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第3回

2015年11月16日

実践的ID-POS分析
プロモーションの最適化

「実践的ID‒POS分析」連載第3回は、1:1プロモーションを中心に、プロモーションの最適化を取り上げる。顧客1人当たりの売上高を最大化するためには、顧客を正しく理解し、精度の高いプロモーション・プログラムを企画、実行していくことが重要である。顧客分析を起点に、プロモーションを最適化するためのポイントを解説する。

 

ロイヤル顧客は「育てる」もの

 

 小売業のロイヤル顧客はほんの一握りで、決して「自然に」増えていくことはない。企業はロイヤル顧客を育成していく必要がある。米ドラッグストアのCVSヘルスには、約50の商品カテゴリーがあるが、4分の1の会員は1つか2つのカテゴリーしか購入していないという。CVSヘルスは、ロイヤル顧客を増やすため、レシートやスマホなどでパーソナルクーポンを配信し、顧客の来店頻度や買上点数の拡大を図っている(写真Ⓐ)。

 こうした、ID-POSを活用した1:1プロモーションの事例が増えている。米食品スーパー(SM)のクローガーもパーソナルなクーポンを配信している(写真Ⓑ)。米SMのセーフウェイの「Just for U」では、顧客の購買履歴から最適な推奨商品(定期的に購入している商品など)を分析し、さらに個人ごとに特別な大幅値引きで訴求している(写真Ⓒ)。競合とのダイレクトな価格競争を避け、来店を維持するための効率的な価格政策を実現した事例と言える。

 

 

 もちろん、1:1プロモーションだけでなく、チラシや一般のクーポン、店頭における販促施策も重要だ。この領域では、ID-POS分析から、買上頻度を上げる商品(トラフィック・ドライバー)や、買上点数を大きくする商品(バスケット・ドライバー)を特定し、客数や客単価の向上をねらった、効果的な施策が設計できる。あるいは、価格が重視される価格敏感商品(キーバリュー・アイテム)を特定することで、それを軸にした効果的な価格訴求も考えられる。

 ただし、ロイヤル顧客育成の目標は、単に、こうした施策一つひとつの効果を出すことにあるわけではない。その総和としての顧客生涯価値(LTV=ライフ・タイム・バリュー)の最大化をめざすことにある。そのために、どのような施策にフォーカスし、どのように施策を編成していくべきなのかを正しく判断し、効果的なロイヤル顧客化プログラムを設計することが重要である。

 

ロイヤル顧客化のためのプログラムの設計

 

 ロイヤル顧客とはどんな顧客だろうか。

 一般には、一定期間の買上金額が大きい顧客ほど、ロイヤル顧客と考えられることが多い。しかし、買上金額は、変動が大きく、将来のLTVとの明確な関連性が見られない場合がある。

 たとえば、ある小売業では、家具を買った顧客の買上金額は高いが、一度買った顧客は二度と来店しない可能性が高い。そのため、LTVは低い。高頻度で来店し、日用品などの複数のサブカテゴリーを購入する顧客の方がLTVは高く、ロイヤル顧客となる。この場合、LTV向上のためには、金額よりもカテゴリー数と頻度を伸ばすことが重要と言える。

 一般にLTV向上の因子としては、金額、頻度、点数、リピート商品点数、店舗とEC(ネット通販)の併用などさまざまなものが考えられる。一方、企業のリソースは限られていて、すべての施策を実行することはできない。LTVとの相関が高い重要な要素を見極め、優先度を正しく判断することが、ロイヤル顧客化プログラムの蓋然性を高めるうえで重要である。

 ある通販企業は、顧客定着化に寄与する商品(定着化商品)を突き止め、そのリピート率向上が重要であると分析した。これにより、定着化商品の買上点数と頻度の向上を目的に、ロイヤル顧客化プログラムを設計している。1:1プロモーションでは、新規顧客に対して、まず売れ筋の定着化商品を推奨する。次はその再購入を促し、その後は定着化商品の点数を増やすための訴求を行い、併せてマスの施策でも定着化商品を軸に訴求を行う。

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