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2017年8月24日

独自のアイディアで市場優位を獲得する
成功する“あの小売”のデータ活用術
デジタルデータの可能性を拡げる、新たな価値の創出へ

顧客行動を可視化
MUJI passportで実現するデータ活用戦略

顧客接点を最大限に生かし、顧客行動の可視化を実現


株式会社良品計画 Web事業部 システム担当課長 山際 高志 氏

 

「無印良品」ブランドを展開する良品計画は、小売業界でいち早くデジタルマーケティングに取り組んだ企業としても知られている。積極的にデータ活用を推進している同社が、顧客理解とコミュニケーション促進のために活用しているのがスマートフォンアプリ「MUJI passport」である。単なるポイントアプリとは一線を画すコンセプトで開発されており、ユニークな存在としているものが、顧客行動の可視化である。同時に、ECとリアル店舗における相乗効果もアップする同社のデータ戦略を紹介いただいた。

 

ECと店舗、そして顧客との関係構築に着目

株式会社良品計画 Web事業部 システム担当課長 山際 高志 氏

 「無印良品」のデジタルマーケティングの歴史は、2000年のネットストア開設にはじまる。当時は、店舗とECは別のものと考えており、ECは店舗が近くにない消費者のための販売チャネルと考えていた。コンスタントにアクセスはあるものの、ECの売上が思うように伸びないのはなぜだろうと考えていた。

 

 その理由を調査することで、ウェブへの来訪動機が判明した。来訪動機の1番目は「買物前の商品チェック」であり、「新商品のチェック」や「キャンペーン情報を見る」「店舗情報を見る」が主なものであり、来訪者の全員が購買のために閲覧しているわけではなかった。そのことに気づき、2004年から戦略を転換して、ネット会員への割引クーポンの配信やプロモーションの告知をするというO2Oの施策を開始した。販促効果はあったものの、それは局所的・部分的な範疇でしかなかった。また、店舗の売上に直結したかどうかを検証することもできなかった。

 

 そこで、店舗とECがそれぞれの短所を補い、相乗効果を高める施策と顧客との良好な関係構築に着目した新たなステップへ進んでいくこととなった。

 

顧客の購買行動を可視化する「MUJI passport」

 スマートフォンの登場により、顧客行動は大きく変化した。SNSで商品などの情報を得て、ウェブでその商品をチェックして、店舗へ行き、購入する。そして、SNSにレビューを投稿する。このように、SNSからウェブ、ウェブから店舗、そしてまたSNSへという動き方である。しかし、従来の方法では、POSデータによる売上やクーポン利用件数などの数値的なデータは把握できるが、誰がどのような経緯をたどって来店したのか、購入後の行動や商品の満足度などの情報を得ることはできなかった。

 

 そこで登場したのが、スマートフォンアプリ「MUJI passport」である。ネットと店舗の区別なく「無印良品」のファンとのコミュニケーションを図り、持続的な来店客数増による売上アップを促進し、さらに、マーケティング施策効果の可視化を主な目的にしたアプリである。

 

 「MUJI passport」の機能の1つに、ポイントプログラムの「MUJIマイル」がある。この「MUJIマイル」は、店舗やネットでのショッピングだけでなく、レビューへの投稿や、「ほしい!」「持ってる」ボタンによるクチコミの拡散、店舗周辺でのチェックインなど、さまざまなシーンでポイントが貯まるように設計されている。チェックインでは、位置情報から顧客の生活圏が把握でき、欲しい商品や購入履歴を見ることで、嗜好がわかる。行動に付帯するさまざまな情報を分析することで、より顧客理解が深まる。商品の購入前、購入中、購入後の行動を含め、顧客の購買行動を可視化できる。このデータを分析、検証することで、データそのものに価値が生まれてくる。

 

仮説から検証へ。データがあるからPDCAに貢献

 「MUJI passport」のダウンロード数は、2017年5月現在で900万人を超えて1000万人に迫る勢いである。末端数は約660万台で、月に1回以上アプリを起動しているアクティブ数は200万人から300万人の間で推移している。

 

 店頭レジで「MUJI passport」を提示するのは約30%であり、売上比率の40~50%を占めている。

 

 この「MUJI passport」によって、POSデータではわからない顧客分析を行っている例としては、キャンペーンにおけるプロセスでの検証が挙げられる。キャンペーン情報の発信時における「リーチ」、その共有に関する「シェア」と「リーチ」、商品チェックの「確認」、そして「購入(+参加・評価)」とそれぞれの段階でデータが確認できる。「MUJI passport」内の商品やイベント情報を発信する「from MUJI」は、アプリ内においてアクション数が最も多いことから、今では、メディア化していると考えられる。顧客の情報ツールとして、コミュニケーション機能を担っているといえるだろう。さらに、イベントやワークショップというコミュニケーションの場に参加している顧客は、来店頻度や購入金額が、非参加者よりも高いというデータも得られている。

 

 膨大なビッグデータを持っていても、その扱い方がわからない。しかし、「MUJI passport」の活用のように、仮説を立てて、実施し、そのデータの分析、検証をすることで、正確で迅速なPDCAが可能となっている。

 

ITやデジタルデータに詳しくない人も簡単に使えることが重要

 「MUJI passport」は、来店前の商品検索、検討、購買、コミュニティーへの参加など、あらゆるシーンで、シームレスに活用できる。店舗とECの区別なく顧客経験価値を高めることに貢献できている。

 

 そのために、あらゆるデータを取ることが可能となっている。アプリを立ち上げた位置情報からわかる店舗別の商圏分析、マイルサービス利用による店舗別の利用状況と競合他店でのアプリユーザーの動向、店舗在庫の確認による行動把握など、顧客視点に立ったマーケティングを可能としている。

 

 さらに、誰もが活用できることが重要である。分析データは、ITなどに詳しくない担当者にも使えるように操作を簡易化・簡略化することが必要である。多くのスタッフでデータを共有するには、クラウド利用が望ましい。いろいろなデータがあるから、いろいろなことがわかるということを全社で認識して活用すること。レジでの「パスポートはお持ちですか?」の一声かけも、各店のスタッフが「MUJI passport」の効果を実感しているから継続できている。

 

 データの価値を高めるには、テクノロジーやツールに頼ってはいけない。「伝えたいことは何か?」「やりたいことは何か?」「そのための情報共有/見える化」という3つを常に意識すること。情報や単に知りたいことを集めても、宝の持ち腐れになってしまう。そうならないために、顧客視点に立ち戻って、今一度、よく考えることが、キーポイントとなっている。

 

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