ライフコーポレーション 第5次中期3カ年計画発表会録(後篇)

2015/05/14 00:00
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 さて、ここからは第5次中期経営計画について説明したい。

 その前提になるライフコーポレーションのビジョンは不変だ。

「ライフの全店舗がお客さまからもっとも信頼される地域一番店になる」。

 

 このビジョンを達成するために、より具体的に落とし込んだものを第5次中期経営計画では掲げている。

 

 第2次中期経営計画がうまくいったために、第3次、第4次は、その焼き直しの感が強いものになってしまったことは前述通りだ。

 その反省に立って、第5次中期経営計画の策定に当たっては、再度、議論するところから始めて、つくり直した。女性の社外取締役からもアドバイスを受けた。

 

 その結果として、次の3つの風土改革に取り組んでいくことが決まった。

 ① お客さまの立場で考え行動する会社

 ② 多様な人財を活かす会社

 ③ 規律とチームワークのある会社

 

 そして、その実現に向けて「新ライフの誓い」を定めた。

 

 ひとつ、私は、お客さまの立場で考え行動します

 ひとつ、私は、仲間を思いやり、多様な価値観を大切にします

 ひとつ、私は、チームの約束を守り、自ら責任を果たします

 

 というもの。

 

 従来の「ライフの誓い」には主語がなかった。誰がやるのか分からなかった。結果として、会社や各部門にぶら下がっていることがあったかもしれない。

「私は」という一節を入れることで、他人事ではなく、自らのことであることを実感してもらうことがポイントだ。

 

 その3つとは別に「12の戦略」を立てた。

 それらは、店舗、商品、売場、出店、人財、プロセスセンター、物流、情報システム、販促、オムニチャネル、財務・コスト削減、危機管理から成る。

 この12項目に先ほどの3つの風土改革を加えて、「新15の改革」を設定した。

 今日のライフのカタチをつくった第2次中期経営計画の「15の改革」に立ち返るとともに、内容はすべて見直した。

 これが第5次中期経営計画の骨子になる。

 

 いくつかの戦略について、詳細に述べると――。

 

【店舗戦略】は、2013年11月に開業した新業態「セントラルスクエア」の1号店西宮原店(大阪府)は計画値を大幅に上回っている。

 現在、「セントラルスクエア」は、西宮原店、北畠店(大阪府)、森ノ宮店(大阪府)、西大路花屋町店(京都府)の4店舗を展開する。大阪府の3店舗は絶好調。西大路花屋町店は苦戦しているけれども時間をかければ当社の旗艦店舗になると確信している。

「セントラルスクエア」業態は、2016年2月期中にあと2店舗をオープンする。2015年12月には首都圏1号店となる「セントラルスクエア押上駅前店」(東京都)を開業する。首都圏のMD(商品政策)のレベルをもう一段アップさせたい。

 半径1キロ内のシェア高めるための業態であり、「日々のお買い物を便利から楽しいへ。」がコンセプト。お客さまとの関係性を構築するには非常に良い業態だ。

 今後、店舗を改装するに当たっては、「セントラルスクエア」の店名を付けるか付けないかは別にして、「お客さまとの関係性を築く」ことが必要であると考えている。

 また、今日は発表できないが、もうひとつ別の業態も考えている。

 

【商品戦略】については、ライフは、「衣料部門を縮小する」という見方があるけれども、まったくそんなことはない。当社の差別化において絶対に必要な部門だからだ。

 ただし、生鮮食品で競争力がない店舗の場合は、衣料品売場や生活関連売場の面積適正化を図っている。

 だが、たとえば亀戸店(東京都)では、若いお客さまが増える一方で、衣料品売場を縮小し過ぎた影響で、地域のご高齢のお客さまの来店頻度が減ってしまった。そこで再拡大を考えている。衣料品については、半径1キロのシェアを拡大するには最大の武器だと考えており強化していきたい。

 

 もうひとつ。日本流通産業(大阪府/夏原平和社長:以下、ニチリウ)との関係について聞かれることが多々あるが、これはコアメンバーとして活動する。何も変わらない。

 量をまとめて原価の下がる商品はニチリウを活用。そのほか、お客さまにライフへのロイヤルティを高めてもらうためのPB(プライベートブランド)づくりにも専心したい。商品によって使い分けたいと考えている。

 

 錦糸町店(東京都)と宮内2丁目店(神奈川県)では、チーズの量り売りを始めた。米国の食品スーパーを視察して、チーズやワインの売場が日本は遅れていると痛感したことが動機になっている。多様な人財を生かすという意味合いもあった。

「チーズハウス」と命名してコーナー展開を始めたが、計画は下回っており、採算はとれていない。しかし、ID‐POSで購買動向をチェックすると、コアなお客さまがついてくださり、その方々が他の商品も購入するので、買い上げ単価アップにつながっている。したがって、育成していかなければいけない。

 

 南千住店(東京都)と森ノ宮店では総菜のビュフェをスタートさせた。

 

 お客さまとの関係性について何度も言及してきたが、そのルーツは大倉山店(神奈川県)にある。出店するに当たって、住民からの反対運動があり、オープン当初は売上が厳しかった。

 その打開を意図して、地域のお客さまの声に耳を傾け、ひとつひとつ応えていく中で、お客さまからの信頼を勝ち取ってきた。

 現在、西大路花屋町店や下山手店(兵庫県)でもお客さまのニーズに応えているが、やればやるほどお客さまはそれに応えてくださるようになる。

 

 このようにお客さまと直接対峙して、言語データを拾うことも重要なのだが、【情報戦略】としては、実際のデータに基づくことも必要と考え、ID-POSデータの開示を開始している。従来はPOSデータを開示していたが、2015年1月から首都圏で始め、一部の取引先には活用してもらっている。

 現在は、あるコンサルタントの方の力を借りて、当社のID-POSの分析活用のあり方について社内でプロジェクトを立ち上げ構築中だ。近畿圏でもサービスを開始する予定だ。

 

【オムニチャネル戦略】ということでは、ネットスーパーは3年前に開始。単店ベースでは、黒字の店舗も出てきた。

 現在14店舗で展開。次の3年で最低43店舗にして売上高20億円を達成したい。

 これにともない、ジェーシービー(JCB)の協力を得て、自社クレジットカードの子会社「ライフフィナンシャルサービス」を設立した。支払の利便性向上につなげると同時にお客さまのデータ活用に努めたい。2016年3月からサービスを開始する。自社電子マネーも可能であれば同じタイミングで発行したい。現在、社内で検討中だ。

 三菱商事グループのPONTAカードは10店舗で実験導入。効果が認められているので、どこまで拡大するかを決めていく。
ポイントカードについては、2015年3月に100円1ポイントを200円1ポイントに変更した。近畿圏は全店舗で変更した。1ポイントからレジで使用でき、お客さまの利便性を高める。同時にそれ以外のサービスや価格を拡充する。

 2015年3月の既存店舗は対前期比1.7%減、4月は同13.2%増。2か月を慣らすと同5.1%増だった。5月のスタートの数字を見ても、お客さまは充分に理解してくださっていると考える。

 

【プロセスセンター戦略】については、現在、店舗では採用難が起こっている。

 センターで一括して加工した方が良いことはセンター化を図る。これは従来から変わらない。ただ、これまで以上にセンター強化を図っていく。

 惣菜センターとして船橋センター(千葉県:2014年12月稼働)に50億円。近畿圏では天保山のセンターに約20億円を投資して改修中である。

 水産・畜産については、首都圏では埼玉県の加須に新しい土地を手配し50億円を投資して、2016年9月から稼働させる。近畿圏は2018年に稼働をめざして第2プロセスセンターを設置する予定。候補地は今のところ定まっていない。

 ベーカリーは2014年、吉川駅前店(埼玉県)の3階にベーカリーセンターを新設したところ店舗のベーカリーの売上が20%以上伸びた。それでセンターのキャパシティがいっぱいになったので首都圏では第2センターを船橋の惣菜センターの中に設置することを進めている。近畿圏でも設置に着手しており、9月には新センターを稼働できると考えている。

 

【物流戦略】は、首都圏はキャパシティがいっぱいに達したので2年以内に新センターを稼働させたい。近畿圏は次の3年間は大丈夫だが、その後に備えて新センターを立ち上げる計画だ。

 

 これらを実施することで、第5次中期経営計画は、

 

 投資額は約700億~800億弱円

 新店は30店舗

 改装投資額は約200億円(首都圏100億円、近畿圏100億円)

 売上高 2015年2月期実績+1000億円

 経常利益 同上+40億円

 

 をめざす。
 

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