ホーム   特集&連載    DRMオンライン・オリジナル    知る人ぞ知る 新鮮食べ物情報 
記事タイトルバナー

第8回

2014年9月29日

もう1つの水産エコラベル
「マリン・エコラベル・ジャパン」

 これまで4回にわたり「海のエコラベル」ことMSC認証を紹介してきましたが、日本には持続可能な漁業に関するエコラベルがもう1つあります。マリン・エコラベル・ジャパン。日本独自の水産エコラベル制度です。

 

 持続可能な漁業とは何か、水産エコラベルがどのような役割を果たすかについては、第5~6回連載の「海の生態系を守る『海のエコラベル』(前編・後編)」をご覧ください。

 

マリン・エコラベル・ジャパン。

 

1 マリン・エコラベル・ジャパンとは?

 

 マリン・エコラベル・ジャパンは、2007年に開始された日本独自の水産エコラベル制度。一般社団法人 大日本水産会により運営されています。MSC認証を参考にFAO(国連食糧農業機関)が定めた水産エコラベルガイドラインに基づき策定されているため、認証にかかわる条件はMSC認証と大きな差があるわけではありません。しかし、認証件数は20件と、国内では未だ2件であるMSC認証を大きく上回っています。今回はその理由を探ってみましょう。

 

 連載第6回の「海の生態系を守る『海のエコラベル』(後編)」において、筆者はMSC認証の課題として以下の3点を挙げました。
① 日本の漁業は小規模であるため、審査費用を賄うのが難しい。
② 日本はサプライチェーンが複雑であり、流通に関わる全ての業者がCoC認証(加工・流通段階の業者が取得する認証)を取得することが難しい。
③ 水産エコラベルの知名度が低く、消費者が優先的に購入するまでに至っていない。
 これを踏まえたうえで、マリン・エコラベル・ジャパンを検証してみましょう。

 

生協で販売されている、マリン・エコラベル・ジャパンの認証を受けたカツオの刺身。
パッケージ左下にマリン・エコラベル・ジャパンが印刷されている。

 

2 マリン・エコラベル・ジャパンの取得費用

 

 マリン・エコラベル・ジャパンの審査・認証にかかる費用はMSCより安価に設定されています。事案によって差はあるものの、過去の例では50~300万円程度の負担で生産段階認証を取得しています。

 

 MSC認証が可能な機関は国内にはなく、MSC認証を取得するためには海外から審査員を招へいして審査を受ける必要があります。しかし、数回にわたって海外から審査員を呼ぶ交通費や滞在費、通訳(できれば日本の漁業に精通した人材)の雇用など、その費用はかなりのものになります。加えて、外国人である審査員が日本漁業の状況を一から学ぶのは容易ではなく、地元の漁師が長年守り伝えてきた漁業の機微を読み取ってもらうには相当の時間がかかるでしょう。

 

 一方、現在マリン・エコラベル・ジャパンの審査機関を務めている「公益社団法人 日本水産資源保護協会」は、県行政または県水産試験場OBにより審査員を構成しています。県行政および県水産試験場のOBは文字通り全国津々浦々に在住していますから、全国のあらゆる地域で地元の漁業に精通した人材を近場から呼ぶことができ、交通費や滞在費を抑える事が可能です。

 

 繰り返しになりますが、日本の漁業は規模の小さいものが多く、経済的に厳しい状況にある漁業者が少なくないのが現状です。しかしその中には、漁業資源に配慮した漁業を行なっている漁業者も数多く存在します。これまで漁業者たちはその努力を消費者に対して十分に発信する術を持ち得ませんでした。マリン・エコラベル・ジャパンは、規模は小さくとも持続可能な漁業のための努力を惜しまない漁業者たちを支援する制度なのです。

 

定置網で混獲されたアカウミガメが海へ還ってゆく。マリン・エコラベル・ジャパンを取得している北海道・函館市の南かやべ定置網漁にて。(写真提供:南かやべ定置漁業協会会長 野村譲氏)

Special topics