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第1337回

2013年12月29日

セブン&アイ・ホールディングス オムニチャネル所感(2)

千田 直哉

《オムニチャネル》時代は、オリジナリティが高く、強い自社開発商品をどれだけ持っているかが大きな競争力になります。全国同一のナショナルブランド(NB)であれば、魅力訴求の9割以上は“価格”にならざるをえないからです。

 しかも、NBの廉価販売の分野には、ネット流通のモンスターである米アマゾン・ドット・コム(以下、アマゾン)がすでに君臨しており、日本での売上高は7300億円(2012年度)を計上、さらに拡大基調にあります。

 あえて競合が厳しく、儲からなさそうな商売に注力していくというのは、得策とは言えません。

 

 その意味からも、強力な自社オリジナル商品(=プライベートブランド〈PB〉)を持つことが極めて重要になるわけです。

 周知のとおり、7&アイHDは、かねてからセブン‐イレブンやイトーヨーカ堂がチームマーチャンダイジングに取り組むことで、弁当や総菜などのPBを開発してきた経緯があります。

 2007年からは「セブンプレミアム」ブランド、2010年からは「セブンプレミアム ゴールド」ブランドを立ち上げ、その2015年度の売上高目標を1兆円に、それ以外のオリジナル商品を含め3兆円に据えています。

 長年にわたる地道な努力は花開き、すでに食品のPBは、消費者にしっかりと浸透した感があります。

 そして、そのさらなる浸透を図り、他の追随を許さない企業体をつくっていくには、販路をさらに強化、拡大する必要があります。

 お家芸であるコンビニエンスストアの場合は、フランチャイズビジネスですから、土地買収などの煩雑な手続きや作業を経ることなく、一挙に店舗網を拡大することが可能です。

 実際、セブン‐イレブン・ジャパンは1年間で現有店舗の約1割に当たる1500店舗の出店計画を発表していますし、他のチェーンからの鞍替えなども考えれば、2万店舗態勢もそれほど時間を要することなく達成可能でしょう。

 

 ただし、同じ販路拡大でも、食品スーパーとなると話は別です。

 グループの中に日本を代表する優良食品スーパーのヨークベニマルがあり、首都圏ではヨークマートやイトーヨーカ堂が都市型店舗であるイトーヨーカドー食品館(11店舗)を展開していますが、拡大の速度は、コンビニエンスストアと比較すれば極めて緩やかであるからです。

 

 2013年は、北海道のダイイチ(鈴木達雄社長)と業務資本提携を結び、新境地を開きました。

 その一方で、とくに西日本方面の店舗網は脆弱であり、イトーヨーカ堂内の食品売場と2011年に業務提携した近商ストア(大阪府/堀田正樹社長)など、数えられるほどしか存在していませんでした。

 そう見ていきますと、12月10日に発表された天満屋ストア(岡山県/橋本和雄社長)との業務資本提携は必然であったということができるでしょう。

 

 今後、7&アイHDは、さらに食品スーパーの店舗網を拡大、拡充する可能性が高いと言えます。

 しかも現在、食品スーパー業界は混沌としており、少子高齢化や人口減少で縮小していくマーケットの中で優勝劣敗の様相を呈しはじめ、企業淘汰や業界再編は、これまで以上に活発になっていくと予想できます。

 

 7&アイHDにとって、M&A(合併・買収)政策は、「いつでも、どこでも」という《オムニチャネル》を確立する意味合いにおいては当然のこと。販売力のさらなる拡大という意味においても意義あると理解できます。

 

 さて、食品分野では、日本屈指のPBを展開している7&アイHDですが、衣料品と住居関連については、まだまだ余地があると評さざるをえません。

 イトーヨーカ堂は、長年、衣料品改革に邁進していますが、ユニクロ(山口県/柳井正社長)級の大きな結果を残しているとは言えませんし、自社で開発したセブンホームセンター(4店舗)にしても急拡大しているわけではありません。

 また、日本を代表するクリエイティブディレクターである佐藤可士和さんをプロデューサーに起用した生活雑貨ブランド「セブンライフスタイル」などを発売していますが、まだ大ヒットの領域には達していません。

 

 7&アイHDは、そうした状況を打開するために、非食品を扱うSPA(製造小売型)企業との業務資本提携を繰り返しているのだと想像できます。

 

 衣料品の分野では、高級衣料品店「バーニーズ ニューヨーク」を展開するバーニーズジャパン(東京都/上田谷真一社長)に出資すると発表(12月4日)。住居関連でも「フランフラン」を展開するバルス(東京都/高島郁夫社長)との業務資本提携を締結(12月25日)しています。

 両社の共通点は、洗練されたPBを開発・販売する力を備えていることです。

 

 前述通り、独自性の高い強い商品を持つことが7&アイHDの《オムニチャネル》戦略を支える一方の車輪になるに違いありません。

 

 今後は、製造小売業だけでなく、製造業を傘下に入れることも考えられます。

 たとえば、一世を風靡した百貨店向けのアパレルメーカーのほとんどは、長引く百貨店不振の中で青息吐息のような状態が続いています。

 垂直統合(バーティカル・インテグレーション)は、来年以降も流通のキーワードになるものと予想できますが、もっと早い段階で、製造業を買収するような発表があるかもしれません。 

 

 

※2014年1月7日追記:製造業を傘下に収めるのではという話について、7&アイHDの幹部に確認したところ、「その考えはない」とのことでした。理由は、斜陽企業を支えるには労力が大きい割に、それに見合うリターンが望めないこと。ファッションは流行り廃りが激しいので、常に旬の企業と、製造小売業として取り組みをしたいこと、を挙げていました。ここでも、チームマーチャンダイジングで蓄積されてきたノウハウが生かされているようです。

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