再録:ウォルマート グローバルeコマース事業 CEOインタビュー(1)

2013/10/15 00:00
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最近、よくいただく質問は、Eコマースの巨人「アマゾン・ドットコム」に対して、リアル店舗網を持つウォルマートはいかに対応・対抗しているかということだ。そこで『チェーンストアエイジ』誌2013年8月1日号・15日号で掲載したウォルマート グローバルeコマース事業 ニール・アッシュCEO(最高経営責任者)のインタビューを今日から3日間にわたって掲載したい。なお、このインタビュー以後のウォルマート eコマース事業については、本日発売の『チェーンストアエイジ』誌2013年10月15日号特集「アメリカ小売業大全 2013」の中でR2リンクの鈴木敏仁代表が寄稿してくださっているので、こちらをご覧いただきたい。(談:文責・千田直哉)

 

 

年商は90億ドル

 

 私は2012年1月にウォルマートに入社した。前職は米国CBSのネット事業部門のCBSインタラクティブの社長だった。CBSインタラクティブを退社する際に関心を持っていたのは、「インターネットの進化速度に打ち勝つ術」だ。そして、巨大ではあるけれどもネットの機能が完全に効力を発揮していない企業に、この術を持ち込むことを企図していた。

 

 そんな折にウォルマートから入社の要請があった。ウォルマートは規模の面では申し分ない企業。しかも、私の望みどおり、ネットの効力を十分に発揮していなかった。

 私に与えられたのは、当然のことながら“インターネット以前”の小売のリーダーであった企業を、“インターネット以後”もリーダーにするというミッションだった。

 

 ウォルマートの創業からの51年間を振り返ると、「ディスカウントストア」を振り出しに、「会員制ホールセールクラブ『サムズ・クラブ』」「スーパーセンター」「国外進出」「小商圏フォーマット開発」などの革新を絶えず繰り返すことで成長を遂げてきた。

 

 それらは常に同じ手法だった。すなわち、物販市場において、消費者のためにできる限りの機能を構築・提供していくことだ。

 これらの機能は、他社がマネできないものばかりだった。その結果、ウォルマートは、他社ができないかたちで成長を繰り返してきた。

 

 グローバルコマース事業においても同じことを実践していきたい。グローバルeコマース事業は次なる大きな成長をもたらすエンジンであり、他社がマネできないものである必要があるからだ。消費者が変化したことに組織が気づかなければ、間違いなく出遅れてしまう。だから新しいビジョンにウォルマートを導いているのである。

 

 13年1月期におけるウォルマートのグローバルeコマース事業の年商は90億ドルに過ぎないが、対前年度比で35%超の成長率を示している。14年1月期には10億ドルの利益を計上する計画だ。次の10年でeコマースのシェアを可能な限りあげていきたい。世界で最速で進化し成長する企業になるはずだ。

 

 ただし、目標を定めると枠にはまってしまうので目標数字は出さない。

 

消費者だけの買物体験を提供

 

 グローバルeコマース事業の管轄は、ウォルマートのeコマースに関連するすべてだ。

 

 従業員数はカリフォルニア州シリコンバレーに約1500人、世界中では約2500人(米国含む)に上る。

 テクノロジー・プラットフォームの運営だけでなく、各地域でのフルフィルメント(商品の発注から決済、ピッキング、配送までのトータル業務)、マーケティング、市場開発、配送、エリア毎の品揃え、フルフィルメント・ネットワークなど多岐にわたる。

 

 これらを実現するR&D(リサーチ&デベロップメント)の拠点として、「ウォルマートラボ」(実験室:@WalmartLabs)を設けている。

 

 私たちは、eコマース事業を決して商業の一片とは考えていない。「一人ひとりの消費者に自分の好きなように独自の買物体験をしてもらいたい」というビジョンを持っている。

 

 そして現在、ウォルマートが行っているのは、1万700店舗、毎週買物する2億4500万人の消費者といった実店舗の物理的な資産とデジタルの世界の全資産を統合して、いつでもどこでもシームレスな買物体験を創造することだ。

 

 今や消費者は、卓上でのパソコン、ソファ上でのタブレット、街を歩きながらのモバイル…と自分が望むとおりのいかなる買物体験をも選ぶことができる。

 

 ウォルマートの“店”に来店してもらえれば、そのいずれも可能になる。私たちが届けたいのは、他社のどこにもない消費者自身が選んだ消費者だけの買物体験だ。
 

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