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第1679 回

2016年11月18日

ファーストリテイリングは情報製造小売業をめざす

千田 直哉

ファーストリテイリング(山口県/柳井正社長)の2016年8月期の業績は増収減益だった。売上収益は1兆7864億円(対前期比6.2%増)、事業利益は1620億円(同8.3%減)、営業利益は1272億円(同22.6%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益480億円(同56.3%減)だった。ギャップ(米国)を抜いて、衣料品販売額では世界第3位に浮上した同社の成長戦略をまとめる。(談:文責・千田直哉)

 

 上期は暖冬の影響を受け減益を喫し、下期は経費削減をグループ全体で実施し効率経営へと転換した結果、大幅な増益に転じた。

 親会社の所有者に帰属する当期利益は、円高による為替換算損やJ Brandの減損損失などで大幅に減少した。

 一方、ジーユーは同32.7%の増収、同34.8%の営業増益を達成した。中期的には3000億円。近い将来は、1兆円の売上を目指している。

 

 なお、2017年8月期の業績予想は、売上収益1兆8500億円(同3.6%増)、事業利益1800億円(同11.1%増)、営業利益1750億円(同37.5%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益1000億円(同108.1%増)だ。

 

 グレーターチャイナ(中国・台湾・香港)と東南アジア・オセアニアが増益を牽引。米国ユニクロ事業の赤字幅を大幅に圧縮し、すべてのセグメントが増益を予想する。

 

 国内と海外の店舗数は、2016年8月期に逆転したが、営業利益では海外は国内の半分程度だ。しかし、今回の場合は、為替の影響がとても強い。現時点における海外事業の利益は小さいのだが、改善の度合いや利益の増加の仕方から考えれば、次の2年から3年内に日本の利益を抜くのではないかと予想している。

 

 そして、2017年8月期は、売上・利益ともに過去最高を目指す。

 

 しかし、国内ユニクロ事業の9月の数字は必ずしも好ダッシュとは言えなかった。我々は、いつも言い訳に使うのは、「天気産業」ということ。9月を振り返ると、あの気温で売れているほうが不思議だ。でも、それが継続するわけではないので、通年で見れば必ずキャッチアップしていくはずだ。

 天気は予想できないけれども、予想できることにはすべて準備している。

 

 さて、現在の我々の最大の目標は、「新しい産業」を創ることにある。

 ファッション業界だけではなく、古いタイプの産業。我々の周辺で言えば、「ファッション」や「繊維」や「小売」がそれに当たるのだが、こういう古い産業の体質・構造から新しい産業に変えていくことが大事だ。

 新しい産業とは世界が進む方向と同じ方向に進み、お客さまのご要望に応えて、生活がよりよくなるために、商品を提供していく。お客さまのご要望に応えられるように会社自体を変えていく。そういうことが重要だと思う。

 だから一概にファッション産業が悪いというよりも、「“今までのファッション産業”が不況なのではないか」と考えている。

 

 我々は、お客さまを中心とした本当に要望される商品の「素材調達・企画・デザイン・生産・販売までの一貫したサプライチェーン」のすべてを変革し、「情報製造小売業」になる。

「情報製造小売業」とは、情報を商品化することだ。

「人はなぜ服を着るのか?」という本質を追求し、人々の生活を豊かにするために、人々の生活の変化やファッショントレンドの変化、高機能素材と着心地の両立、時代性に合った着こなしの提案など、さまざまな情報を服作りに活かし、同時に、お客さまへ情報をダイレクトに発信する小売業のことである。

 

 情報製造小売業の実現に向けて何をすべきか?

 

 なによりも重要なのは、顧客中心主義(カスタマーセントリック)だ。

 お客さまの声をビッグデータとして分析し、すぐに商品化できるサプライチェーンを構築する。お客さまの購買行動などを分析し、いつでも精緻な需要予測ができ、瞬時に販売計画の作成および修正が社員全員のネットワークでできるようにする。

 

 情報製造小売業になるためには、サプライチェーンの大改革が不可欠になる。

 お客さまのご要望に即応できるサプライチェーンに改革するために工場や生産のあり方も改革する。工場と生産地に物流プラットフォームをつくり、生産リードタイムと配送リードタイムを大幅に削減し、お客さまの要望に即座に応えられる体制を構築する。有明(東京都)と同じような次世代物流センターを国内(札幌、仙台、名古屋、大阪、神戸など10ヶ所)、中国、欧州、北米の海外市場でも稼動させたい。

 

 もうひとつ。情報製造小売業になるためには、仕事のやり方をすべて変える必要がある。

 インターネットの普及によって、お客さま、お取引先さま、当社の各機能がつながることで、我々の仕事のすべてのプロセスがグローバルかつコンカレント(同期・同時進行)に進むことになる。

 

 2017年の春には、仕事のやり方をすべて変えるために、有明の最上階オフィスに主要な商品・商売機能を移転し、ワンフロア5000坪のオフィス「ARIAKE Project」でチームワークを中心にした社員の新しい働き方をめざしたい。

 

 そこでは、お客さまに「新しいお買物体験」を提供する。

 

 リアル(店舗)とバーチャル(Eコマース)が融合し、今までにない、新しいさまざまなサービスを「デジタルフラッグシップストア」で提供する。

  たとえば、

 

 ① 「ユニクロ会員」向けの特別サービス

 ② 購入履歴などに応じたパーソナルなおすすめ情報

 ③ 店舗決済・EC配送、クリック&コレクト(店舗受け取り)、コンビニ受け取りなどのサービス

 ④ 当日・翌日配送のエリア拡大と配送リードタイムの表示サービス

 ⑤ セミオーダー商品の拡充、マイサイズ登録によるJust Fitサービス

 ⑥ EC特別商品、EC限定色、2XS~4XLサイズまでの大幅拡充

 

 などがあげられる。

 

「デジタルフラッグシップストア」は、バーチャルとリアルの融合という意味においてもシステム面も物流面も方向性も、いまのところ非常に順調にできつつある。

 たぶん来春には、かなりのものができあがっているだろう。現状でも、かなりの部分ができている。たとえば、翌日配送はかなりの部分でできている。コンビニエンスストアでの受け取りサービスはセブン-イレブンさんと始めている。

 

 それとヨーロッパではクリック&コレクトもやっている。日本でもすぐに全店でできるはず。今までは、国別にECを展開してきたが、それらをグローバルECにすべて変えて、新しい方向でスタートさせることも視野に入れている。

 

 ただし、コストは極力かけない形で進めていく。今回も、REIT(リート:不動産投資信託)を利用することで投資はかからないようになっている。物流センターの機能に対する投資はするが、ハコに対する投資はREITのようなものを利用するとか、現存する物流センターを利用するとかでやっていきたい。だから大幅な投資増になることはない。

  

 ファーストリテイリングの今後の成長戦略は、グローバル化とデジタル化による成長だ。

 そのためには、

 

 (1) 海外ユニクロ事業の成長

    とくにグレーターチャイナと東南アジア・オセアニアの成長

 

 (2) Eコマース(EC)の成長

    中期的には売上構成比30%

 

 (3) ジーユーの第2の柱化

    売上高1兆円目標

  

などが考えられる。

 

 たとえば、海外ユニクロ事業ということでは、2016年9月30日にカナダのトロントのランドマークタワーである「トロントイートインセンター」内に売り場面積770坪の大型店を出店。開店前から1800人のお客さまに並んでいただくなど、大成功を収めた。

 10月20日には、同720坪の2号店を「ヨークデールショッピングセンター」に出店。カナダはユニクロにとって有望な市場であり、今後も出店を加速させる計画だ。

 

 ファーストリテイリングの中期目標は、「世界No.1のアパレル情報製造小売業」になること。2020年度には売上高3兆円、営業利益率15%、Eコマース事業の大幅拡大を目指している。

 過去には2020年に5兆円の売上高を達成すると宣言した。その裏側には、世界ナンバーワンになるためには5兆円の売上が必要という考えからだ。

 

 そのひとつの目安として2020年5兆円と言ってきた。しかしながら、今の現実的な売上から考えると、3兆円が妥当だろう。けれども、あくまでも5兆円を目指したい。時期はずれてしまうが。そしてこれを達成するために会社自体を変えていきたい。

 

 最後にファーストリテイリングは、服を変え、常識を変え、世界を変えていく。

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