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2017年9月7日

ダイヤモンド・リテイルメディア・フォーラム2017開催レポート
IoT・AIで進化する小売業の成長戦略ビジョン
パーソナライゼーションで「顧客体験価値」向上を実現

【特別講演】

パルコの“個客”体験価値創造を目指すICT戦略
~AI・IoT活用によるデータ分析の進化~

顧客の満足度アップをITで目指す接客「拡張」戦略


株式会社パルコ
執行役 グループICT戦略室担当
林 直孝 氏

 

 全国にショッピングセンターを展開するパルコ。商品を持たない商業施設として重要なことは顧客の満足度アップである。一人ひとりの顧客=“個客”とショップがコミュニケーション可能なオムニチャネルプラットフォームの構築によって、接客LTV(ライフタイムバリュー)を最大化することである。ECでもリアル店舗でも、「POCKET PARCO」アプリやIoTの活用によって“個客”の関心や満足度を洞察して最適な「接客」の実現を目指す。様々なマーケティングデータを分析・活用し、来店および購買促進施策を効果的に展開しているパルコの戦略を紹介する。

 

オムニチャネルなPARCOを実現した「24時間パルコ」

株式会社パルコ
執行役 グループICT戦略室担当
林 直孝 氏

 商業施設であるPARCOパルコの重要な仕事は、出店していただいているテナントと顧客のコミュニケーションを推進することで、売上拡大を支援することである。それは、店舗の売上は顧客LTVの和であり、テナントの売上はテナントスタッフの接客LTVの和という考えである。この考えに基づき実践してきたのが「24時間パルコ」である。「いつでも、どこでも、テナントショップスタッフとお客様がコミュニケーション可能なオムニチャネルプラットフォーム」として、システム構築が行われてきた。

 

 そのキーワードが「接客の拡張」である。Web接客においては「来店前から接客はすでに始まっている」という仮説から、スマホを利用した戦略を行った。第1弾は、ショップブログを基点とした商品/接客情報の拡充を開始。その結果、ブログで紹介した「商品を買いたい」とか、「取り置きをして欲しい」という要望が多く寄せられた。それを受けて第2弾として、ショップブログページを基点とした商品の取り置き、購入サービス「カエルパルコ」を開始した。全国約300ショップの「スタッフおススメ商品」が、いつでも、どこでも注文可能となったことで、売上拡大にもつながっている。

 

カエルパルコのVR版も実験開始

 2014年度から開始した「カエルパルコ」の15年度の実績を見てみると、リアル店舗での商品購入は18時頃から20時頃が多く、カエルパルコのネット注文は17時から翌朝の10時までの時間帯で全体の約40%に達しているという時間帯別の購買行動を把握できた。店舗の閉店後での売上が確保できている。また、注文エリアで見てみると、広島店を例にとると、県内はわずか12%であり、残りの88%は北海道から沖縄まで全国の他エリアからの注文であった。

 

 このように、仮説段階では考えられない結果を得られたことから、今年の春には店舗内で買物を楽しめるようなバーチャルショッピング体験を提供できる「VR PARCO」の実験を行った。PARCOがない地域の顧客にもより一層、PARCOでの買物を楽しんでもらうための施策として検討をしている。

 

 さらに、「カエルパルコ」の進化として、今年の秋からテナントの在庫情報と商品情報とのデータ連携により、店舗スタッフの作業を大幅に効率化するシステムも導入する。いままで、スタッフが確認し、手動で入力をしていたものを自動化。お客様の利便性につながるだけではなく、スタッフやテナントの作業の簡素化・効率化も実現できるシステムとなっていく。

 

顧客を“個客”として捉えるコミュニケーションへ

 「顧客の拡張」の第3弾は、まさに“個客”への対応である。15年3月から全国展開をはじめたスマートフォンアプリ「POCKET PARCO」のコンセプトは、ずばり「あなただけのパルコが、ポケットに」である。一人ひとりのお客様を把握し、「一人ひとりのお客様別々な情報・最適な提案」を伝えることで、ロイヤル顧客化のためのツールとなっている。

 

 「POCKET PARCO」を開発したことで、「接客の拡張」に不可欠である、データの可視化による顧客行動分析・パーソナライズが可能となった。お客様をさらに詳しく知らなければ「顧客満足」を高めることはできない。そこで、クレジットカードやプリペイドカードとアプリを連動することで購買行動を把握。さらに、行動把握の精度を上げるために、来店前と来店中、来店後までを統計的に分析・把握できるシステムとした。来店前に行う店舗スタッフのブログ記事の閲覧やお気に入り登録、商品検索の行動(Clip)を把握。来店中には、チェックイン(Check In)や接客・購入(Conversion)で把握。来店後は、アンケート形式でサービス評価(Star rating)を行ってもらう。この一連のデータを分析したところ、ブログ記事を10回Clipした人は、50日以内に1回の買物が発生している。50Clipを越えた人はさらに来店のサイクルが短くなり、来店頻度もアップする傾向にある。さらに、詳しく分析すると、前週に記事Clipやチェックインという行動を行った人は、していない人に比べて翌週の購買行動が1.35倍となり、同様にサービス行動評価を行った人はしていない人に比べ翌週の販売行動が1.11倍となることがわかってきた。

顧客行動の可視化につながる来店前後の行動把握
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「オムニチャネルメビウス」による個客LTVの拡大を目指す

 2016年から、「POCKET PARCO」に人工知能(AI)を導入。その狙いは、ブログ記事のレコメンデーション精度の向上と、ユーザー毎にパーソナライズされた情報接点を拡大することで、来店と買上の促進である。AI導入により、1000Clip以上のブログ記事数が飛躍的に増加。AI導入前と比較するとClip数は17%増で、アプリ利用者の売上も18%も増加した。

 

 スマホならではの強みを生かして、エリアターゲティングプロモーションも実施。これは、パルコ店舗の商圏内に来たユーザーを対象に、セール告知を実施したところ、来館・購入したユーザーは24%となり、チェックインプレゼントとして期間限定で1チェックインにつき500コイン(通常の5~50倍)をプレゼントしたところ、チェックイン数は、前週比で15%アップした。

 

 来店後の評価も見逃せないものになっている。テナントスタッフの接客満足度を可視化し、ショップごとにフィードバックしている。高評価は、スタッフのモチベーションアップとなり、低評価は、改善につながる。それぞれ、可視化できることで、具体的な意識改善に有効な施策となっている。

 

 お客様の行動データのなかで、満足度アップにつながるのは、来店中である。来店中にプッシュ通知で優待券進呈企画を実施すると、買い回り回数が増えるという結果も得ている。

 

 新しい取り組みとしてはIoTを活用した各種センサーやWi-Fiデータの分析活用である。屋上のセンサーで雨天を検知したら、「雨の日特典」を自動配信するシステムなども取り入れている。

 

 さらに、ロボットの活用を実験するなど、「24時間PARCO」のオムニチャネルプラットフォームは、リアル店舗で行う接客の輪+Webを通じて行う接客の輪を行き交う(無限)ループ「オムニチャネルメビウス」による個客LTVの拡大を促進している。

パルコが推進する個客LTVの拡大を表す「オムニチャネルメビウス」の図
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