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2017年8月30日

小売業のデジタルトランスフォーメーション
進化する顧客起点のデータ分析・活用戦略の最前線
加速する流通業のデータ活用の成功事例

業務改善と生産性向上を支えるテクノロジー活用事例

~データの収集・分析で「お客様目線」を磨く~


株式会社 ベイシア
執行役員 流通技術研究所 所長
重田 憲司 氏

 

 デジタルの最新潮流としてIoTやAIに注目が集まっている。しかしITはそれをどう使うかで効果を発揮することもあり、また計画性が無ければ無駄な投資に終わる可能性もある。検討しているだけではチャンスを逃す可能性も高い。デジタル活用によりどのように課題が解決されるのか、確かな方針を立ててスピーディに実行することも重要になる。解決すべき課題をはっきり捉えられていれば、それだけデジタル活用による効果も大きい。

 

現金管理業務の機械化、自動化で効果

(株)ベイシア 流通技術研究所所長 
重田 憲司 氏

 ベイシアでは「商業の工業化」を標榜している。チェーンストアとしてロープライス販売をコンセプトとしているが、そのためにはローコストオペレーションを実現する必要があり各作業の生産性を向上しなければならない。それを可能にするための課題は、自動化と機械化、そしてIT化の3つだ。

 

 店舗作業の効率化は、まず商品陳列の効率化、それから什器の有効利用などクレンリネス、自動化による発注と補充の効率化、セルフレジなどの導入によるチェックアウトの効率化とミスの防止、バックオフィスも機械化と自動化による省力化やミスの防止を図っている。

 

 効果を挙げた実例として、現金管理業務には自動釣銭機とともに入出金機を取り入れデータ連携も図った。現在はレジから入出金機で売上金入金・釣銭データ、金種別有高データ、項目別入金データ、操作ログを蓄積。本部それをもとに現金過不足、金種別有高情報、入出金履歴、操作ログを把握するなど現金一括管理に取り組んでいる。

 

 こうした現金管理業務に自動化を取り入れたことで、売上金管理や精算業務の標準化が図れたこと、店舗金庫内現金を全体で2億円削減できたこと、伝票計上作業もWeb発行の徹底による作業を不要にした。また、そうした管理ができたことでパート・アルバイト社員の入社日を統一して各店の人員のばらつきを是正できた。これにより削減効果は、年間約3万6000人時にのぼる。

 

「何を解決するのか」「なぜ導入するのか」

 IT導入による業務改善は、まず目的や目標をはっきりさせること。そして業務を変えるためにITも変わっていき、それを定着させるというサイクルになる。IoTやAIも同様だ。重要なことは「何を解決したいのか」「なぜ導入したいのか」と目的を明確にすること。それができなければ行き詰る。しかも定着させるというハードルは高い。期待値が大きくて、「何かができるのではないか」「なにかがわかるのではないか」というのでは目的に対してKPIが明示できない。つまり費用対効果が説明できずに導入は難しい。風呂敷を広げるのではなく、対象を絞り込むということも必要だろう。欧米では機会損失、つまり「やらないことによる不利益」を重視するが、日本の場合、いろいろなリスクを考えることが多すぎて、結局「やらない」という選択をしがちだ。

 

 そんな中で当社が取り組んでいることのひとつに、レジ待ちの解消があげられる。当社では「レジ混雑予測システム」を現在2店舗で導入している。なかなか認知されなかったが、1店舗目をPOC(概念実証)だと考えて、ようやく2店舗目に進んだ。導入の背景にあるのは、スーパーでのクレームワースト3の中で最も多いのが「レジ待ち」であり約3割を占めているという事実。レジ待ちでストレスを感じることは多く、店舗のイメージも悪化する。ベイシア前橋モール店を例に挙げると、平均買い上げ点数が20点超、会計人数が毎時31人、買い上げ点数の合計が618点となる。買い上げ点数が非常に多く、通常でも他社よりレジ待ち時間が長くなりがちで、それをどう効率化するかが大きな課題だった。

 

レジの混在を予測してスピーディに対応

 レジで「お客様を待たせないことが第一」であることに変わりはない。そのために自動釣銭機を導入しセルフレジも導入した。さらにレジ前司令塔係を配置し、スタッフの多能工化も図ってきた。問題を正確に把握し解決するために取り組んだことは、レジ混雑状況の可視化や混む前にレジを開けること、チェッカー業務の効率化、適切なレジ稼働計画の策定と運用、それから施策の効果測定とそれに対応した行動だ。

 

 レジ待ちを解消する施策として、まず取り組んだのが「混んだら開ける」ではなく「混む前に開ける」。当社の基準として「1+2」を置いた。これは商品登録をしているお客様1人に対して2人が精算を待っている、という状況。これで待っている時間が3分程度になる。まずベイシア佐倉店に導入している。実際に並ばない状況が自然に行われている。

 

 システム導入前、この店舗では有人POS23台、セルフレジ6台であった。月間のチェッカー労働時間は6270時間という状況。調べてみるとウィークデーは時間帯によって1人以下しか待っていないケースが意外と多いことがわかった。そこはレジを開けすぎていて、生産性が低いということになる。これが日曜日になると逆で、どのレジも3人以上待っている状況が当たり前だった。

 

 混雑して来ると、取り掛かっている仕事を止めて応援に入らなければならない。これではうまくいかない。この頃は平均待ち時間は145秒で最大待ち時間は344秒、つまり約6分だった。

 

レジ混雑予測システムのしくみ
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混雑予測による適正化
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当初は戸惑うが運用が定着で効果を発揮

 そこでPDAに予測表示を送りレジ開閉の指示を行う仕組みを取り入れた。ベースは当日の入店客数や現在のレジ待ちの状況、それから過去の傾向など。そうしたデータから15分後に備えて「今」必要なレジ台数を予測。さらに30分後に必要なレジ台数も表示するなど、レジ待ちが長くなる前に準備をしておくようにした。そうした指示は「レジ前係」が常時持っているPDAに表示される。

 

 そうした準備をしても指示通りに動けなければ、レジが不足したり無駄に開いている時間が出てきたりということがあった。運用が定着することでレジ待ちの解消につながり、運用開始前に1日6140人の客数に対して「1+2」の達成率が70%だったのに対し、運用後は6113人の客数に対して達成率82.4%でレジに3組以上待たせている状況が大幅に減少した。これにより実際にお客様の待ち時間の減少という運用上の改善効果に加えて、チェッカー人時売上向上、改善効果をデータで把握するなど見える化も実現できた。

 

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