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第1669回

2016年4月11日

評価は30点! ファーストリテイリング柳井社長、2016年8月期上期を振り返る

千田 直哉

 ファーストリテイリング(山口県/柳井正社長)は、2016年8月期第2四半期決算を発表した。

 売上収益は、1兆116億円(対前期比6.5%増)、営業利益は993億円(同33.8%減)、親会社の所有者に帰属する四半期利益(累計)は470億円(同55.1%減)と計画を下回り、増収大幅減益となった。

 

【国内ユニクロ事業】の売上収益は4536億円(同0.2%減)、営業利益は641億円(同28.3%減)、既存店舗売上高は同1.9%減(客数:同6.3%減、客単価:同4.7%増)、Eコマースの売上は253億円(同28.4%増)となった。2016年2月末の直営店舗数は805店舗、FC39店舗の合計844店舗を展開している。

 12月は暖冬の影響で防寒衣料を中心に販売が苦戦。1月は年始セールの好調に加え、気温が低下し、カシミヤセーター、ヒートテック、ボアスウェットなどの販売が好調だった。2月はジョガーパンツ、ケーブルニットなどの春物商品も順調に立ち上がっている。

 売上総利益率は46.0%(同3.5ポイント減)と課題を残した。原因は1月と2月に値引き販売を計画以上に強めたことにある。経費コントロールにも問題があった。

 

【海外ユニクロ事業】の売上収益は3892億円(同12.7%増)、営業利益は294億円(同31.4%減)の増収減益となった。

 グレーターチャイナ(中国大陸、香港、台湾)は増収減益だった。暖冬で秋冬商品の販売が苦戦。香港と台湾では景気のスローダウンの影響もあり、営業利益は減益。中国大陸は景気スローダウンの影響が比較的少なく、第2四半期の既存店売上高はプラスだった。

 韓国は、売上は横ばい、営業利益は大幅な減益となった。暖冬と景気スローダウンの影響を受け、売上が苦戦し、値引き販売が拡大した。

 中国経済の減速は、中国大陸よりも、台湾、香港、韓国の業績に響いた。

 東南アジア・オセアニア地区は、ほぼ計画通りの増収増益。オーストラリアは赤字幅が縮小した。

 米国は、計画を下回り赤字幅が拡大した。第2四半期は値引き販売を強め、在庫処分を進めた。その結果、在庫は適正水準まで減少したが、粗利益率は悪化した。4店舗の閉店にともなう除却損・閉店損を約13億円計上した。

 欧州の既存店舗売上高は2ケタ増収、計画通りの増収増益となった。3月18日にロンドンのグローバル既存店がリニューアルオープンし、順調なスタートを切っている。

 

【グローバルブランド事業】の売上収益は1673億円(同12.9%増)、営業利益は143億円(同21.9%増)と計画通りの増収増益だった。

 ジーユー事業は計画を上回り、大幅な増収増益を達成した。キャンペーン商品のニット、トレンドボトムスの販売が好調で既存店売上高は2ケタ増収。1月~2月の端境期の春物商品の立ち上がりも好調で、粗利益率は改善された。

 セオリー事業は、計画を若干下回り減益。コントワー・デ・コトニエ事業は計画を若干下回り減益。プリンセス タム・タム事業は計画通りの前年並みだった。また、J Brand 事業は計画を下回り、赤字幅が拡大した。

 

 通期の業績予想を下方修正した。

  売上収益は1兆8000億円(同7.0%増)、事業利益は1500億円と300億円の下方修正、営業利益は1200億円で同600億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は600億円と同500億円修正する。

 

 以上の業績を発表しながら、柳井社長は、以下のように総括した(談:文責・千田直哉)。

 

「いまの消費動向は決してよくなくて、むしろ悪い。でも減速というよりは、同じような状況がずっと続いているような状態だ。給与所得はあまりあがっておらず、物価は上がり始めている。まずい商環境だととらえている。ただ、今回の業績に関していえば、外部環境よりも内的な要因が大きい」。

 

「上期は、成長ではなく、膨張だった。再度、会社組織や仕事の仕方など大幅に変えなければいけない。点数をつけるなら30点だ」。

 

「原因のひとつは、値上げにある。お客さまのニーズを中心に考えると、今の時代は、価格、品質、ファッション性のすべてが満たされていないといけない。それと単純な1990円、2990円などのプライスラインに戻したいと考えている。下期は値下げというよりは、より買いやすい値段にしたい。できるだけ週末限定セールをやめ、通常のプライスをできるだけ低くする。セールは抑制したい」。

 

 

「今後の対策としては、ローコスト経営の徹底に努めたい。具体的な1つめは、経費削減の徹底だ。経費を一から見直し、利益増に結びつかないものを削減し、コスト構造を根幹から変える。各部署が、自律的に、あらゆる業務のコスト効率を高める文化や仕組みを確立する」。

 

「2つめは、シンプルで即断する組織への転換だ。組織の改装や部門間の壁を壊し、シンプルで柔軟な組織、『即断・即決・即実行』する組織に転換したい」。

 

「3つめは働き方の見直しだ。デジタル化の流れの中で、仕事のやり方を根本的に変える。業務のデジタル化を徹底的に進め、少数精鋭で成果を出す」。

 

 

「ユニクロ事業の課題と今後の対策は、ファッションリーダーシップとプライスリーダーシップを取り戻すことにある」。

 

「ユニクロのLife Wearとしての品質の良さ、着心地の良さに加え、『ファッション性、ニュース性』をさらに高める。とくにウィメンズ商品での改革を進める。お客さまの生活ニーズに合わせて、抜本的に価格を見直す。プライスラインを1990円、2990円といったシンプルなものに戻す」。

 

「『いつでも、どこでも、誰もが、お買い得価格で手に入るユニクロ』を実現する。そのために、商品計画、リードタイムを一から見直す」。

 

 

「今後の成長ステージのカギを握っているのは、①グローバル化と②デジタル化だ」。

 

「グローバル化ということでは、ニューヨーク、東京、上海、パリ、ロンドン、ロサンゼルスのR&Dセンターで商品開発のための優秀な人材を採用し、グローバルで商品開発力を強化し、Life Wearとしてのユニクロを世界中で拡大する」。

 

「海外ユニクロ事業を高成長させることでユニクロを世界ナンバーワンブランドにする。2017年度か2018年度には国内と海外の売上高が逆転するだろう。実際、2015年11月には、海外ユニクロ事業の店舗数が初めて国内店舗数を超えた」。

 

「グレーターチャイナ、東南アジア、オセアニアは、海外ユニクロ事業の成長ドライバーと位置付け、大量出店による拡大戦略を継続する。」。

 

「米国ユニクロ事業は再構築を進める。スクラップ&ビルドを進め、大都市の好立地に旗艦店・大型店を出店し、ユニクロブランドの認知度を高める。同時にEコマース事業を拡大する。商品構成の抜本的な見直し、店舗オペレーションの改善、デジタルを中心とした広告宣伝により、事業の改革を進める。また2016年秋にカナダのトロントに1号店、2号店を出店する計画だ」。

 

「欧州では主要都市に出店、同時にEコマース事業を拡大する。2016年3月18日にはロンドンのグローバル旗艦店『311オックスフォードストリート店』をリニューアルオープン。欧州でのブランディングを強化する。2015年10月にベルギー1号店を開業、2016年3月に2号店をアントワープに出店し順調だ。2017年度にはスペイン1号店を出店する予定だ」。

 

「国際的なコラボレーションは続々だ。たとえば、140年以上の歴史を持つロンドンの老舗百貨店、《リバティロンドン》とのコラボレーションを3月中旬から開始している。また、《ルメール》とはディティールまで繊細にデザインされたコレクションを展開。さらに、フランスのエスプリを感じるブランド《イネス》とのコラボレーションでは、無理せずに自分の印象を華やかで美しく表現する服づくりをしている」。

 

「2つめの成長戦略はデジタル化だ。リアルとバーチャルの融合により、『新しい産業』をつくりたい。すべてのプロセスをインターネットでつなげることで、いままでユニクロが培ってきたSPA(製造小売業)のビジネスモデルは、まったく新しいビジネスモデルの変わり、私たちの仕事のプロセスも変わっていく。『商品開発・素材開発(R&D)』→『MD・商品計画(MD)』→『生産(Production)』→『物流・配送(Logistics)』→『マーケティング(Marketing)』→『店舗・売場(Store)』→『お客様(Customer)』という従来のプロセスは垂直的でリレー方式だった。プロダクトアウト的なモノづくり、情報づくりだったのでお客さまの今のニーズには十分に応えることができなかったと反省している。チラシやTVCMなどのマスメディアを通じた情報発信のため、お客さま1人ひとりのニーズに対応した情報提供ができなかった」。

 

「この従来型のプロセスを変える。お客さまを中心に据え、お客さまのニーズをくみ上げて、モノづくり、情報づくりのプロセスを全世界に同時進行する形だ。お客さまとユニクロがダイレクトにつながることで、お客さまが求める商品をすぐに具現化できるサプライチェーンにしたい」。

 

「そしてこの4月に次世代物流センターが東京都有明に竣工する。今後、国内外で約10カ所(札幌、仙台、名古屋、大阪、神戸、中国、欧州、北米)に物流センターを設ける。次世代物流センターの本格稼働により、店舗への配送頻度が増え、店頭での欠品がなくなるはずだ。また店舗のバックルーム在庫が減少し、店舗オペレーションは効率化される。そして、Eコマースでの翌日配送や当日配送のサービスエリアが拡大するだろう」。

 

「ARIAKE PROJECTの一環として、2016年秋に世界最大のバーチャルな“デジタルフラッグシップストア”を開業し、さまざまなサービスを開始する。また、有明にはデジタル開発本部を移転させる。モノづくり、情報づくりのチーム全員がワンフロア5000坪のオフィスで世界同時に一気に仕事を進める体制になる」。

 

「グローバルでEコマース事業を拡大し、現在5%の売上構成比を30%に上げる。現在のエリア別Eコマース事業の売上比率は、日本が約5%、グレーターチャイナが約10%、韓国が約5%、米国が約20%、欧州約10%、東南アジア・オセアニアが5%以下となっている」。

 

「ジーユー事業についても触れておきたい。2016年8月期上期は、大幅な増収増益を達成した。ロンドンにR&Dセンターを設立、商品開発力はさらにパワーアップしている。中国、台湾などアジアへの出店を加速させ、2016年2月末の海外店舗数は8店舗になった。中期目標は売上収益3000億円、営業利益は400億円だ」

 

「ファーストリテイリングの中期目標は、売上高5兆円、営業利益1兆円の世界ナンバーワンブランドだ。2020年度に到達したいとは考えている。たとえ、そこで届かなくとも目標は掲げ続ける。必ず達成できると考えている」。

 

「ファーストリテイリングは、『服を変え、常識を変え、世界を変えていく』」。
 

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