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2013年6月1日

消費増税、軽減税率にインボイス方式が必要ない理由

東郷作郎

 

日本の消費税は「多段階課税方式」をとっています。この方式は小売だけでなく、製造業を含む全ての事業者が消費税の徴収にかかわります。米国の売上税のような「小売段階での単一段階課税方式」に比べその仕組みは複雑で一般にはわかりにくいものです。消費税導入時、財務省はその処理のためとして職員を大幅に増やしました。その背景には、多段階課税方式にすればすべての事業者の仕入れと売上げを100%把握できるので税務調査の追跡能力が格段に上がるだろうという期待もあったものと思われます。

 

 しかしながら、取引ごとの請求書(インボイス)に記載される消費税を集計して納税額を計算する「インボイス方式」は処理の負担が大きいとして産業界の反対が強く、納税は帳簿上の課税仕入れと課税売上の差額に税率を掛けるだけの「簡便法」でもよしとされました。そして昨今の「準備」の議論では、この簡便法では軽減税率をこなせないのでインボイス方式に改めようというものです。

 

現行のままでも軽減税率は導入可能

 

 さて、今の仕組みのままでは本当に軽減税率は導入できないのでしょうか?

 

 自動車の国内販売は標準税率、一方輸出は暫定的にゼロ税率なので、販売先別とは言えすでに複数税率は存在し運用されています。食品などの「軽減税率」も車メーカーにならって、売上を軽減税率と標準税率に分けて仮受け消費税を計算すればよいだけの話です。

 

仮受け消費税=売上A×標準税率+売上B×軽減税率

 

 現在のPOSシステムは、消費税額を計算する機能を備えていますので、複数税率に基づいてレシートに総額表示し、税額を分離集計するシステム変更はさほど難しくないでしょう。後方処理で売上をA・Bに分けるのはさらに簡単です。

 

 どの商品を軽減対象とするかが難しいといった「先送り理由」も聞かれますが、欧米での先例も多いのでこれを参考に「常識的」に決めればよい話しです。日本だけが難しいはずはありません。

 

 ここで一番大事なポイントは、「仕入れ」は軽減税率の品目であっても「標準税率のままでかまわない」ということです。国内販売では標準税率、輸出では暫定ゼロ税率と「複数税率」が実際に運用されている車メーカーの国内仕入れがすべて標準税率で何の問題もないのと同じです。軽減税率は現行の仕組みのままで導入できるわけです。

 

 仕入れのような「課税事業者間の取引」は、将来複数税率になっても変える必要はなく「課税仕入れ×標準税率」で一向にかまいません。さらに言うと標準税率である必要さえなく、極論すれば今すぐ10%にしてもかまいません。

 

 課税事業者間の消費税は「国の税金預かり」と「国への税金立て替え」を互いにやりとりしているだけで、税率は単にその計算基準を決めているにすぎないからです。

 

 簡単なモデルで説明しましょう。

 

 ある小売A社が商品(消費税5円)をB社から仕入れたとしましょう。A社は仕入れ代金を払い「仮払い消費税5円」と記録します。一方B社は代金を受け取り「仮受け消費税5円」と記録します。このように課税事業者間の取引では、仮払い消費税と仮受け消費税は必ず「同じタイミング」で「同額」が「一対」で発生します。「一対」というのは大相撲を思い浮かべるとわかりやすいかもしれません。勝った力士がいると必ず負けた力士が同数いるのと同じです。

 

 国の税収は仮受け消費税と仮払い消費税の差額なので、A社とB社の納税申告による税収はゼロです。

 

税収=仮受け消費税5円 - 仮払い消費税5円=0

 

 A社は消費税5円を立て替えたので国から5円が還付され、B社は消費税を5円預かったので国に5円を納付します。このように一時的に事業者の手元現金は動きますが、事業者が消費税を負担することはなく、「預かり金」と「立て替え金」を国との間で清算するだけです。上記の清算の結果、事業者A・Bもゼロ、国もゼロなので、たとえそのやり取りが5円から10円になっても結果は同じです。今すぐ10%にしても何も変わらないわけです。

 

消費増税が参院選をにらんだ政治的思惑で議論されているが、導入のための議論にも、大きな疑問がある!

 

 

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