場面積は6000㎡よりもさらに小さい約4500㎡としました。

 

──売場レイアウトも従来のSuCとは大きく異なります。

 

橋本 勝浦店は「コンパクトながらメリハリをつける」をテーマに、従来よりも小型のSuCながら、開店前の調査で地域から要望のあった商品や機能を強化しています。売場面積の構成は食品が約2500㎡、非食品が約2000㎡で、「食」を中心とした店にしています。

 

 売場レイアウトでこれまでと大きく変えたのは、メーン出入口すぐの青果売場の隣に、総菜売場、カフェ、ベーカリーを集中配置した点です。女性の社会進出や高齢化が進むなかニーズの高まる即食性の高い商品を充実させたほか、「飲食」の機能を付加しました。

 

 即食性の高い商品については、生鮮3部門で「素材の総菜化」にチャレンジしました。総菜売場では、精肉部門や鮮魚部門の素材を使用した弁当や総菜を販売しています。また、カフェでは、青果部門で扱う果実を使用したスムージーやジェラートを提供しています。

はしもとひろひで はしもと・ひろひで●1961年生まれ。群馬県出身。84年、明治大学政治経済学部卒業。同年、いせや(現:ベイシア)入社。98年ベイシアハード事業部長。2002年ベイシア電器執行役員営業部長、16年ベイシア役員待遇法務部長を経て、同年6月代表取締役社長に就任。

──「飲食」の機能に当たるカフェでは、「Hana Cafe(花カフェ)」という新しい屋号を掲げて、カフェ、花売場、ベーカリーが一体になった売場を構築しています。

橋本 カフェとベーカリーは地域から要望が多かったことからとくに力を入れています。花に囲まれた癒しの空間のなかでお茶や食事をしてもらえる場所を提供します。

 

 1階だけでなく2階にもカフェスペースがあり、計88席を用意しました。とくにこだわったのが2階部分です。テラス席からは僅かながら海を見ることができます。

 

 花カフェはこれから新規出店するSuCや大型の食品スーパー(SM)にも導入していく方針です。カフェで提供するメニューをさらに充実させるほか、グロサリーの提案も加えて「物販」と「飲食」を融合したグローサラントにも挑戦したいと考えています。

 

──花カフェの2階部分には、子供が遊べる「キッズエリア」や、水道設備を設けたワークショップスペースも用意しています。

 

橋本 これまで当社は40代以上のお客さまが中心で、客層が狭いという課題がありました。そこで、ベーカリー・カフェを軸に新しい売場づくり、空間提供をすることで、子育て中のファミリー層をはじめ若い世代の来店につなげたいと考えたのです。

 

 主婦同士でお茶をする、子供と一緒に買物に行く、ワークショップを通じて学ぶ、地域の人と交流するなど、お客さまの生活に根付いたさまざまな来店動機を提供することで、地域で長く支持される店になりたいと考えています。

 

──店舗デザインや売場の空間演出も従来と異なる印象を受けました。

 

橋本 勝浦店は店舗デザインや売場の空間演出にも力を注ぎました。外観デザインは、これまでは赤色を多く使用していたのですが、勝浦店は地域の景観との相性を意識して、勝浦の青色の空と海に映える白色を基調にしました。

 

 内装デザインは、壁面や什器に原色を使わず商品の色味が目立つようにしました。とくに青果売場は「ファーマーズマーケット」をテーマに、彩り豊かな市場のような空間をめざしました。ビジュアルマーチャンダイジングに取り組み、野菜や果物のそれぞれの色彩に考慮して商品の配置を決めています。

はなかふぇ 初の取り組みとして、花売場とベーカリーが一体になったカフェ「花カフェ」を導入。内装デザインにも力を注いだ

EDLP商品の数は1.5倍、地域最安値を追求

──若い世代に訴えかける売場づくり、デザインの一方で、ベイシアの代名詞と言える低価格政策も強めています。店内では「激安」と銘打った商品が多く見られますね。

 

橋本 勝浦店は、EDLP(エブリデー・ロープライス)の価格戦略をさらに推進するための実験に取り組んだ店でもあります。EDLPで販売する商品は従来のSuCの1.5倍に増やしました。価格も、競合店調査により他社の追随を許さない低価格に設定しています。おそらく千葉県の外房エリアにあるどの店舗よりも安いでしょう。今後の売上動向から購買頻度の高い商品を見極めて、EDLPに設定する商品の構成をさらにブラッシュアップしていきます。

 

──大きく圧縮した非食品売場では、カジュアルウエア専門店「everywear(エブリウェア)」を導入し、核売場としています。

 

橋本 エブリウェアは、ベイシアのSPA(製造小売)型の衣料専門店で、17年9月、当社のSMが入る近隣型ショッピングセンターのなかに1号店をオープンしました。とくに、ストレッチ機能とサイズ・色のバリエーションの幅を訴求した、デニムやチノパンツなどのボトムスが支持を得ています。SuCにエブリウェアを導入するのは初の取り組みです。

 

 1号店の売場面積は約1000㎡ですが、勝浦店は靴と服飾雑貨を絞り込んで約800㎡で展開しています。今後、SuCの新規出店や改装の際は、衣料品売場にはエブリウェアを導入する計画です。

ブロガーを店舗に招き、若い世代に情報を発信

──勝浦店ではこれまでと異なる販促にも取り組んでいますね。

 

橋本 若い世代に向けた販促を積極的に進めていきます。発信力のあるブロガーさんを店舗に招き、ブログやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を通じて当店の魅力を発信してもらう取り組みも行っています。

 

 これまでは店内での写真撮影を禁止していましたが、思い切って撮影していただいてよいことにしました。するとSNSにアップされた勝浦店の写真を見たという若い世代のお客さまが多く来店されました。

 

 勝浦市は、夏場の海水浴などを目的に年間110万人以上の観光客が訪れます。観光で訪れたお客さまにも勝浦店を利用していただき、SNSを通じてベイシアの新しいSuCモデルを全国に発信してもらいたいと考えています。

 

──今後の出店計画を教えてください。

 

橋本 勝浦店では、新しいSuCモデルとして取り組みきれていないことがまだあります。今後、勝浦店での取り組みをさらに発展させて、早期にプロトタイプと言えるような店をつくりたいと考えています。

 

 19年2月期は、SuCの勝浦店のほか4店舗を出店する計画です。この4店舗を含めて、これから新規出店する店舗では勝浦店同様に即食商品を拡充し、花カフェを導入した食品ゾーンを展開する予定です。

 

 同時に既存店のSuCでも売場面積の適正化を進めます。改装により商品回転率の低い非食品の売場は削減し、そのぶんの売場に100円ショップなどの利便性の高いテナントを誘致して集客力アップを図ります。

 

 勝浦店は、ベイシアとして今後の店づくりの方向性をかたちにした店舗と言えます。テレビCMでは「新しいベイシア始まる」というキャッチフレーズを打ち出しました。それを見たお客さまから多くの応援の言葉をいただき、従業員の大きなモチベーションになっています。こうしたお客さまの声を今後も吸収し、常に新たなチャレンジを続けて進化していきたいと考えています。