清水信次さん流「総理大臣とCEOの共通点」

2012/02/24 00:00
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 ご存知のように、CEOとは、chief executive officerのこと。邦訳では最高経営責任者という。

 経営実務に責任と権限を持つ役職なので会社の中では最も「偉い」存在。そのCEOに加えて、代表取締役会長も兼務しているライフコーポレーション(東京都/岩崎高治社長)の清水信次さんは、名実ともに同社のトップマネジメントと言える。

 ところが、昨日(2月23日)開かれた「ライフコーポレーション 2012年度経営方針発表会」(@ベルサール秋葉原)では、経営の話題には一切触れずに次のようなことを話していた。  ちょっと長くなるが、耳を傾けてみよう。

 

(以下、清水さん談:文責・千田直哉)

 先々週、野田佳彦総理大臣に呼び出された。

 日本チェーンストア協会(東京都)や国民生活産業・消費者団体連合会(東京都)の会長として、消費税増税や短時間労働者への厚生年金適用拡大などに反対する“総大将”である私の意見が聞きたかったらしい。

 

 私は総理官邸に行って20~30分話をしたところで、真意は伝わらないと考え、この要請をお断りした。

 すると日曜日に2時間空けますので会ってもらえないかと返事があった。総理大臣にそこまで言われて行かないのは、さすがに失礼なのでホテルオークラの「山里」でお会いすることにした。

 

 結局、その日は17時30分から20時まで2時間30分以上にわたる会食になった。たぶん、ご馳走になってしまうだろうからと、吉田茂元総理大臣の揮毫をお土産として持っていった。

  揮毫は孔子の論語にある「君子和而不同」(君子、和して同ぜず)。「君子は他人と調和はするが、他人に媚びたり流されたりしない」という意味だ。

 

 それはさておき、その時に私が野田総理大臣に申し上げたのは、総理大臣とは「将の将たる器」なのだから、各省大臣が担当しているような細かいことにいちいち口や手を出してはダメだということだ。

 総理大臣は泰然自若として動かず、自分が任命した20人弱の各省の大臣が全権を持って、一生懸命やっているのかどうかを見守り、また大臣から意見や助けを求めてきた時には出て行くものだと――。

 

 そのことは、吉田茂、岸信介、鳩山一郎、池田勇人、佐藤栄作、福田赳夫、中曽根康弘といった歴代名宰相を間近に見てきて私が経験的に感じていたことだったので率直に申し上げた次第だ。

 

 ところが、ここまでの民主党はどうだったろうか?

 

 政権を奪取したまではよかったが、鳩山由紀夫元総理大臣は普天間基地移設問題で外務大臣か防衛大臣がやるような仕事に手を出し口を出し対米関係がおかしくなり辞任せざるをえなくなった。

 続く菅直人前総理大臣も3月11日の東京電力福島第一原発事故後に視察と称して自らが動き、福島に行き、顰蹙を買い、さらには東京電力本社に乗り込み緊急対策本部を設置した。そんなことは担当大臣の業務であって、総理大臣の仕事ではない。

 

 そして野田総理大臣には、これからの日本の政治は、あなたの双肩にかかっているのだから、あなたは天下国家を相手に動くべきで個別案件にかまっていてはいけないと申し上げた。

(以下、省略)

 

 さて、この挨拶の最中、最前列に並んで座っていたのは、ライフコーポレーションの岩崎高治社長、幸英樹首都圏生鮮・食品本部長、森下留寿首都圏衣料・生関本部長の3人――。
 

  聞いていて感じたのは、清水さんの挨拶は、どうやら同社3首脳に向けてのメッセージではなかったかということ。演説の総理大臣の部分をCEOに置き換えれば、その意味するところは理解できる。

 

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