ドン・キホーテ 消費税増税後対策は万全

2014/03/20 08:00
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 ドン・キホーテホールディングス(東京都/安田隆夫会長兼社長兼CEO〈最高経営責任者〉)は、2014年6月期の第2四半期決算を発表した。

 売上高は、3033億円(対前期比4%増)、営業利益は205億円(同9%増)、経常利益は211億円(同10%増)、純利益は130億円(同10%増)の増収増益で過去最高の業績を残した。

 

 同社は好業績に浮つくことなく、この間も消費税増税対策に専心してきた。

「5四半期を費やして、4月以降の消費税増税対策を準備万端整えた」と自信の表情を見せるのは、同社専務取締役の高橋光夫CFO(最高財務責任者)だ。

 

 高橋専務によると、消費税増税後の小売業界は、2008年9月のリーマンショック、2011年3月の東日本大震災後同様、「客数増、客単価減」のトレンドが顕著になるという。

 

「高額品や贅沢品、不要不急商品や趣味嗜好品の売上が減退することは避けられないだろう。だが、当社で売上構成の大きい《日用雑貨品》や《食料品》は、コンスタントに売れるはず。また当社は、リーマンショック後には『富裕層』と『OL層』、東日本大震災後には『シニア層』、というようにピンチを撥ね除けながら新しい顧客の開拓につなげてきた過去を持つ。同じように今回も、客単価はダウンしても、新規顧客を獲得できれば、売上は確実に伸びる」(高橋専務)。

 

 これらを踏まえて、同社が実施した消費税増税対策は、2本柱から成る。

 

 ひとつは、単品力強化と粗利率改善だ。この取り組みは2年前からスタートさせた。「主力商品を変更するとともに、強力なプライベートブランド(PB)を開発し、割安感を打ち出す」(高橋専務)。

 

 たとえば、《家電製品》であれば、従来の主力であった「薄型テレビ」「パソコン」「ゲームハード」「CD・DVD」から「スマートフォンアクセサリー」「(iTunes Storeなどで使える)POSAカード」「電球(LED)」などにシフトさせた。

 同じように、《日用雑貨品》なら「インテリア家具」「寝具」から「高機能消耗品(オーラルケア、サロンシャンプーなど)」「ステンレスボトル」。《食品》は「小麦製品」「ビール」「塩スイーツ(チョコ、バニラなど)」から「機能性食品(トクホ飲料、ヨーグルトなど)」「袋麺」「ワイン」。《時計・ファッション用品》は、「輸入ブランド品」「香水」から「ファンシー雑貨(つけまつげなど)」「カバン」。《スポーツ・レジャー用品》は、「ゴルフ用品」「球技スポーツ用品」から「フィットネス用品(ヨガマット、バランスボールなど)」「サプリメント」というようにシフトしている。

 

 そして、このシフトは、従来の「高単価・低粗利・低回転」という収益構造と決別し、「低単価・高粗利・高回転」型の商売に転換することを意味する。

 

 消費税対策の2つめは、「ファミリー」「主婦」という新しい顧客層を獲得するためのインフラづくり、新業態の開発だ。

 

 同社は、2007年に長崎屋をグループ化して以降、業態転換用に「ファミリー」「主婦」向けの総合ディスカウントストア「MEGAドン・キホーテ」の確立に努めてきた。

 

「MEGAドン・キホーテ」のプロトタイプは売場面積8000~1万㎡(直営売場面積6600㎡)、粗利益率23.2%、売上高販売管理費率18.1%、営業利益率5.1%。商品構成比率は、《家電製品》7.5%、《日用雑貨品》20.1%、《食品》49.9%、《時計・ファッション用品》17.1%、《スポーツ・レジャー用品》3.6%、《その他》1.8%というもの。2008年6月から長崎屋の業態転換を開始し、現在37店舗を展開している。

 

 ただ、「MEGAドン・キホーテ」には課題があった。

 ひとつは売場面積。従来の主力業態「ドン・キホーテ」の売場面積は1000~1500㎡であり、「MEGAドン・キホーテ」とは4~5倍の差があったのだ。その結果、旧長崎屋の店舗には有効活用できないスペースも生じていた。

 2つめは巨大売場だけに、農産・水産・畜産・総菜の生鮮4部門や30~60代向けのアパレルウエアなど苦手な商品部門も入れてしまったことだ。

 

 この改善と「ファミリー」「主婦」という新規顧客の獲得に向けて新しく開発したのが2011年4月に1号店を出店した「NEW MEGAドン・キホーテ」だ。

 プロトタイプは売場面積3000~5000㎡、粗利益率24.4%、売上高販売管理費率15.9%、営業利益率8.5%。商品構成比率は、《家電製品》11.5%、《日用雑貨品》25.6%、《食品》29.9%、《時計・ファッション用品》23.8%、《スポーツ・レジャー用品》7.6%、《その他》1.6%というもので現在は17店舗を展開している。2020年には150店舗の展開を目指し、今後の出店の主力になる。

 

 同社は、これら2つの打ち手により、消費税増税後の市況もチャンスに転換できると強気の姿勢を見せている。

 「ディスカウントストアとして培ってきた王道を粛々と進んでいきたい。ディスカウントストアとして支持され、期待されるところにしっかりと応えたい」(高橋専務)。

 

 なお、同社の2014年6月期通期予想は、売上高は5963億円(対前期比4.9%増)、営業利益は342 億円(同5.7%増)、経常利益は348億円(同4.8%増)、純利益は218億円(同3.1%増)であり、上方修正している。
 

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