ホーム   特集&連載    Retail Technology 
記事タイトルバナー

第1回

2015年9月16日

実践的ID-POS分析
ID-POSの価値と品揃え分析の基本

会員カードを使ってID-POS分析・活用に取り組む小売業が増えている。しかし、期待どおりの結果を出せないでいる小売業も少なくない。どうすれば成果に結びつけることができるのか。「実践的ID-POS分析」と題し、売上向上につながるID-POS分析のポイントを4回に分けて解説する。

文=原島淳(SAS Institute Japan ソリューションコンサルティング第一本部 CIグループ マネージャ)

 

確立されてきたID-POS分析手法

 

 ID-POSとは、顧客IDが付与されたPOS(販売時点情報)、つまり個人の顔が見えるレシートのデータだ。最近、ポイントカードの普及やITの進展により、ID-POSを分析・活用する企業が増えているが、先進的小売業では20年前から活用されてきた。1990年代、英小売業大手のテスコとデータ分析子会社のダンハンビーは、ID-POSを分析することで顧客洞察を深めた。顧客ニーズに合った品揃えと商品開発、そして効果的なパーソナル・プロモーションを実現し、ID-POS分析の価値を実証した。2000年代、米食品スーパー大手のクローガーがテスコ流の分析を受け継いで、V字回復を遂げた。「カスタマーファースト」戦略の下、顧客洞察に基づいた品揃え、ローカライゼーション、マーケティングなどの施策を通して、既存顧客からの売上を拡大させた。今日では、「商品DNA」と呼ばれるテスコ流の分析手法は、日本の小売業や卸売業に普及している。

 

 最近は、デジタル・マーケティングの台頭もあって、とくに「1:1パーソナライゼーション」が盛んだ。クローガーや米セーフウェイは、顧客の店舗購買履歴と連携させ、PCやスマホにパーソナルなクーポンを配信する。米ドラッグストアのウォルグリーンも、分析から「1:1クーポン」を最適化し、ロイヤル顧客を育成する。米ディスカウントストアのターゲットは購買履歴から女子高生の妊娠を予測し、関連商品を推奨したが、この事例は日本でも話題になった。今や個人ごとの推奨商品の最適化は当たり前だ。価格やクーポン値引き条件まで個人ごとに最適化し、プロモーションROI(投資収益率)を向上させた例もある。こういった、多くの事例を通して、ID-POSの分析手法は確立されてきている。

 

 チェーンストアにおけるMD(商品政策)・マーケティング領域で、どのようにID-POSを活用できるのか、図表(1)に代表的な例を挙げた。

 

 

 このように、課題に応じて様々な分析のパターンがあるが、いずれも社内にあるID-POSを使って分析できる。ただし、分析の難易度は様々で、中にはデータマイニングなどの専門的なツールを必要とするものもある。たとえば「1:1プロモーション」は分析の難易度も、実施の難易度も高い。ID-POS分析をこれから始めるのであれば、比較的難易度が低く、効果が出しやすいところから着手するのが効果的と考えられる。

 

 本連載では、一般的に重要度が高いと考えられる以下のテーマを取り上げ、難易度順に分析方法を説明していきたい。

 

●品揃え(第1回)

●店舗ローカライゼーション(第2回)

●プロモーションと1:1パーソナライゼーション(第3回)

●ID-POS分析の実践(第4回)

 

 今回は、ID-POS分析による顧客起点の品揃えを紹介する。

 

Special topics