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2017年5月22日

第3回
コストマネジメントの調査・分析時に最も重要なQBSRというフレームワーク

 かつてコンサルティング会社に在籍していた新人の頃、上司からよく言われていたセリフの一つに「準備段階でプロジェクトは9割終わっている」というものがあった。 プロジェクト推進のための強い意思やメンバーが揃っている場合、最も重要なのはプロジェクトの「準備」であり、その中でも調査や分析が結果を大きく左右する。

 

 コスト削減プロジェクトの場合、主要な調査分析には業界構造・市場調査(市場調査が難しい場合は原価計算)、取引状況の把握などがあるが、特にこの取引状況の把握が重要な鍵を握る。

 取引状況を把握するにあたり非常に有用なのがQBSR分析だ。取引状況をQBSR(「QUALITY(品質)」「BRAND(ブランド)」「SWITCHING(変更時にかかるコスト)」「RELATION(企業と顧客の関係性)」)に分類することで、既存のサプライヤーとの取引理由や、取引が継続している理由を明確にできる。

 

 例えば、新規サプライヤーから安い見積り金額が出ていても、品質を考慮して既存サプライヤーとの取引を継続せざるをえなかったり、違約金がハードルとなり、希望するタイミングでサプライヤーの切り替えができなかったりという経験をした方も多いのではないだろうか。

 

 QBSR分析の目的は、このようなサプライヤーごとの取引状況を、定量情報のみならず定性情報も含めて一元化することによって、考慮漏れを防ぎ、確実な比較評価を行うことである。

 

 QBSRの具体的な要素には、下図「サプライヤーとの取引状況を確認するための「QBSR」」に示すようなものが挙げられる。

 

サプライヤーとの取引状況を確認するための「QBSR」

PRORED
COST
MANAGEMENT
4.0
 
「QBSR」
QUALITY スピード/正確性/時間/機密性/セキュリティ/丁寧さ/独自のサービス・オプションなど
BRAND 信頼性(大手・老舗)/共感/実績/PR広告による認知率など
SWITCHING 代替性がない商品やサービス(独占・寡占市場)/違約金発生/時間がかかる/業務への支障や支払・納品ルールが変わる/他取引への影響など
RELATION 営業力/株主/相互取引/長期間の付き合い/トップ・役員・社員と人的つながりなど

 

 「QUALITY」要素が強い取引は、品質重視ゆえに単価ダウンやサプライヤーの変更が難しい。そのため、どうすれば変更可能か、最低限求める品質はどの程度かを事前に議論しておく必要がある。

 

 「SWITCHING」は比較的多くの取引で発生する。代替性がない商品やサービス(独占・寡占市場)/違約金発生/支払・納品ルールが変わる…などの条件は「市場」「業務」「契約」のカテゴリーに分けられ、中でも「市場」「契約」に関してはサプライヤー側に優位性があるため、コスト削減の難易度が高いと言える。

 

 「RELATION」は、前回の記事でも言及した、いわゆる「聖域」に関連する部分でもある。サプライヤーとの関係性によっては価格への影響も大きく、トップや役員がリーダーシップをとって進めていく必要がある。

 

 上記を理解した上で、実際のプロジェクト時には下図のように費目ごとのQBSRをチェックしていく。

 

QBSR分析の具体例

商品名 サプライヤー名 QBSR分析
項目 影響力 理由 切り替え時の条件
○○
商品
○○○商事 Q large 発注から配送までのスピードが他社より半日程度早い 業務フロー一部変更すれば切り替え可能(業務負荷はどの程度かかるか、別途試算必要)
B small 大手企業である 特になし(他サプライヤーの信用調査)
S large 違約金が○千万円発生する 残り1年間継続するか、部分取引等により違約金削減の可能性があるか検討
R small 長期間の付き合い 特になし(担当部署への影響は?)

 

 まず既存取引に与える影響とその理由を確認する。更に、どのような制約条件をクリアすれば切り替えが可能であるかを、担当者だけでなく経営層とも議論しておく必要がある。

 

 それらを踏まえた上で、業務の見直し、既存サプライヤーの条件仕様変更、新規サプライヤーへの切り替えなどを検討する。このプロセスを経ることによって、コスト削減実行の最終局面でプロジェクトが振り出しに戻るという惨事を未然に防止することができる。

 

 次回は、仕様の標準化・見直し/契約条件の変更について、具体的な事例を交え解説していく。

 

 

株式会社プロレド・パートナーズ 

 

 『ターンアラウンド(企業再生)』『エネルギー・間接材のコストマネジメント』『CRE戦略』に強みを持ち、完全成果報酬にてコンサルティングを手掛ける国内唯一の戦略コンサルティングファーム。
 クライアントは、食品スーパーやドラッグストア等の小売業をはじめとして、流通、製造業、学校法人や銀行など、上場企業や大手企業が中心。PEファンドからの依頼も多く、企業の収益力向上に貢献している。
 コストマネジメントにおいては、間接材(人件費研究開発費を除く)だけでなく、直材までカバーしており、1,000社以上の実績がある。

 コーポレートサイト:http://prored-p.com/

 

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