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2017年11月1日

『奇跡のスーパーマーケット』
ダニエル・コーシャン、グラント・ウェルカー共著 太田美和子訳
(集英社インターナショナル/1800円〈本体価格〉)


 会社はいったい誰のものか──。旧松下電器(現パナソニック)の創業者の松下幸之助は「企業は社会の公器」と述べた。競争戦略論の大家であるマイケル・ポーター氏は、企業は「社会と共有できる価値の創出(Creating Shared Value)」をめざすべきと説く。

 

 本書はこのテーマに対して、今年創業100周年を迎えた米北東部の中堅スーパーマーケット・チェーン、マーケット・バスケットで起きた、とある事件から迫る。

 

 3年前の夏、同社の取締役会がCEOを解任したことに対し、2万5000人の従業員が「CEO奪還作戦」を決行した。計画に賛同した200万人の利用客が不買運動を起こし、取引先が納品をストップするという異例の事態が起こった。本事件の成り行きは連日全米に報道された。

 

 最終的にCEOを復帰させることに成功したこの抗議運動を舞台に、その原因・過程・結果を語るだけでなく、この運動の成功要因を解説したのが本書である。

 

 米国3州でスーパーマーケットを展開するマーケット・バスケットは、「低価格によって地域の人々の生活水準を引き上げる」ことに貢献してきた。利益を追求するだけでなく、「社会の公器」としての役割を存分に果たしてきた同社は、いつの間にか地域社会になくてはならない存在になっていた。

 

 マーケット・バスケットの従業員・消費者・取引先は、CEOの人柄を熱烈に支持して反対運動を起こしたのではないという。これまで培われてきた「マーケット・バスケットという企業のあり方」を死守しようと立ち上がったのである。そして、株主以外のステークホルダーを無視した新経営陣の経営方針に決然と異を唱えた。

 

 抗議運動中の彼らのスローガンは「我々がマーケット・バスケットだ!」。企業は株主だけのものではなく、従業員・消費者・取引先・地域社会のものでもあると、このスローガンが強いメッセージ性を持って語りかけてくる。

 

(『ダイヤモンド・チェーンストア』2017年11月1日号掲載)

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