セブン&アイ・ホールディングス 村田紀敏社長2014年度を振り返る(2)

2015/04/07 00:00
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 昨日の続きです(村田紀敏セブン&アイ・ホールディングス社長談;文責・千田直哉)

 

 セブン&アイ・ホールディングスは、2015年秋にオムニチャネルを本格的にスタートさせる。

 

「オムニチャネルの仕組みづくりとして、システムとしての要件定義は終了した。現在は、プログラムを作成している途上にある。本格稼働する2015年秋までに約3か月間のテストを繰り返し、スタート時に問題が生じないようにしたい。2014年から仕組みづくりの投資をしている。今年度の統合システムへの投資も含め、第一次のスタート時の投資額は約220億円。それに合わせて商品とサービスの両面において、単なるEコマースではない仕組みづくりに努めている」

 

「オムニチャネルの商品政策は、単純に店舗で販売している商品を掲載することだけではない。新しい商品や価値ある商品をグループ各企業が新規に開発する。従来はリアル店舗で売れる商品を中心に開発してきたが、ネットで売るという切り口を付加すれば、従来では考えられないような商品開発が行われるようになるはずだ」

 

「全店舗で販売しようとすると、非常に多くの物量を調達する必要があった。だから“少量であってもいいもの”をなかなか提案しきれていなかった。しかしオムニチャネル化が進展する中で新分野の商品がそれぞれの事業会社から開発され出てくるだろう」

 

「オムニチャネルにおけるサービスとして現在、セブンイレブンの店舗でのグループ各企業の商品受け取りや返品の実験中だ。とくに返品については、店舗の業務が煩雑にならずに速やかにできることを心掛けている。また店舗での接客サービスに以前から注力してきたが、いまだにセルフサービス方式が染みついているところは否めない。ネットから誘導されてきたお客さまに対して、しっかりと接客ができるようにシステム面からもサポートしていきたい」

 

「オムニチャネルがスタートすることによって、商品面でもサービス面でも今までと違った運営ができることを期待する」

 

「オムニチャネルは単なるEコマースではない。リアル店舗とネットが融合する。その結果としてお客さまが店舗に誘導されたときに、しっかり接客して、サービスレベルを上げる。それは言葉だけの接客サービスではなく、システムを通したお客さまへの提案の仕組みづくりだ。今秋はこれをうまくスタートさせ、将来の計画としては、このグループのサイトだけで、1兆円の売上を計上したい。2015年度の予想は約2000億円。一気に立ち上がるのではなく、小さく生んで大きく育てたい」

 

 

 近年、セブン&アイ・ホールディングスは、同業者異業者との業務資本提携、M&A(合併・買収)にも力を入れている。カタログ通販のニッセンホールディングス(京都府/市場信行社長:以下、ニッセンHD)や食品スーパーでは、岡山地盤の天満屋ストア(岡山県/野口重明社長)、関西地盤の万代(大阪府/加藤徹社長)など続々だ。

 しかしながら、ニッセンHDの2014年12月期の業績は、売上高こそ2083億7000万円(対前期比6.1%増)だったものの。営業利益、経常利益、当期純利益ともに赤字だった。

 

「ニッセンHDの課題は大きい。セブン&アイ・ホールディングスから代表取締役副社長が常駐している。ニッセンはこれまで、いかに安いものを売るかに注力してきた企業であり、カタログのつくりも内容もそうなっている。しかし今のお客さまは、量を求めているのではなく、質を求めている。だから、商品開発について変化させなければいけない。長く続いてきた価格志向の商品開発DNAを変えることは大変だが、これを変える必要がある。ニッセンの改革については、とくに商品面の改革に力を入れる。一方で、オムニチャネルのシステム拡充面においては、ニッセンのコールセンターや配送システムなどグループ全体のシナジーは出てくるだろう」

 

 

 2015年3月には、万代と資本提携を視野に入れた業務提携を発表。万代は、大阪府を中心に147店舗を展開する大手食品スーパー企業。売上高は約2800億円(2014年2月期)、経常利益約60億円(同)を計上する。

 

「万代は、まず業務提携。お互いの状況を踏まえて将来的には、資本参加までもっていきたい。以前、万代の商売は価格志向だった。しかし、ここ数年は、よりいいものの取り扱いにシフトしている。店舗のオペレーションも素晴らしい。関西においてはイトーヨーカ堂、万代、天満屋ストアを含めて、4000億円の規模になる。万代の課題は総菜にあるが、グループ内には総菜に強いヨークベニマルがあるので、その関係においても新たな総菜の開発に発展するはずだ。良い関係をつくるなかでシナジーを出していきたい」

 

 

 ヨークベニマル(福島県/真船幸夫社長)は好調そのもの。2015年2月期の営業収益は3969億3000万円(同4.2%増)、営業利益は128億2000万円(同0.8%増)。既存店舗伸長利るは同0.2%増で国内店舗数は200に伸ばした。

 

 2016年2月期のセブン&アイ・ホールディングスの業績予想は以下の通り。

 

 ●営業収益 6兆4000億円(対前期比6%増)

 ●営業利益 373億円(同8.6%増)

 ●経常利益 368億円(同7.8%増)

 ●当期純利益 193億円(同11.6%増)

 

「2015年度の消費動向は、不透明感が残る。もっとも大きな問題は、実質賃金がプラスになるかということ。ガソリン価格の下落のようなプラス要因もあるので、新しい商品や品質的にも味的にもより良いものを作り出していく。こうした諸策を実施することで、成長は高まると考え、積極的な投資計画と業績予想を出した」

 

「2015年度の重要な課題は、過去のチェーンストアの考え方をもう一度見直さなければいけないこと。2つ目には、個店や地域性に根差した経営をより強化していく。3つ目は、秋に立ち上がるオムニチャネルだ」
 

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