再録:ウォルマート グローバルeコマース事業 CEOインタビュー(2)

2013/10/16 00:00
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次世代フルフィルメント・ネットワークを構築

 

 世界最多の実店舗を運営する企業とオンラインを統合すると、他社が追いつけないウォルマートに変態するだろう。

 

 ウォルマートは、07年にウェブストアを開設しており、これまでも実店舗とは5年以上にわたってさまざまな協業をしてきた。ウォルマートでの購買のうちの実に50%はオンラインと実店舗を行き来して生まれたものである。

 

 ここで12年に導入したものをいくつか紹介したい。

 

 まず、《ペイ・ウィズ・キャッシュ(Pay with cash)》は、銀行口座を持たない人やクレジットカードなしでも、オンラインの買物を経験してもらうことができるという仕組みだ。

 現在、売上の3~5%を占める。

 

 2つめは、新しい検索エンジンの《ポラリス(Polaris)》だ。試行錯誤の段階だが、切り替えは20%まで完了している。関連キーワードを浮上させることによって消費者には関連商品を推奨し、売上拡大に導いている。

 

 3つめは、《スマートプライシング(Smart Pricing)》だ。消費者が欲する商品に最低価格をつけるとともに、迅速な価格変更ができるようになった。

 

 そして13年も新しい技術の導入を継続させる。

 

 その一例が今年の5月に立ち上げた新しいホームページ《ウォルマートドットコム(Walmart.com)》である。消費者の来店目的別に、ブラウジングや店舗などに焦点を当て、3つのタブを設けている。

 

 また、新たに《グローバルテクノロジー・プラットフォーム》を構築した。世界中の商品と世界中の消費者を結び付ける能力を持っているので、コマースのオペレーション強化を今まで以上に早く行えるようになるはずだ。

 

 さらには、《ウォルマートドットコム》の品揃えの拡大を今年初めにスタートしている。年末までに品揃えを2倍にする計画だ。これは、私たちが新しい技術を使いこなし、高速で強化にあたっているというよい例になるだろう。

 

 また現在は、「次世代フルフィルメント・ネットワーク」を構築したいと考えている。

 具体的には、店舗と配送センターという既存の資産とオンライン機能を合体するものだ。最終的には、実店舗内にコマース専用の施設を設置し、商品をピッキング、配送する体制を構築する。14年1月期末までに50店舗で稼働させる計画だ。このネットワークはウォルマート独自のものであると同時にウォルマートにしかできない、という自負がある。

 

 消費者宅から25マイル以上離れたウォルマートの店舗は、米国内ではごくわずかなので、点在する在庫を活用してオンライン事業を進める。最も難しいのは、川上にある製品を最終的な届け先がどこであろうと運ぶことだ。単純に店舗を配送拠点化するだけでなく、地域コミュニティを理解する手段としての投資でもある。

 

 さらに、今年からはアソシエイト(=従業員)がオンラインでの販売を行うと評価が受けられるようにしたい。オンラインで購入してもオフラインでもウォルマートの消費者であることに変わりはないので、店舗のアソシエイトが販売すると評価を得ることができるのは至極当然のことと言っていい。このことにより、約220万人のプロモーターがウォルマートのオンライン事業に携わるような状態になるはずだ。

 

モバイル事業にも投資

 

 次にモバイル事業についても、オンラインと実店舗と結合させていく。その過程で実店舗のみを利用していた消費者を複数のチャネルを利用する消費者に変えていきたい。

 よく聞かれるのは、「(ウォルマートのモバイル事業強化は)スマートフォンを持っている消費者にとってはよい話だね」という皮肉だ。しかし、もはや消費者の50%はスマートフォンを持っており、その数は増える一方だ。35歳の消費者では、普及率は75%にも達しているという調査もある。

 

 したがって、消費者が新しいデジタル環境に慣れるか否かという問題ではなく、スマートフォンを持つ消費者はウォルマートとつながるのだ。

 実際、《ウォルマートドットコム》にモバイルからリンクした消費者は12年のクリスマス休暇中は利用者全体の40%を占めるようになっている。

 また、ウォルマートには独自のアプリ(=アプリケーション)があるが、利用していない消費者との比較では、アプリ利用者の購入回数は2回多く、1カ月の購入金額は40%多いというデータもある。

 モバイルのみを使ってウォルマートで買物をする消費者がいることも明らかになっている。その大半は、実店舗ではなく、《ウォルマートドットコム》を利用し始めたことで、ウォルマートとのつながりを持つようになった。

 複数のチャネルを利用する顧客を創造するためにモバイルを活用するというアイデアは新しいタイプの消費者をウォルマートに連れてくるだろう。


スキャン&ゴーに期待する

 

 ウォルマートは、モバイルを介して、来店誘導につながる機能にも投資してきた。

 現状は大きく《インストア モード(instore mode)》と《スキャン&ゴー(Scan&Go)》の2つがある。

 

 《インストア モード》は、消費者の声を聞き、消費者に適応する機能だ。消費者はさまざまな場所でスマートフォンを使う。そこでウォルマートは、全4000店舗をジオフェンス(あるスポットの近くを通るとプッシュ通知する機能)に対応させた。入店すると、アプリが消費者に適した画面に切り替わるのだ。

 

 《スキャン&ゴー》は買物をしながら消費者が商品をスキャンし、最終的にはセルフレジで1回だけスキャンすれば、長時間並ぶことなく即座に精算できるというものだ。実験開始から6カ月。現在は約200店舗に展開している。消費者からは好評で、一度利用した消費者の過半数は再度利用している。

 

 この機能にはさらに投資をしたい。今年6月末にはアンドロイド版の《スキャン&ゴー》サービスを開始した。また、今夏からは《スキャン&ゴー》で映画やTV番組などの動画を購入できるようにする。《スキャン&ゴー》で自動的に動画のコピーが格納され、iPad、パソコン、テレビ、スマートフォンなどいつでもどこでも見ることができるようになる。このように最高レベルのデジタル機能に投資し、それを最高レベルの物理的資産と合体させれば、ウォルマート独自の買物体験を創造できると自負する。
 

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