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2017年6月26日

第5回
「企業再生における事業戦略=コストマネジメント4.0」の時代へ
 ~JALの再生にみる“コンセプト5S”の重要性~

 これまでコストマネジメント4.0に関して、その詳細な中身を複数の角度から触れてきましたが、今回はそもそも「“企業再生”に求められているコストマネジメントとはなにか?」にフォーカスしてみていきます。

 

 現在、日本国内における企業再生に関しては、その中身を紐解くと広義的には95%以上がコストマネジメントによりV字回復を達成しています。コストマネジメントといっても、その概念は広く、単純に調達単価を見直すものから、企業の収益性を見える化し、その構造にまでメスをいれるレベルまでも含まれます。

 

“狭義的な”コストマネジメント
  • 単価の適正化
  • 量の削減
  • 品質のバラつきや最適化
“広義的な”コストマネジメント
  • 事業採算性(アメーバ経営)/組織論
  • ブランド戦略
  • 拠点展開/出退店戦略
    (上記の施策を通して、全社的なコストを低減させていく)

 

 今回は、“広義的な”コストマネジメントの代表的な事例(事業採算性(アメーバ経営)/組織論)をケースとして取り上げ、今後のコストマネジメントの広がりや展開を紹介します。

 

日本航空(以下、JAL)の企業再生の事例

 JALは2010年の年初に会社更生法の適用を申請し破産しましたが、2012年9月19日には再上場を果たした有名案件です。再生案件として扱われた当初は、世界で最もコストが高い航空会社というレッテルを貼られ、2010年2月に会長へ就任した稲盛和夫氏に、「社員のコスト意識が低く、八百屋も経営できない」と言わしめた状態でした。

 

 もちろんJALは航空業界の特性上、「安全性」「公共性」を担保する必要があるわけですが、「航空移動」と「安全性」に対して顧客から本当にニーズがあるなら、利益を出せない理由はないという本質論のもと、コスト側を徹底的に見直してV字回復を実現しました。

 

 本件の再生手法として導入されたのが、有名な「アメーバ経営」ですが、その本質は、

 

Ⅰ.1便ごとの事業採算性
Ⅱ.組織/チーム別(10-数十人単位)での事業採算性

 

の両面を徹底的に“見える化”したことです。もう少し、その中身を掘り下げてみると、

 

Ⅰ.“1便ごとの事業採算性”の場合

 

 1便ごとの売上側は簡単に算出できると思いますが、コスト側の試算は難易度が高いのは容易に想像が付くでしょう。インフラ系産業で固定費が非常に大きい場合、実際の個別サービス/商品の採算性をはじき出すことは簡単ではありません。今回の場合は主なコストとしては、

  • パイロット/客室乗務員費用
  • 空港費用(賃料、受付カウンター、セキュリティ、管制塔など)
  • 機体の固定費/メンテナンス費用
  • 燃料費
  • その他、管理費用、システム費用、販売促進費、必要経費など

 

が挙げられますが、管理会計上のルール設定は難易度が高く、採算性算出ルールの導入に半年、その後全社的な整合性が取れ機能するまで更に1年の歳月が必要でした。

 

Ⅱ.組織/チーム別(10-数十人単位)での事業採算性の場合

 

 組織でもⅠと同様の発想が適用できます。例えば、パイロット所属部署であれば、通常はコストセンターであるため、コスト側は簡単に試算可能(=人件費)です。では、売上(=パイロットが1便搭乗するごとにそのパイロットが得られる収入)をどう試算するのか?が争点となるが、そこさえルールをきめれば、パイロット所属部署も独立採算事業体として見なすことが可能となります。具体的には、“パイロットを外部から調達した場合、いくらで雇えるのか”という観点から、パイロットの1便あたりの搭乗価値のあたりがつけられます。

 


 

 上記のアメーバ経営の事例は、単純なコストマネジメントと異なり、かなり高度な経営手法の話だと思うかもしれませんが、本質的にはコストマネジメント4.0と同じ考え方に立っています。なぜなら、パイロット/客室乗務員費用、空港費用、機体メンテナンス費用等を適正化する際に必要なステップを因数分解していくと下記になります。

 

Step1. 個別費目の適正単価を見極める

Q.主には市場相場をベースとして、どのレベルの単価が適正なのか
Q.どの単価ラインまでいけば、他社比較で競争力があるといえるのか

Step2. 適正単価の実現に自社で足りないもの/必要なものを見極める

Q.どのような原価構造になっているのか?
Q.競争力のある価格を提供している企業はなぜ実現できているのか

Step3. あるべきモノ/サービスの適正品質とそのコストとのバランスを決定

Q.顧客に対して、何をどこまで提供する必要があるのか
Q.聖域化/前提となっているため、十分な見直しがなされていない箇所はないか

Step4. 全社的に経営トップから現場担当者まで巻き込んだコスト適正化を断行

Q.経営層が本気で改革する意志があるか
Q.盲目的に聖域化して、検討外になっている部分はないか

 

 上記のStep1~Step4は全てコストマネジメント4.0の中で提唱している「CONCEPT 5S」(下図参照)の概念と同様であり、本質論は同じと言えるでしょう。このように鮮やかにV字回復した再生案件もその中身を掘り下げていくと、一つ一つのコストマネジメントの積み重ねを結集させて最後に集大成した結果といえます。

 

 弊社、プロレド・パートナーズが国内外の主要PEファンドから再生案件を多数依頼されている背景にはこういった根底の考え方に支えられた現場変革力を有しているからです。

 

コストマネジメントにおける「CONCEPT 5S」

PRORED
COST
MANAGEMENT
4.0
 
「CONCEPT5S」
DESIGN PHASE SANCTUARY コスト削減の聖域:範囲/サプライヤー/エリア/事業
SURVEY 分析(QBSR分析/原価計算)/仕組み・状況の把握/市場相場や動向
SPEED プロジェクトの優先順位/迅速な対応/コストマネジメントのサイクル
ACTION PHASE
STANDARDIZATION 仕様の標準化・見直し/契約条件の変更/ベストプラクティスの横展開
SIMPLIFICATION 仕様・サービス・業務フローを簡素化/集約・分散/全体最適化

 

 

株式会社プロレド・パートナーズ 

 

 『ターンアラウンド(企業再生)』『エネルギー・間接材のコストマネジメント』『CRE戦略』に強みを持ち、完全成果報酬にてコンサルティングを手掛ける国内唯一の戦略コンサルティングファーム。
 クライアントは、食品スーパーやドラッグストア等の小売業をはじめとして、流通、製造業、学校法人や銀行など、上場企業や大手企業が中心。PEファンドからの依頼も多く、企業の収益力向上に貢献している。
 コストマネジメントにおいては、間接材(人件費研究開発費を除く)だけでなく、直材までカバーしており、1,000社以上の実績がある。

 コーポレートサイト:http://prored-p.com/

 

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