イズミ M&Aは大事な成長戦略!

2015/04/09 00:00
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 イズミ(広島県/山西泰明社長)は2015年2月期の決算を発表した。以下では、山西社長の発言をまとめた。(談:文責・千田直哉)

 

 まず、連結決算の業績は以下の通り。

 

 ●営業収益 5797億3900万円(対前期比4.1%増)→5期連続過去最高

 ●営業利益 303億3000万円(同4.2%増)→3期連続過去最高

 ●経常利益 297億6700万円(同4.6%増)→3期連続過去最高

 ●当期純利益 173億6000万円(同0.1%減)

 

 2015年2月期の消費環境は当初の予測と異なった。

 4月に実施された消費税増税後の反動減は、旬な商品や新製品などの投入、訴求によって5月には克服。既存店舗売上高は対前期比1.4%増を確保した。

 ただし客数減が顕著で、同2.1%減だった。低価格志向のヤングファミリー層が離れたことが大きかった。一方でシニア層からの支持は想定以上に受けた。

 客数減少を客単価の同3.6%増、1品単価の同3.2%増、買い上げ点数の同0.4%増が補完した格好だ。

 

 期初に掲げた6つの施策を着実に遂行することで、営業利益、経常利益は過去最高を達成することができた。

 6つの施策とは、①「いいものを安く」、②既存店舗の活性化、③新規出店、④M&A(合併・買収)でのスーパー大栄、広栄の連結子会社化、④電子マネー「ゆめか」、⑥新物流センターの稼働である。

 

 現在の小売業を取り巻く環境は、少子高齢化と人口減少によるマーケット縮小が続いている。またオーバーストア化による競争激化が顕著だ。

 足元の環境は、デフレからインフレへのシフト、消費の2極化、原材料費高騰による商品価格上昇、採用難と人件費上昇、M&Aの拡大など大きな変化がみられる。

 

 イズミは、こうした大きな変化期にこそチャンスがあると考えている。そこで2016年2月期のイズミは、「革新・挑戦・スピード」を掲げ、小売業を取り巻く構造的な環境変化に対応する。

 イズミの「6つの強み」。すなわち、①ドミナント戦略、②地域一番店、③店舗主導経営、④既存店の競争力、⑤「いいものを安く」、⑥ゆめブランドを強化活用しながら、広島県、福岡県、熊本県の重点エリアなどドミナントエリア内のシェア拡大に努めたい。

 

 売上高1兆円構想を推進するに当たっては主に5つの課題に注力したい。5つとは以下の通りだ。

 

(1) 消費の2極化への対応

 これは値下げ競争に参加せずに、付加価値提案力をさらに高めるということ。客数が伸ばしにくい環境下で商品単価に重点をおき品揃えをしていく。
《松》のレベルの商品を《竹》の価格で提供するために業務改革を実施するとともに、帳合変更などによって原価低減も推し進める。これによって2016年2月期の既存店舗売上高は同2.2%増が前提になる。

 

(2) 新店と既存店舗活性化の成功

 新規出店は、6月開業予定の「ゆめタウン廿日市」(広島県、店舗面積約4万6000㎡、総投資額約209億円)、夏に開業予定の「ゆめマート佐賀中央」(佐賀県、同約2680㎡、同約22億円)、冬に開業予定の「ゆめモール筑後」(福岡県、同約5700㎡、未定)の3店舗だ。

 とくに4年ぶりの大型新店となる「ゆめタウン廿日市」には期待している。廿日市市は広島市への消費流出が顕著だったがこれにストップをかける、60万人の広域商圏から年間1200万人の集客を見込んでいる。

 

 また、地域一番店である「ゆめタウン光の森」(熊本県)、「ゆめタウン山口」(山口県)、「ゆめタウン久留米」(福岡県)の3店舗にも、それぞれ31億円、14億円、30億円を投じて活性化させる。店舗面積を増床し、生鮮食品の品揃えやテナント強化拡大などが主なポイントになる。

 

(3) M&A

 経済がインフレにシフトし、少子高齢化や人口減少、大手や異業種との競合激化、投資不足による店舗劣化、後継者問題などで経営難に陥っている小売企業は少なくない。

 そこでイズミと提携してもらい、商品供給や店舗再生といったイズミのノウハウを活用することで業績を好転させる。従業員や経営者の待遇は改善が図られ、地域経済の活性化にもつながる。

 過去には年間10店舗の新規出店を継続したいと発言してきたが、投資対効果を考えるとM&Aの方が効率が良いので、新店投資のウエートは下げたい。

 ニコニコ堂以来のM&Aノウハウの蓄積もできてきた。

 中小規模の食品スーパーや大手がスクラップする店舗などを対象にM&Aを推進したい。

 

(4) 電子マネー「ゆめか」

 2015年2月期末での発行枚数は475万枚。次年度は540万枚の突破を計画しており、出店エリア内で戦える規模になった。

 レジ待ち時間が短縮され、お客さまの利便性が向上することはもちろん。キャッシュレス比率を高めればレジ業務の生産性改善につながり、その分の人時を接客などに振り向けることができ、サービス向上につながる。

 

(5) コーポレートガバナンス・コードへの対応

 独立社外取締役を選任する予定だ。7年前から議論してきた。従来のオーナー経営は、スピードが速いので何事も一気に推し進められるメリットを享受してきた。しかし、その一方でミスリードの危険性や同じような考え方しか出てこないというデメリットも内包していることは事実だ。1兆円体制のコーポレートガバナンスを考えた時には必然であると判断した。

 

 中長期的には、高収益高成長戦略を継続させ、売上高1兆円、経常利益率6%を早期に達成したい。

 

 なお、2016年2月期の業績目標は以下の通りだ。

 

 ●営業収益 6482億円(対前期比11.8%増)→6期連続過去最高

 ●営業利益 333億円(同9.8%増)→4期連続過去最高

 ●経常利益 321億円(同7.8%増)→4期連続過去最高

 ●当期純利益 181億円(同4.3%増)→過去最高を更新
 

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