ホーム   特集&連載    DRMオンライン・オリジナル    接客ファーストクラスのほまれ 
記事タイトルバナー

第2回

2014年6月5日

スタッフ研修でまずやるべきことは?

佐藤由利(さとう・ゆり)
オフィス・ラポール代表 接客トレーナー 1991年日本航空株式会社に国際線客室乗務員として入社。 2005年チーフパーサー資格取得。主にニューヨーク、シカゴ、ロンドン、パリ路線のファーストクラスサービスを担当するとともに後進育成、CS向上プロジェクトの指揮を執る。 2010年サービス訓練教官として勤務、現役乗務員のスキルアップ訓練、1000名超の新人育成に携わる。 2013年の退職後、外資系ホテルにてマネジャーとして勤務。その後は広く接客の心と技を広めるため、独立。現在接客トレーナーとして飲食店やホテルの接客アドバイス、企業マナー研修などに尽力している。 日本に留まらず、中国でも接客講師の育成を行うなど接客力向上の啓蒙に力を注いでいる。

 こんにちは。接客トレーナーの佐藤由利です。

 

 前回、スタッフ一人ひとりの持つ力は大きい、感謝の気持ちを持つことが接客の土台であるという話をしました。社員でもパートでもアルバイトでも、テナントさえもお客様にとっては同じスタッフ。

 

 ある複合スーパーの中にある洋服お直しの店に入った時のこと。スカートの裾がほつれたため、その直しに行ったのです。

 

 「スカートのしつけが取れてしまって…」と言いかけた私にかぶせて「あー、それね、しつけって言わないのよ。まつりって言うの。しつけっていうのはね…」とそのスタッフがご教示(笑)。私はしつけとまつりの違いを学びに来た訳ではないのですよ。ほつれている状況を解決してほしいのです。「わかりました、お願いします」という私にさらに「これはね…」と。たまらず「それ今必要ないですよね!分かればいいでしょ!」と珍しく言い返してしまいました。

 

 どうしてこんなことが起きるのでしょう。

 

 自分の店を選び、足を運んでくれたことへの感謝の念、お客様にとっての不便や不満を解消してあげたいという気持ちが少しでもあれば、こういう対応にはならないはず。

 

 つまりお直しという「技術の提供」はできても、「サービスの提供」はできていないということです。

 

 もうひとつ、同じスーパーのサービスカウンターでの出来事を紹介します。

 

 仕事帰りにサービスカウンターで買い物をした私は、会計後クレジットカードを返してもらっていないことに気が付かずに帰宅しました。電話がかかってきたのはカード会社から。翌日カードを受け取りにスーパーへ。驚いたことには事情を説明すると「あ、カードをお忘れになったんですね。少々お待ちください。」忘れたんじゃなくて、店側の返却もれです。しかも10分以上立って待たされました。お客様用の椅子があるのに、勧めもしない。

 

 結局、返却もれの説明と謝罪、足を運ばせたことに対する慰労などは一切ありませんでした。そこでの経験は、少なからず複合スーパー全体のイメージを損なうものでした。

 

 二つの例を挙げましたが、どんな職種でも同じです。レジでも、食品整理でも、サービスカウンターなら尚更のこと。

 

 ではどうすれば、嫌な思いをさせない接客ができるようになるのでしょうか。

 

 そのカギは、企業理念にあります。

 

 いわゆる「企業理念の浸透」こそが、スタッフのベクトルを合わせることにつながるのです。

 

 浸透させるには、当然採用時のトレーニングが最も効果的です。レジ打ちのような「スキル」を身につけさせる前に、絶対にやらなくてはならないことが企業理念を浸透させることです。ひとつ言っておきますが、企業理念の浸透とは念仏のように言えることを指しているわけではありません。

 

 その会社の一員として何をお客様に提供する立場にあるのかという「理念」をしっかりと研修する。スキルを先に学ぶと、スキルの提供自体が目的になってしまう傾向が強くなります。研修においては、理念→スキル、この順序が極めて重要です。

 

 また、朝礼などでは企業理念とお客様視点のトピックスを「必ず」「繰り返し」盛り込み、スタッフに対して「提供価値」について考える機会を常に与えることです。そして、何のために今、目の前の業務を行っているのかを意識させ続けること。

 

 レジを打つことや食品整理をすることが目的ではなく、それを通して気持ちよく買い物をしていただくという価値を提供することが仕事なのですね。

 

 管理者は、つきっきりで部下の仕事ぶりを確認することはできません。だから目の届かないところでも、常に理念に基づいた業務を行えるスタッフを育成することが、選ばれる店舗・企業になっていく近道なのですね。

 

 次回は、いよいよ具体的に「不満にさせない接客のスキル」について触れていきます。

Special topics