ホーム   特集&連載    DRMオンライン・ピックアップ    ダイヤモンド・チェーンストアThe Interview 
記事タイトルバナー

第160回

2017年12月1日

ビール1本から1時間枠で無料配達
唯一無二のビジネスモデルを磨く! 
カクヤス 代表取締役社長 佐藤 順一

DIAMOND Chain Store

B to Bウェブサイトで営業活動を効率化

──17年度の重点施策は何ですか。

 

佐藤 一元物流センターのスムーズな稼働、そして法令遵守を徹底することです。

 

 価格改定時に行き届かなかったのが、取引先の飲食店さんに対して十分な告知ができなかったことです。当社は4万5000軒の取引先を持っています。営業マンは150人ですから、1人当たり300件の取引先を担当していることになります。直接足を運べない取引先に対して文書で案内をするのですが、価格改定を文書で伝えるだけで果たしていいのかという問題意識が営業部の中にありました。

 

 こうした営業面のさまざまな課題に対応するため、昨年B to Bウェブサイト「なんでも酒やカクヤスナビ」の開発に着手しました。飲食店のお客さまがIDとパスワードでログインしていただくと、注文はもちろん、仕入れの状況のほか、商品情報やキャンペーン情報などを閲覧できるサイトです。

 

 11月から試験的に運用し、来年1月くらいに本格稼働に移行する予定です。これまで足を運べなかったお客さまにさまざまな情報を提供できるようになります。これはわれわれの大きな武器になると考えています。

 

──取引先の新規開拓にはどう取り組んでいますか。

カクヤスでは売上の3分の2を業務用が占める。今年10月に開催した酒類展示会「KAKUYASU DEXPO2017」。飲食店関係者3000人が来場した

 

佐藤 われわれは約4割の「間口シェア」があります。都内には11万軒の酒類を扱う飲食店があるといわれていますから、そのうち4万5000軒の取引先があるということは、4割くらいのシェアになります。ただ、取引先は全商品をカクヤスから購入されているわけではないので、売上にするとそこまでのシェアはありません。ですから、飛び込みセールスをしたら、すでに当社の取引先だったということもあります。しかし、11万軒すべて社内システムに登録すれば、取引先ではない飲食店さんに案内ができるわけです。登録していないお客さまがわからないという状態を解消し、全店登録したうえで、情報を持った効率のよい営業活動に取り組んでいるところです。

 

──商品政策で力を入れていることは何ですか。

カクヤスは利益率の高いPBを増やし、収益改善につなげようとしている。写真は今年10月10日に新発売したオリジナル新ジャンルビールの「グランリッチ」

 

佐藤 数十アイテムあるプライベートブランド(PB)を増やしていきたいと考えています。当社のPBには「価格対応型」と「商品軸型」の2つのタイプがあり、ワイン、焼酎、飲料、水などすべての商品カテゴリーで開発を強化しています。当社の販売先に業務用と家庭用があるため、飲食店向けにはラベルや商品名を変える対応をする配慮もしています。

 

 売上高販管費率は、業務用酒販店が平均14.5%であるのに対して当社は16.5%です。これで戦っていかなければならないことを考えると、ローコスト経営が大事になりますし、利益率の高いPBの取り扱いを増やすことが必要になります。ナショナルブランド(NB)で粗利益率20%に対して同種のPBが30%であれば、多少売上が少なくてもPB化したほうが利益は残ることになります。

 

1時間枠での配達を生かす、自社ECは都内に特化

──拡大するEC(ネット通販)にはどう対応しますか。

カクヤスは東京都内を中心に1時間の指定時間枠内に配達を可能にする店舗網を築いている

 

佐藤 EC側に支払う手数料コストがかかりますから、EC直販に対して不利になります。運賃も当社で負担していますが、改正酒税法を遵守していくと赤字販売になりかねません。

 

 当社の物流網が出来上がっているエリアでは1時間枠で、運賃をかけずに商品を配達できます。しかし、当社の物流網のないエリアでは運賃がかかりますし、EC側に手数料を支払わなくてはなりません。ですから今後は、物流網を持つ都内に特化していく方向です。自社ECも1時間枠での配達を生かした戦略をとっていきます。改正酒税法は売り方にも大きな影響を与えているのです。

 

──流通業界では人手不足が深刻化しています。どのように対応していますか。

 

佐藤 店舗から商品を届ける宅配のアルバイトが採用しにくくなっています。業務用の物流要員はすべて正社員で、それは確保できています。しかし、店舗の配達要員はアルバイトが多く、時給1500円でも確保するのが難しい状況です。そこで今後はアルバイトを正社員化していこうと考えています。正社員化すれば戦力になります。

 

 一方で、全国から高卒の正社員採用を増やしています。ただ実際のところ採用は苦戦しており、今年は目標の100人に対して80人ほどしか採用できないようです。ビールメーカーもそうですが、高卒の採用を増やしている上場企業が多く争奪戦になっているからです。そのため、採用面で非上場であることがデメリットになる可能性があります。そういう意味で当社は現在、株式上場をめざしているところです。

 

──年商1000億円規模に成長できた要因は何ですか。

 

佐藤 業務用と家庭用の両方を手がけたこと、人口の密集した東京都23区に限定したこと、それとライバルが出てこなかったことです。酒類に特化して配達を武器に自社物流で、EC、業務用、家庭用をぜんぶ取り込もうと戦略を描いた会社は出てきませんでした。「ビール1本から1時間枠で無料配達します」というフレーズはお客さまに響いたけれども、「うまくいくわけがない」と同業他社にも響いたと思います。だからどこも参入してこなかったということでしょう。

 

──中長期の成長戦略をどう考えていますか。

カクヤス 代表取締役社長 佐藤 順一

 

佐藤 価格訴求が“禁じ手”になってきていますから、M&A(合併・買収)が重要になってくるでしょう。対象企業は同業をはじめ酒類業界を考えています。

 

 今は価格で戦えなくなったと言いながらも、同じ価格であれば勝ち目はあります。配送の時間指定ができますし、営業マンの質も高いからです。われわれは単に届けているのではなく、販売をしているという面があります。玄関先を売場と考えれば、接客が必要になります。これは宅配会社の配送員ではできないことでしょう。業務用と家庭用の両方を持つのも強みです。今後これをどう連動させていくかもテーマになってきます。

 

 売上高でめざすのは3000億円です。酒類だけでは難しいため、それ以外の食品などを取り込んでいくことになるでしょう。

 

 

DRM online 関連記事

Special topics