『サブスクリプション・マーケティング モノが売れない時代の顧客との関わり方』
アン・H・ジャンザー(英治出版/1700円〈本体価格〉)

2018/08/01 00:00
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サブスクリプション・マーケティング

 上記の「流通最旬キーワード」でも取り上げたサブスクリプションが急拡大している。本書によると、2012年から16年のサブスクリプション・エコノミーの売上高は米国小売業全体の成長率の4倍を超えるという。

 本書は、この急拡大を続けているサブスクリプションがどのようにして広がってきたのか、実際に参入するにはどうすればよいのかなど、実践例を上げながら網羅的に解説している。

 サブスクリプションはIT分野のクラウドサービスから始まった。米セールスフォース・ドットコムがその道を開き、米マイクロソフトや米アマゾンなどが追随した。

 小売業にその波をもたらしたのは、アマゾンだ。会員制サービスの「Amazon Prime」は当初、配送料が無料になるサービスで、リピーターを獲得するためのものだったが、会員をつなぎとめるために、音楽配信サービスなどのコンテンツを拡充したり、利便性を追求することで価値を付加し続けている。

 サブスクリプション・マーケティングを考える際、既存のビジネスと違って重要な点として、「売上高だけでなく、顧客維持率(チャーンレート)に注目しなければならない」ことを本書は指摘する。契約成立がゴールではなく、顧客が続けて利用したいと思う価値を育成する必要があるのである。

 サブスクリプションは、「所有」ではなく「利用」を共有するシェアリングエコノミーの拡大や、スマートデバイス、IoTの普及など、今後も広がり続ける要因が複数ある。「モノを売る」というビジネスのかたちが変わりつつある今、新たな有力なビジネスモデルの1つとして、サブスクリプションに注目する必要があるだろう。

(『ダイヤモンド・チェーンストア』2018年8月1日・15日合併号掲載)

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