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2017年10月18日

第2回
不測の事態への対応策を考えていますか?

 北朝鮮の発射したミサイルが8月と9月の2度にわたり日本上空を通過した。東日本を中心に全国瞬時警報システム(Jアラート)が発動され、読者の多くが驚かれたことであろう。北朝鮮のミサイル発射をはじめとする不測の事態に対し、小売企業の経営幹部はどのように備えればよいのだろうか。事業継続計画(BCP)の観点から、経営幹部は不測の事態においても適切な経営判断を行う必要がある。経営を安定化させ、持続的発展を実現するには、対応策の検討と継続的な訓練が必要だろう。

 

 そこで今回は、小売企業の経営に影響を与える不測の事態の例として、大地震、金融危機、消費悪化について考えてみよう。

 

 まずは大地震だ。2011年3月に発生した東日本大震災の爪痕は現在も深く残っている。死者は1万5000人を超え、店舗閉鎖や事業撤退に追い込まれた小売企業が数多く見受けられた。一方、被災した人々に食料品や消費財を提供した小売企業やメーカーには、感謝の言葉が多く寄せられた。

 

 東日本大震災後の経済情勢を冷静に見ると、震災発生直後は景気が悪化したものの、翌年は拡大に転じている。11年4~6月のGDPの成長率は対前年同期比0.7%減、7~9月も同0.4%減だったが、翌12年の1月~3月、4~6月はいずれも同2.9%増。株式市場の下落期間も半年程度と短く、その後は急反発しているのである。1995年1月の阪神淡路大震災の際も、発生翌年の96年1月~3月のGDP成長率は同4.1%増となっている。

 

 企業の中には復興需要に事業チャンスを見出し、収益を拡大させた例もみられた。つまり、大地震が発生した場合は、最初の6~8カ月を乗り越えられれば、経済的利益を得られる可能性があるのだ。

 

 次に、金融危機も企業経営に大きく影響する。金融危機が起きると、銀行や証券会社の経営が厳しくなり、事業会社は資金繰りが難しくなるためだ。不動産の価格が下落すれば、店舗の減損処理は増加し、担保価値は悪化する。多額の有利子負債を抱える企業は要注意だ。

 

 百貨店のように売上が株価に左右される業態は、株価の動きも重要だ。過去30年で日経平均株価が50%程度急落したことが3回ある。90年の不動産バブル崩壊、01年のITバブル崩壊、そして、08年のリーマン危機だ。それ以外にも、景気悪化などをきっかけに金融危機は何度か起きている。日本は今後、東京オリンピックに向けて景気が過熱すると見られる。バブルとその崩壊には注意が必要だ。

 

 そして、消費悪化である。過去10年間、日本の消費は総じて厳しかった。消費支出は、リーマン危機後の09年1月に前年比5.9%、東日本大震災が発生した11年3月に同8.2%、消費増税翌年の15年3月には同10.6%、それぞれ減少している。

 

 ただし、消費悪化は長期化するとは限らない。政府が大型景気対策を打つからだ。リーマン危機の際は麻生政権が94兆円、東日本大震災発生時は菅・野田政権が60兆円、消費増税時は安倍政権が3兆円を、それぞれ景気対策に投じた。対策規模が小さかった増税時を除くと、対策から半年後には消費が回復し、その効果は1~2年継続した。

 

 19年10月に消費税率が10%に引き上げられる予定だ。前回の増税時に消費支出が約10%減少したことを踏まえれば、小売企業は19年度の予算を慎重に組む必要がある。また、消費回復の勢いを予測する上では、景気対策の規模にも注意を払う必要があるだろう。

 

 以上、今回は不測の事態の歴史を振り返ってみた。経営幹部は、歴史から不測の事態への対応を学び、経営に生かさなければならない。自社ならではの、不測の事態の想定と対応策を練ってみてはどうだろうか。

 

経済に大きく影響を与えた不測事態の例

大地震
(マグニチュード7以上)
金融危機
(日経平均株価が50%程度急落)
消費悪化
(消費支出が5%以上減少)
83年 日本海中部
95年 阪神淡路大震災
11年 東日本大震災
90年 不動産バブル崩壊
01年 ITバブル崩壊
08年 リーマン危機
09年 リーマン危機
11年 東日本大震災
14年 消費増税

出所:リンジーアドバイス

 

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【著者プロフィール】

株式会社リンジ―マネジメント
代表取締役社長 渡辺林治

宮城県出身。慶應義塾大学経済学部卒。MBA(UCLAアンダーソン)、小売企業の持続的成長の仕組みを統計分析で解明し、慶應義塾大学から博士号を授与。野村総合研究所とシュローダー投信投資顧問を経て、2009年にリンジーアドバイス株式会社を設立。機関投資家の立場で27年にわたり、国際金融予測、企業評価、戦略助言を継続。東日本大震災、2020年のオリンピック東京開催決定、アベノミクス、トランプ氏大統領当選など経済変動の転換点において、その後の景気・為替・株式の動きを予測。現在、上場企業トップ、財務・企画責任者を主な対象に、経営財務の助言と投資顧問を行う。アスクル、自重堂、カワチ薬品など上場企業で社外役員も現任。数々の経済変動を予測し、企業の維持発展に寄り添っている。

【おもな著書】

『 小売企業の成長と内外部接合要因 百貨店と食品スーパーの実証研究を中心に』
(慶應義塾大学)
『 流通企業の繁栄と戦略 環境変化・百貨店・スーパー』(千倉書房)
『 DIAMOND流通選書 この指標がわからなければ幹部になってはいけません』
(ダイヤモンド社)

 

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