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2012年7月5日

最終回
2012年の展望 これから5年を見据えた、コンシューマービジネスの注目ポイント・ベスト8(前編)

日本という国自体が大きな転換期に

 しばらく連載に間が空き、申しわけありませんでした。

 

 2010年8月より15回にわたり、「日本と世界のコンシューマービジネス」と題して連載をさせていただいた。日頃、経営コンサルタントとして流通業や消費財メーカーのみなさんと接している。もちろん各社ごとに、戦略、組織、オペレーション、ITなど、それぞれ異なる方針で異なることを実施している。しかし時々、日本と欧米の企業の間で共通して見られる「違い」がある。日本企業によく見られるモノと欧米企業との違い。この違いを取り上げることで、日本のコンシューマービジネス企業の更なる進化に役立てば良いと思い、書かせていただいたのが本稿である。
 

 残念ながら、次回にて区切りをつけて連載は終了することになる。
そこで今までの連載の締めくくりとして、筆者が感じている日本の小売業と欧米の小売業との主要な相違点を挙げてみたい。


筆者は決して欧米信者ではない。「欧米=進んでいる/優れている、日本=遅れている/劣っている」という主旨で述べるつもりはない。これから挙げる相違点を、「解消していく」のか、「それを是として認知する」のかを考えていくことが、今後の日本のコンシューマービジネス業界の発展のために必要であると信じている。
 

 2011年の東日本大震災をきっかけとして、コンシューマービジネス業界だけではなく、日本経済、いや日本という国自体が大きな転換期に入ったのではないであろうか。

 

 今までのような需要の右肩上がりの成長や、高付加価値商品への移行トレンド、供給者側からの需要創造、マスマーケティングの効果などが、もはや望めない時代に移りつつある。

 

 この移行は東日本大震災が原因で起きたものではなく、それ以前から進行していたものが、東日本大震災で決定的になった。転換期に移行したことには、2つの背景がある。それは①日本の人口構造の変化、②商品選択権の生活者への移行、である。

 

①日本の人口構造と市場規模
 

 今後の日本の人口構造は、人口の減少と高齢化の急速な進展というダブルパンチを受ける。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、今後一貫して総人口は減少し続けて、36年後の2048年にはついに1億人を下回ってしまう。

 

 同様に65歳以上の人口構成比は、12年後の2024年に30.1%、2048年には実に38.4%にも達する(日本の将来人口推計人口[平成24年1月推計]、出生中位/志望中位家庭の場合)。その結果、コンシューマービジネス業界にとっても、現在のデフレ以外に、大きなパンチを2つ受けることになる。

 

 ひとつは消費の源である、消費者の人数の減少。もうひとつは一人当たり消費量及の減少である。

 

 市場の売上金額は、消費者の人数×購買頻度×消費数量×平均単価の積である。しかし、


消費者の人数: 人口の減少による減
消費数量:  高齢化による消費する数量の減少
平均単価:  デフレによる平均単価のダウン
 

と、市場の売上金額を構成する4要素のうち、3つの要素がダウンする傾向にある。そのためコンシューマービジネス業界は、人口の減少率以上のパンチを受けることになる。

 

 たとえば、人口が0.20%減少(前掲の2013年推計値)し、消費数量と平均単価が1%ずつ減少するケースを考えて見よう(下記数値は対前年増減率)。


消費者の人数(99.8%)×購買頻度(100%)×消費数量(99.0 %)×平均単価(99.0%)
=97.8%
 

 つまり2.2%の市場縮小になってしまう。

 

 一部では「シルバーマーケット」に注目が集まっているが、a)シルバー人口が増えても日本の総人口は増えないことと、b)シルバー人口は消費数量が落ち込むこと、をはっきりと意識しないといけない。

 

 日本のコンシューマービジネス業界の市場規模は、なんとなく考えているよりも減少のペースが速いことをはっきりと意識すべきである。需要が縮小すること、これが日本のコンシューマービジネス業界が転換期に移ったことの一因である。

 

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