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第1676回

2016年11月10日

50年経っても変わらない

千田 直哉

「ショールーミング」という言葉はご存知だろう。

 リアル店舗の店頭で商品を見て触って確認して、スマートフォンなどで最低価格を見つけて、ネット経由(Eコマース:以下、EC)で同一商品を購入するという消費行動である。

 

 消費者にとっては非常に都合の良いシステムである。

 

 だが、ECの低価格攻勢の前にリアル店舗が売り逃がしてしまうケースは少なくない。リアル店舗にとってはたまったものではない。

 だから、多くのリアル店舗は、ECの最低価格に常にあわせる格好で商品を販売してきた。

 ある家電専門店では、問わず語りで店員さん自らがネットの最低価格を提示してくれる有様だ。

 

 ところが、ここに来て、「ショールーミング」に変化の兆しが見えてきた。

 一部のメーカーが一部の商品について、リアル店舗とECの出荷額に差をつけているというのだ。

 ECの異常なまでの安売りを好ましくないと考えるメーカーが2者の出荷額を変え始めている。

 盗品などがECに流れて不当に安く売られる場合を除けば、商品原価はリアル店舗の方が圧倒的に低くなるのだそうだ。

 当然、価格競争に陥ったときには、リアル店舗に分があるということになる。

 

「ECは、お客さまが商品を購入する方法のひとつだと考えている。ただ、現在、ECを選んでらっしゃるほとんどの方の理由は売価だ。それがなくなるとすればサービス競争の時代になる。そこを意識して経営に当たっていきたい」とこの動きを歓迎するのはケーズホールディングス(茨城県)の遠藤裕之社長だ。

 

 出荷額に差異をつけるのは、メーカーの“苦肉の策”のように見える。

 

 そこで思い出したのが、ダイエーと松下電器産業(現:パナソニック)の30年戦争だ。

 販売代理店制度を死守するために「希望小売価格」を維持したい松下と「価格破壊」のため価格決定権を握りたいダイエーが30年間対立してきたものである。

 販売代理店が家電量販店、ダイエーがECに姿を変えたけれども、想定以上の安売りは、消費者が喜ぶ半面、製造者にとってはいやなもの、という真理は50年経っても変わらない。

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