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2014年1月21日

第3回
福島あんぽ柿の復活

1.あんぽ柿の里、大正の家

 

 「あんぽ柿」という干し柿をご存じだろうか。干し柿でありながら、その色は樹からもぎ取ったばかりのような鮮やかなあめ色。表面はさらりと乾燥していながら、内部はみずみずしくとろとろ。砂糖菓子のような上品な甘さと、フルーティな果実の味わいを併せ持つ逸品だ。干し柿でありながらみずみずしいという一見矛盾した性質を両立させた秘訣は硫黄による燻蒸。明治時代に現在の福島県伊達市で製法が確立され、今もなお同市の名産品となっている。

 

 

 福島県の北部、宮城県との県境に位置する伊達市。かつては養蚕で栄えたが、現在はあんぽ柿をはじめ果物の生産を主要産業とする、緑多き街である。山裾に抱かれるように建つ1軒の古民家に、脱サラしてこの地へ移り住み、農家として暮らすご夫妻が住む。

 

 元々旦那さんは電機メーカーに勤務、奥さんは教師をされていた。農業を手がけてみたいと考えた2人は、農地と家をまとめて売ってくれる物件をネットで探し現在の家を発見。「畑も続けてくれる人に売りたい」という条件だったため、よろこんでこれを引き受けた。当時大学生だった娘さん2人を東京に残し、農業未経験の2人は未知の地へと飛び込んだ。これが5年前の3月、今年は移住から6年目となる。

 

 購入したのは築90年あまり、大正年間に建てられた古民家。屋根裏の巨大なカイコ部屋が養蚕はなやかなりし頃の栄華を今に伝える、歴史の生き証人である。購入当初の構造は大正時代のそれを色濃く残しており、壁はほとんどなく、柱も少なく、各部屋はフスマと障子で区切られているという古典的な日本家屋であった。地盤はしっかりしているようで地元の人曰く「宮城県沖地震にも耐えた」とのことだが、耐震性を考慮し大改築。柱を40本以上追加し、フスマも一部壁にした。2階部分を思い切って取り払って大きな吹き抜けを作り、天井が広く日当たりもいいログハウス風の家に。元の家の風合いを残しつつ、和洋折衷の暮らしよい家に生まれ変わった。

 

 17代続いた地主の家だけあって、母屋だけで床面積120坪、1階だけでも70坪という広々とした生活空間を持つ。更に敷地内には作業場、資材置き場、石倉、あんぽ柿を干すための建物「あんぽ小屋」などが立ち並んでいる。家の中はこだわりが満載で、総ヒノキの風呂、趣味のそば打ち台、薪ストーブなど、都会では決して設置できないであろう設備が満載である。解体した土蔵から切り出された巨大な梁が吹抜け部に設置され、半世紀以上現役の窓ガラスを残すなど、長きにわたる家の歴史を証明するものも随所に残されている。さらにはリフォームの途中で天井裏から囲炉裏の煙抜きが発見されたため、小規模ながら囲炉裏も復元した。リフォームに携わった業者さん・職人さんたちにとっても会心の仕事だったようで、今なお時折この家を訪ねてくる事もあるという。

 

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