ホーム   特集&連載    ブログ    千田直哉 PAPER BLOG+ 
記事タイトルバナー

第1678回

2016年11月15日

25兆円市場を前にして

千田 直哉

 ある外食産業の経営者は、「日本の国内市場は、少子高齢化や人口減少の影響を受け、成熟化しているから、海外市場を攻める」と宣言した。

 なるほど、外食産業の国内市場の規模を調べてみると、2015年度は25兆1816億円(対前年度比2.2%増)。2014年度は24兆6326億円、2013年度が24兆99億円(日本フードサービス協会)なので、漸増傾向にはあるけれども、横ばいのような状態が続いている。

 

 しかしその額は、実に25兆円。第1位のゼンショーホールディングス(東京都/小川賢太郎社長)の売上高は5257億円(対前期比2.7%増)と大きいが、シェアは2.1%に過ぎない。

 海外市場に目をむけるその企業のシェアは0.1%にも届いていないのだから、何をして成熟と言っているのか、理解しかねる。

 

 外食産業との比較で言えば、日本の出版物販売のほうがよっぽど元気がない。

 1996年に2兆5000億円あった日本の出版物販売額は、2016年で1兆5220億円(出版科学研究所)。この20年間で1兆円減少した。しかしながら、又吉直樹さんの『火花』や『週刊文春』誌のようにヒット商品が出ないわけではない。まだ1兆5000億円も市場があるのだから――。

 

 さて、今年、5月に東京都の二子玉川に開業したのは「蔦屋家電」だ。「ライフスタイルを買う家電店」をコンセプトにしてアート&テクノロジーに満ちた「BOOK&Café」の空間で、家電、インテリアや本、雑貨などを提案、販売。編集の仕方と見せ方で元気のない市場を活性化しようとしている。

 

 もとい外食産業である。25兆円もの巨大な市場が横たわっているのに、そこに挑戦することなく、海外を目指すというのは、やはり疑問符がつく。

 縮小する国内市場ではあるが、たぶん、1企業の立場では、成熟というカテゴリーは存在しないと思う。

 あるのは、経営者の成熟した考え方なのではないだろうか?

Special topics